82 / 266
巡礼と唸る拳
ヤルタに蔓延る悪
しおりを挟む大量に信者を増やしてしまう形で2つ目の町であるヤルタに到着した。
ここでもやっぱり俺の訪問を喜ぶように盛大に歓迎をしてくれる。
けれど、少し違う部分もある。
沢山の好意の中に紛れるように敵意や悪意がちらほらと散りばめられている。
この民衆の中から割り出すのは難しい。
ノートン達が居るから大丈夫だと思うけど警戒は怠らないようにしよう。
ここの町長も友好的で簡単に挨拶を済ましてお家にご招待される。
珍獣兵士共は馬を置いたらこそこそとどこかへ行ってしまった。ノートンももう呆れの極みまで来ているので放置を決め込んでいた。
俺もそれでいいと思う、気にするだけ無駄だよ。
この町では約10日間ほどの滞在を予定している。
最後の町まで距離があるので6日の聖女活動の後に残りの日にちで準備と観光って感じ。
治療は早速今日から。
ここは重患者が多いようだ。
町長がご用意してくれた昼食を済ませて、直ぐ様案内された先で治療を施していく。
ここからは今までの作業と同じ。頑張ったねと声を掛けつつ次々と治す。
治せば治すほど信者は生まれる。出来る事なら信者誕生はして欲しくないが俺に治療をしないという選択肢はない。
この俺だけへの悪循環をどうにかしたいよ。
そして一気に時間を進めて、ヤルタ治療最終日。
この町には教会兼孤児院がある。
孤児院で暮らす子供達の健康診断という名の治療を行なったら、明日からは観光だい。
子供達一人一人に光を包んでいく。
くすぐったそうにもじもじして可愛い。思わず撫でちゃったよ。
皆の診断を終えて折角なので教会の聖堂にある像にお祈りをしておく。
聖女の力ありがとうございますと。
うん、やっぱり天から光が降り注ぐ演出が起こる。
他の聖女もこんな感じなんかな。
興奮する子供達に照れつつ、この町での治療活動は終了を迎えた。
明日の観光が俺を待っている。
チュンチュン
さて今日の観光がやってまいりました。
もちろん準備が一番の優先事項。でも、息抜きも大事だから、大事だから。
シーナさんと護衛の半分が出発準備のため別行動。
俺はノートン達を引き連れて屋台巡り。
新たな屋台料理ウルフ肉の香草焼きと出会い、食欲を刺激するピリリと来る辛味の味付けに舌鼓を打つ。
どんどん行こう。
ノートンも呆れる馬鹿食いを披露し近くの噴水でお腹をポンポンと休める。
ふー、どうしようかな。
そう思っていたら、トトトとこちらへ駆けてくる可愛いらしい足音達。
ノートンが一瞬剣に手を掛けたが正体が分かればすぐに止める。
昨日の孤児院で出会った子達だ。
一休みする俺を見て無邪気にやってきたようだ。
今まで悪意に巻き込まれることが多々あったから、こういう純粋な存在は本当に癒やされる。
はぁ、動き出したかぁ。
俺は可愛い子達の頭を撫でる手を止めて後ろを振り向く。
俺達を逃さないよう囲む男共。
こんな町の往来で剣や短剣を構えるなんて常識の無いおっさん達だ。
ざっと見渡した感じ二十人ちょっとかな。
「へっへ、情報通り護衛が少なくて助かるぜ。お前が聖女ってガキだな?」
「そうですが、何かご用でしょうか?」
怯える子供達を近くに引き寄せ問う。
わざわざ護衛の少ない時を選んだみたいだから禄な用事ではないでしょう。
でも、どうしてこんな人目が多いところで?
「なーに大した用事じゃねえ。お前さんに死んでもらいたいだけさ。」
突然武器を構えた男達に側にいた子供達だけでなく通りすがりの住人達もざわつき始める。
「それはそれは。ですが、私はまだやるべきことがありますので残念ですが死ぬ気はありません。」
「けっそんな事知ったことじゃねぇよ。おい、お前らやるぞ。」
リーダーらしき男の合図で他の奴らがより殺気立ち始めた。
「ノートン、今回は私も参加していいですよね?」
「いえ、我々だけで頑張ります。」
ぶー。
おい、お前らどうか俺へ一直線にかかってこい!
0
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる