今日も聖女は拳をふるう

こう7

文字の大きさ
上 下
62 / 266
お茶会よりも戦闘を

初めてのお泊まり会 中編

しおりを挟む

哀しい現実とかち合ってしまい、哀愁を漂わせて入浴開始。可能ならこのまま消えて無くなりたかったけど。

浴室は限られた人しか入れないのに馬鹿でかい。
一度に二十人以上は確実に入れる。
何処からともなく花の香りもする。
どこまでも豪勢だ。

ここで哀愁纏う俺は庶民力を発揮して少しオロオロ中。
スゥ様は日常の一部と化しているようですぐにメイド達に身を任せて体を洗ってもらい始めている。
もう如何にもな高級石鹸によって泡だらけとなり姿が消え始めている。

俺も後に続けと横に座り、恐る恐る石鹸を手にする。
しかし、ニコニコと笑うメイドによって掴まれた手から石鹸を取り上げられる。
あ、洗えるよ。

「「聖女様、これは私達の仕事でございます。」」

「はい‥お願いします。」

いつの間にか増殖を遂げていたメイド達によってなす術なく洗浄をされていく。

悔しいけど気持ちいい。

優しい手つきで労わるように隈なく洗われる。これは癖になりそう。
決して屈したくなのに、気持ち良くて声が漏れ出てしまう。


ようやくお湯に浸かる頃には、身体は力無く緩みきっている。
大変気持ち良かったです。

まあこの後、更にお湯で顔がだらしなくなったとこをニマニマと血走った目で見るスゥ様に笑われたけどね。


こうして、快楽に溺れた入浴は終わりお着替え。
メイドが用意してくれた服は、どこから調達したのか分からないドレス。
あの、ローブとかで充分ですが‥はい、着ます。

このライトブルー主体のドレスは王妃様のお下がりらしい。
俺の宿泊が決定し着替えが必要と知って、すぐさま持って来て頂いたとの事。
む、これは無下には出来ない。

着方はもちろん知らないのでメイドの方にお任せ。
うん、サイズは一部を除いて丁度良い。一部を除いてね。はは、すかすかだ‥。


着替え後、闇堕ちした俺に腕を絡め先導するように引っ張っていく姫様。


しばらく放心状態の俺は気づけば扉の前まで着いていた。
スゥ様の部屋とは違う。

「あれ?ここは?」

「お姉様、やっと帰って来ましたね。今からご飯の時間ですよ。」

ご飯‥ご飯!


意気消沈の俺は、お腹の音と共に息を吹き返す。
暗い気分を晴らすのはいつだって飯だ。
スゥ様は俺の元気が戻ってきた事に一安心している。

復活した俺は揚々と晩御飯の場へと入っていく。



大きな長テーブルの上には、俺が今まで見たことも味わったことも無い料理達がいらっしゃいと出迎えてくれている。
それに王様や王妃、アルフといった王族組も席について待ち構えていた。

一瞬ぎょっとしたけど、ここは王城。
居て当たり前。


空いてる席はいくつもあるけど、どこに座れば良いだろうか?
とりあえずスゥ様について行こう。

スゥ様はアルフと向かい合う王妃様の隣に座る。
俺もスゥ様の隣に行こうとするも、メイドの有無を言わせない誘導によりアルフの隣へ。

座る前に軽く挨拶した方がいいかな。
俺が何か発する前に王族組の先制攻撃。

「はっはっは聖女殿、そのドレスよく似合っているな。沢山の者から婚姻を申し込まれるかもしれんぞ。」

「なっ‥」

「アリスちゃん、とっても可愛いわ。私の娘にしたいぐらい素敵よ。あとでぎゅっとさせてちょうだい。」

「な、なっ‥」

「真っ白なドレスも似合ってたが、そのドレスもまたおま‥貴方をより美しく映し出してくれているな。貴方の可憐な姿にこの食事の場がより彩りを増したようにさえ感じるよ。」

「な、な、なにを‥」

顔が下から上へと赤みと熱が昇っていく。
全く予測も防ぐことも出来ない甘言の飛礫にどこに目線を送ればいいか分からなくなる。
なんで自然体でそんなこと言えるの?

俺がこの手の攻めに慣れてないの知っているでしょう。


羞恥心が頭の中にぎゅうぎゅう、多分ちゃんとお礼は言えたと思う。早口で伝えてすぐに座ったのは覚えている。
あと、隣の面白がっていたアルフを小突いた気もする。


せっかくの食事なのに思うように喉を通ってくれないよ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...