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部活動、いいですか?
運動場で部活動 生徒指導編
しおりを挟むテニス部にやって来た俺達。
鳴瀬姉妹を保健室に連れて行く猫くるみ先輩と別れて俺達野郎だけ。
そんな健気な俺達に猛威を奮う大野部長聖人率いるテニス部女子共。
ただ風景を写真に収めたいだけなのに、弾丸となったテニスボールやラケットを容赦なく雨のように放ってきた。
薩摩変態の尊い犠牲も虚しく、あと一歩のところで生徒指導の霊長目ヒト科ゴリラ属の先生に塞がれた。
これから始まるのは、生徒指導室という地獄に軟禁されるかどうかの運命をかけた命の交渉。
でも、ゴリラ先生は真摯に訴えれば見逃してくれるはずだ。
「芦田、とりあえず生徒指導室に行こうか。そこできっちりと反省しろ。」
立ったまま気絶した薩摩部長はそのままゴリラに捕らえられた。
「ゴリラ先生、反省も何も俺は無実です。だから、殴らないで!」
「俺は剛田だ。」
もう訴える最中に殴るのは反則でしょう。
「ゴ‥剛田先生、俺はただ普通にテニスをしている光景をこのカメラに収めようとしただけです。」
俺よりも頭一つ分大きいゴリラ先生に上目遣いでうるうると伝える。
どう?可愛い生徒でしょう?
お尻を触ってくる一結を気にしている場合ではない。
「と言ってるが、どうなんだ大野?」
ここで大野部長に話を振る。馬鹿め、大野部長は聖人。人を貶めるような事をする訳がなかろうが。
「ええーと、写真は撮ろうとしてました。ただ、その‥」
「そのなんだ?」
「先生、私達のスコートの中をコイツら覗こうとしてました!」「そうよそうよ、カメラを持って飛び込んで来ようとしたんだから!」「部長ステキ!」
くそ、言い渋る大野先輩を女共が余計な援護射撃してくる。
このままだとゴリラの天秤があっち側に傾いてしまう。
「ま、待ってください。そんなの言いがかりです。僕は、僕はただこの眼に映る青春を写真一枚に残したかっただけです‥うぅ。」
どうだ泣き落とし。
両手で隠した顔がニヤリと笑う。
指の隙間から見た感じ大野先輩はオロオロして、ゴリラ先生は判断に迷っている様子かな。
これはこのままごり押し出来るかも。
「み、みんな、芦田くんも悪気があった訳ではないみたいだし、もう許してあげようよ。」
ここで見かねた大野先輩のフォローが入る。どこまでも優しい奴め。俺の心にグサグサと罪悪感が刺さるぜ。
女子部員達はまだ文句を垂れているけど関係ない。判断するのはゴリラだ。
さあ、どうする!
「芦田、お前は写真を撮ろうとしただけなんだな?」
「うぅ‥ばい、ぞうですぅ。」
「そうか、疑って悪かったな。」
「うぅ‥わがってぐれたなら、良いでず。」
はは、所詮俺の巧みな演技には敵わぬわ!
「そうかお詫びにお前が撮り損ねたスコートの中撮っていいからな。」
「えっ、マジっすか!あ‥」
ゴリラの吉報に顔から両手を離してカメラを構えてしまった。
まあ、なんとゴリラの良い笑顔だこと。
「は、謀ったな‥。」
「何が謀っただ馬鹿モンが!最初から嘘泣きだと分かっとったわ。」
今日一番の痛烈な拳骨を頂く。
ほら、今本当に泣いてるよ。
痛みで頭を押さえる俺の襟首を掴んで連れて行こうとする。
「ま、待ってください!俺はそう、この薩摩部長に命令されて仕方なくなんです。信じてください!」
「そうか。」
尚も止まらない。
「そうかで終わらないでもう一考してお願い!」
「そうか。」
まだ止まらない。
「いや、止まれよゴリラ!」
「そうか。」
拳を頂きました。
なんとか逃げ出そうとジタバタともがくが全然抜け出せない。
なんだこの馬鹿力、ゴリラ過ぎる。
生徒指導室までの道のりで何度も反論や抵抗を繰り返すも、その甲斐なく地獄の門まで到着してしまった。
この先で待ち受けるのは何十枚もの反省文とこれは愛だと言いながらの体罰が待っている。
俺はもう一度、ゴリラに慈悲を乞う。
「お願いです、ゴリラ先生。俺は深く反省しております。何卒、何卒ご慈悲を!」
「そうか、反省してるんだな。反省文は30枚で済ませてやるからな。」
何の情状酌量の余地無し。
くそったれ、だったら殺ったらぁ!
ゴリラ目掛けてパンチを繰り出す。
所詮只の人間のパンチなど霊長類の前では形無し。
「ようこそ、生徒指導室へ。なにゆっくりすると良い。」
いとも簡単に受け止められ、そのまま引き摺られて行く。
そして、俺の悲痛の叫びも虚しく絶望へと誘われる。
解放される頃には空は暗く、俺たちの死んだ目には綺麗な満月が映っていた。
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