38 / 266
豚司教に教育を
俺の処遇
しおりを挟む騒々しい足音と共にやってきたのは、ブラッドさんとアルフとノートンのさっき別れた3人。
それとその後ろから兵士達も一緒に来ている。
この屋敷の警備兵は殆ど眠らせたから、ブラッドさん達が連れてきたのかな?
凄惨な風貌に遂げた部屋に、来た人達全員が驚いている。
天井は大きな穴があるし、壁には沢山の芸術作品となった男達。
おまけにこの屋敷の家主は葡萄酒まみれでぶっ倒れている。
そんな中平然と立っている俺。
驚く要素てんこ盛り。
アルフなんか驚きすぎて口をパクパクさせてる。整った顔立ちが残念になってるよ。
「じょ、嬢ちゃんがこれを?」
「はい、そうです。私の大切な人を傷つけたのです。当然でしょう?」
でも、貴族である豚をぶん殴ったから、分が悪いのは俺の方。
確固たる証拠があれば問題ないだろうけど、豚が漏らした発言では弱い。
捕まるかな?捕まるよな。
ちょっと猪突猛進しすぎたけど、間違った事はしてないし堂々としてりゃいいか。
死刑になるなら死刑でいい。
人間いつかは死ぬ。早いか遅いかそれだけだ。
「ブラッドさん達はどうしてこちらに?」
「そりゃお前が1人で突っ走ったから急いで来たんだよ。俺らがちょっと待てって言っても聞いてなかっただろ?」
そういえば、ロコルお姉ちゃんを抱き抱えて教会に行く時、後ろが騒がしかったな。頭の中を怒りが密集してて全然聴こえてなかったよ。
「まさか1人で屋敷に乗りこむとはな。しかも、全滅してるし。嬢ちゃん強すぎだろ。」
「ふふ、少々鍛えてますので。」
「少し鍛えただけでここまでの事が出来るかよ。でも、無事で良かったぜ。」
とても心配させたみたい。
こんなちっこい女の子が一人で特攻したなんて知ったら無理もないか。
「ご心配おかけしてごめんなさい。」
ちゃんと頭を下げる。
下げた頭をブラッドさんが少し雑にわしゃわしゃと撫でてくる。
ちらっと見えたブラッドさんの表情がなんだが懐かしくてちょっと泣きそうになったのは秘密。
さて、ようやく皆さん状況把握したようなので俺の処遇を聞こうかな。
「ブラッドさん、私は貴族を殴ったので捕まりますか?」
平民が貴族を殴るのは御法度。
証拠もないこの状況では現行犯逮捕。
「それなら問題ないぞ。」
なんかアルフが答えてくれた。
一応、ブラッドさんにも目線を向けるとうんうんと頷いている。
問題がないってボロボロの貴族がそこにいますけど。
「えーと、貴族を暴行したのに問題ないんですか?」
「ああ、そいつは犯罪者だからな。俺はブラッドと連携して司教のことを調べ上げたからな。まあ色々と証拠が集まったものだ。」
「嬢ちゃんが俺を治してくれた次の日にこいつからお願いされてな。嬢ちゃんの為ならって協力したんだよ。」
俺の為?
まだその時はロコルお姉ちゃんの事件は無かったよ。
「あなたが聖女様だからです。」
俺がなんでと疑問を持ってる顔を察したノートンが答えてくれる。
さすが表情読み取り人。
教えた覚えは無いから司教同様に調べたのかな。
でも、俺が聖女だからってどうして?
教えて、ノートン先生。
「私共には聖女様が顔にある傷を原因に教会に篭っていると教えられてました。しかし、こうやって聖女様の御力で多くの王都中の人々を救うあなたを見て、あの情報が嘘だと分かりました。そして、その嘘を陛下にお伝えしてたのはあの者です。」
ノートンは未だ気絶から覚めない豚を指差す。
「そこからは色々と情報集めをしました。貴方を表舞台にすくい上げるために。その過程でより密な情報を得るためブラッドさんにも協力をお願いしたのです。」
「そうだ。嬢ちゃんへの恩返しのためだぜ。」
なるほどそうだったのね。
裏社会に精通しているブラッドさんならあの緩い司教がこそこそやってた事なんてすぐに調べがつくか。
「じゃあ私は‥」
「はい、あの者が言い逃れ出来ない証拠も見つかりましたので何のお咎めもございませんよ。」
「どっちにしろこいつは国王に虚偽の報告をしているんだ。罪に問われる。だから、嬢ちゃんは問題なし。むしろ、犯罪者を一斉逮捕出来て良かったぐらいだ。」
良かった。
向こう見ずに行動してしまったけど、周りの人達が助けてくれた。
「ただトーラスっていう奴にはちゃんと謝っといた方がいいぞ。俺達が教会に行った時、泣きそうな顔でお前の助けを求めていたからな。」
う、そういえば迷惑かけたくないから気絶して帰らせたんだった。
どうしよう、怒られちゃう。
0
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる