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お茶会よりも戦闘を
聖女VS騎士団長2
しおりを挟むアルフの掛け声と共に始まった騎士団長ガルムとの試合。
ガルムさんは自分の得物である長剣は使わないみたい。俺としてはあらゆる全ての力を持って戦って欲しいけど、素手の少女相手に武器を使うのは流石に躊躇われたか。
それは残念。
お互い距離を保ち、構えたまま見つめ合う。
あちらさんも出方を窺っているようだ。
「はっはっ聖女様、すげえな。全然隙を感じねぇよ。」
「いえいえお互い様ですよ。ガルムさんも随分な集中で素晴らしいです。」
熊みたいに豪快に突っ込んで来ると思ったのに意外に冷静。
時間にして数分程度なのにとても長く感じられる互いの牽制。
呼吸が揃い始め、痺れを切らしたガルムさんが先に攻撃を仕掛けてきた。
たった一歩の踏み込みでもう手を伸ばせば当てれる距離まで来ている。
俺の力量試しなのか正面から素直に拳を繰り出してくる。
ゴゴゴという効果音が似合う一撃。
俺はそれを単純に受け止める。
どれくらいの威力が込められてるか知りたい。
およそ拳を受け止めたとは思えない衝突音が練習場に鳴り響く。
ガルムさん少し驚いている。
何かしら対処すると思ってたみたいだけど、正面からそのまま片手で受け止められるとは思わなかった?
幾ら何でも甘く捉えすぎだよ、団長さん。
「おいおいまじかよ。」
「喋っている余裕はございますか?」
パッと掴んだ手を離してあげ、ガルムさんの腰に右から蹴りをプレゼント。
咄嗟に左腕で腰を庇うように構え受ける。
ガルムさんは左腕にかかる重くて鈍い衝撃を全て堪えることは出来なかった。
威力に押されて左へ地面を削るように強制的に移動させられた。
決して吹っ飛ばされることなく踏ん張り耐えるなんてやはり騎士達の長なだけはある。
でも、その真っ赤に腫れた左腕まだ自由に使えるかな?
ガルムさんは俺の追撃を警戒し、逆にどんどん攻撃を仕掛けてくる。
それで正解。
下手に距離を取るより、俺に攻撃をさせない方が勝率は上がるよ。
もう俺への遠慮は無くなったのか、大木並の足からの蹴りや背後といった死角からの容赦ない連撃。
それを俺は最小限の動きで無駄なく捌いていく。
左腕を庇いながらの攻撃だから余裕を持って対処出来るけど、油断すれば一発貰ってしまうかも。
それだけ絶え間なく猛攻を続けていたら体力が切れるでしょうし、それにその左腕も心配です。
それではこの楽しい楽しい触れ合いも、そろそろお開きとさせて頂きましょうか。
俺は未だ途切らせまいと放たれた蹴りを手で払い、それにより生まれた時間で後ろにふわりと宙を歩くように退がる。
こらこら、ガルムさんなんで急にぼーっと立ち尽くしているの?
黙って見てないで何かしてくれば良かったのに‥。
優雅な空の散歩を終え、地面に着地と同時にただでさえ小さな体を更に低い体勢で縮め、爆発的な踏み込みでガルムさんに一気に詰め寄る。
この試合で一度も見せてない速さ。
いくら経験豊かな団長さんでも反応出来ないでしょ。
けれど、本能的に守りへ入ろうとする姿勢は賞賛に値する。
それでも俺の拳はガルムさんの鳩尾に深々と突き刺さった。
止まらぬ勢いで練習場の壁に磔にされる。
亀裂が走り、壁の一部が少し崩れる。
これにて終了。
終わって思いました。
あれ、やりすぎたかも知れない。
壁に嵌め込まれたまま指先一つ動かさない騎士団長。
途中から楽しくなりすぎて気分が高揚していたけど、力の加減は心得ていた‥と思う。
ちらっと観客を確認するとアルフは呆れを通り越して天を仰いでいる。
スゥ様は瞳に幾つもの星をきらきら輝かせて鼻息荒く興奮しているご様子。
騎士達はあんぐりと口を開け、度肝を抜かれている。
これはやっちまったな。
俺は大急ぎで急遽誕生した患者の元へ駆け寄り、壁から引き剥がして額を輝かせる。
息はあるから大丈夫。
もう勇ましいどころの騒ぎじゃなくなった。
今後、どんな風に見られるか少し不安になりました。
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