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豚司教に教育を
少女を探せ!
しおりを挟む俺の名前はアルフ。
今は街の中だから、身分は明かせない。
お忍びという事で察して貰えると助かる。
今日も俺の古くからの友人ノートンと王都内を歩き回っている。
ノートンとは立場の差があれどお互い気兼ねなく接せられる数少ない親友と言っていい。
そんなノートンを連れて散策しているのにも理由がある。
俺たちはとある少女を探している。
それは、以前いつものように勉強の息抜きがてら抜け出して街に出かけた時だ。
その時、次第に自分の体を内部から蝕まれるような激痛が走ってくる。
王都の大広場に着く頃には自分の力では立てない程に弱りきってしまった。
すぐに毒だと分かった。遅効性の毒だろう。
おそらく勉強の小休憩の合間に飲んだ紅茶か菓子のどちらかだな。
迂闊だった。情け無い、これで終わりかと思うととても情け無い。
心配そうに俺を支えてくれるノートン。
悪いな、せっかくの散策が台無しだな。
せめて、毒を飲んだことを伝えよう。
ノートンならすぐに犯人を探し出してくれるに違いない。そうだろ?
自分の驚くほど弱りきった声でなんとか伝えれた。
もう死を待つだけだ。
次々と浮かび上がる家族の姿。
これが走馬灯というものか。この歳で体験するとはな。
そんな走馬灯を打ち消すかのごとく、いつかの夜空の星のように眩しく輝く光が射し込んでくる。
俺の体をこの温かな光が包み込んでくれているようだ。
不思議とあれほど感じた激痛も何処かに行ってしまった。
俺はゆっくりと瞼を開く。
そこには、黄金色に光輝く髪を靡かす少女がいた。
触れることすら畏れ多いと思うほど崇高な存在を放つ。
慈愛に満ちたその紅い宝石のような瞳にどこまでも吸い込まれていきそうだ。
「よく頑張ったね、もう大丈夫。」
嬉しそうに告げる少女。
俺は‥生きている。
実感の湧かない俺に少女は生きてる良かったねと教えてくれる。
あぁ、俺は生きてるんだ。まだ生きていいんだ。
頬に流れる涙が温かい。
そんな俺をノートンが涙と鼻水でぐちゃぐちゃにした顔で抱きついてきた。
馬鹿、気持ちわりぃよ。でも、ありがとうな。
そして、俺を救ってくれた少女にちゃんと御礼を伝えようと思った時にはすでに居なかった。
俺達はこの日から名も知れぬ少女の行方を追った。僅かにでも手掛かりが見つかればいいんだがな。
それと同時に毒を仕込んだ黒幕も調べている。
仕込んだ者とは別に裏で指示を出していた者がいるはずだ。まあ大方あの豚野郎だろうけどな。意地でも証拠を見つけてやる。
どちらも良い成果が出るといいな。
そして、今日ノートンから面白い情報が聞けた。いや、噂とでも言うべきか。
路地裏に癒しの女神様が現れたと。
なんでも突如と現れ路地裏の住人達の怪我や病気を次々と治していったらしい。
間違いない。十中八九あの日俺を生死の境目から救い出してくれた少女だ。
ノートンも同意するように頷く。
ようやく会える。
善は急げと言わんばかりに俺達の足取りは不思議と速くなるのだった。
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