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巡礼と唸る拳
番外編 反省ノートンと元気な子供達
しおりを挟む今日がやってきた、やってきてしまった。
ここ数日、毎日が地獄のように思えました。
行く先々で現れては私を壊していくアリス教信者達。
肉屋に行っては解体包丁で解体されかけ、薬屋に行けば毒薬をこれでもかと投げつけられました。
絶妙に殺さないようにいたぶられてもう誇りも何もあったもんじゃない。
毎日を生き延びるのに必死です。
唯一の安らぎがアリス様に治療して頂く時か睡眠する時のみとなりました。
今日は調査最終日。
というのも、色々と聞き回ったものの一向にめぼしい情報が手に入らなかった。
すでに王都内には潜伏してないのかもしれない。それにアリス教信者達が蔓延する国内に隠れ住むなんてあの元殿下に出来るとは思えない。
もう国外だと思います。
でも、最後に聞き込みを行なうのは孤児院。そこに潜伏もしくは情報があるとは考えられないがどこで得られるかは分からない。
それになにより孤児院なら信者達の攻撃は無いだろう。いや、訓練だから必要とは思いますけど……ね。
孤児院に到着。
子供達が追いかけっこしたりと楽しそうに遊んでいる。
その傍で微笑ましそうに子供達を眺めている年配の女性、あの方が院長先生かな?
私が院長殿に近寄ろうとすると、子供達が私に気付き目を輝かせて走り寄ってきました。
騎士の格好した私が珍しいのかな。
どんどん集まってきますね。
「わー騎士様だぁ!かっこいいかっこいい!」
「そ、そうかいありがとう。」
「ねーねー、騎士様のお名前なんて言うの?」
「私かい?私はノートンと申します。」
「ノートン?ノートンお兄さんかっこいい!ねぇねぇぼくたちとあそぼう!ねぇ、あそぼー。」
好奇心旺盛な子供達は騎士である私に一切の恐怖心がない。
ここ最近の地獄と比べれば雲泥の差。
い、癒やされます。
少し遠い目になる私をあらゆる方向から引っ張られ遊ぼうとお願いされる。
院長先生もあらあらどうしましょうかと困った様子。
ふふ、癒やして貰いましたし聞き込みは少しこの子達の相手をしてからに致しましょう。
「よし、いいですよ。なにして遊びましょうか?」
「やったー!だったら、聖女様とまおうごっこしよう!」
聖女様と魔王ごっこ?
勇者ではなく?
子供達の間で生まれた新しい遊びでしょうか?
「ノートンお兄さんがまおうねー。僕達が畏れ多くも聖女様の役目を果たさせて頂きます。」
「あ、はい……え?」
あれ、口調変わった?
気のせいです。
あれ、何で皆が私を囲むの?
僕らは聖女様役です。
あれ、これ集団暴行じゃね?
気のせいです。
私を囲み見上げる子供達。
それぞれが拳を構える。そうだね聖女様は武器は使わないですもんね。
でも、聖女様は石を混ぜた布を拳に巻き付けてはいませんよ。まだ非力だから仕方ないですもんね。
「ちょっ、院長先生!助け…。」
「あらあら、どうしましょうか。」
「いや、あの助け…。」
「あらあら、どうしましょうか。」
「だから、助け…。」
以下略。
院長殿はただ一つの台詞のみの人形と化してしまった。
呆然とする私の両足に鈍い激痛が。
どうやら息の合った蹴りをお見舞いされたようです。
抗えない痛みでその場に座り込む。
立場が逆転。
今度は私が見上げる番だ。
純粋と思ってた子供達の感情が読めない光のない瞳。
でも、口角だけが大きく広がっていく。
「「「ノートンお兄さん、アソビマショウ。」」」
ほんのちょっとだけ下半身の方が涼しくなりました。
これから地獄の遊びが始まります。
帰りたい
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