ドライアドさんのお茶ポーション

べべ

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第69話:文献

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 窮地は脱しました。
 その窮地の原因が私というのが残念でなりませんが!
 しかしながら、世界樹に関するあれこれを巡る騒動は鎮静しましたし、エルフの女王様ももう私を頼るといった事はなくなるでしょう。
 つまり、私と彼らはこれでイーブン! 完全に同盟してもいい流れになっているに違いありませんとも~!

「いや、そんな訳ないでしょう」

「が~ん!?」

「いや、そりゃそうだろう……」

「んふふ、カワイイ勘違いねぇ」

 改めて女王様のお言葉を賜る為、私とデノンさん、えっちゃんの3人は謁見の間にいます。
 私が素敵にデコレートした玉座は元に戻らないので、そこに座る女王様はなんかリリカルな雰囲気になってしまっています。カワイイ。
 しかし、それはそれとして……同盟できませんか!?

「いいですか、森の管理者。私は確かに、貴女を上手く操作して、世界樹様を復活させるべく目論んでいました。貴女の望外の暴走でそれは不可能だと悟りましたが……」

「いやぁ、それほどでも~」

「なぜ褒められていると錯覚しているのです? まだ暴走していますか!?」

「いえいえ~続けてください~?」

 世界樹はあの時、葉を数枚つけていました。
 本来ならば、それだけでも凄い事なんでしょうが……他者の生命力を無理矢理使ったために不純物が混ざっており、純粋な世界樹の葉ではなかったとのこと。
 まぁ、多少味にえぐみがあったほうがお茶としても良いと思ったのですが、それを言ったらデノンさんに頭叩かれました。今は、宝物庫にその葉っぱは保存されているそうです。
 女王様はこほんと咳払いし、続けます。

「……まずは、貴女を利用した事は謝罪いたします。後日なんらかの形でお詫び……まぁ、キノコ茶を大量に送らせていただきますので、どうか矛を収めていただきたく」

「いや女王、それはちと都合が良すぎる気が……」

「あ、いいですいいです! お茶くれるんなら!」

「国家間の問題解決があまりにも軽すぎる!!」

 何とおっしゃる兎さん!
 現状、私達の立場を比べてごらんなさい~。

 私→エルフ:お茶くれたし仲良くしたい。けど世界樹関連でやらかしちゃった! 仲直りしてくんないかな~

 エルフ→私:世界樹の為に利用しよう。と思ってたらやらかされた! 仲直りしようず。

 ね? 断る理由が何処にあるのでしょう!
 お互い収まる所に収まってウィンウィン! 素敵っ。

「で、ですが、同盟に関しては、貴女が正しく森の管理者としての役割を自覚しないと結ばないと言ったはずですよね?」

 えぇ、もちろん覚えておりますとも。
 だからこそ、私はあの時城下へと向かい、図書館を探したのですからね!
 ……いやぁ、紆余曲折あったとはいえ、よくそこからサイシャリィ崩壊まで走ったものです。
 私がそう女王様に話すと、彼女はこめかみの辺りを抑えて何やら唸っている様子。

「いえ……少々、貴女という存在を測れなかった自分が情けなくもあり、貴女と決裂する事の方がリスクが多い事を否定できない自分が嫌でもあり……」

「まぁ、誰しも一度や二度はミスするものですって。私だって少しのミスと大きな熱意でここまで来たんですからね!」

「凄いわココナちゃん! あれだけの事をしておいて【少し】ですませる辺り、考えが覇王のそれね!」

 そうでしょうそうでしょう! ん? そうでしょう? まぁいいか。
 とにかく、女王様は私が未だにその文献を読んだりしてない事が不満なんでしょう? 知識も無く管理者してんなよ、と。
 だったら、今からでもその文献を見に行くだけですとも~。

「いえ、それには及びません」

「え?」

「私が司書に命じて、持ってこさせました」

 えぇ……言ってくれれば私から足を運びましたのに。
 そんな、わざわざお手を取らせて……

「いえ、貴女を野放しにして図書室に向かわせるより、100倍マシだと判断いたしましたので」

「英断だ! 英断だよ!」

「人って、成長できるのよねっ。素敵よぉネグちゃん!」

「え、えへへ、もっと褒めてください、アースエレメンタル様っ」

 むぅ。
 なんでしょう。私完全にトラブル発生装置みたいな扱いです。
 お茶さえ渡してれば大人しい子だっていうのに~。

「えぇとそれで、その文献って、何が載ってるんです~?」

 私の質問に対し、女王様はスッと真面目な顔になります。
 そして、司書さんから1枚の巻物……長い羊皮紙を受け取りました。

「この羊皮紙に書かれている内容は、森の守護者が何故生まれたのか、という内容が記されています」

「ゴンさんが、ですか?」

「えぇ、守護者が生まれ、100年森に巣食ってきた内容です。……あの熊が何をして、何故あの森に縛られたのか……」

 ……思えば、何でゴンさんは守護者をしてるんでしょうね?
 本人が言うには、オベロン様に借りがあるとか。
 ふうむ、それで100年……たしかに、少し長いような気がしなくもありません。俄然気になってきましたね。
 なにより、ちっちゃい頃のゴンさんの話とか見ない手がない! 鼻血流しそうなくらいカワイイに決まってるんですから!

「うぇへへ……で、では、是非それを読ませていただきたくっ」

「こ、こいつ、守護者様の話になると露骨に乗り気になりやがる……!」

「当然でしょう!」

「はぁ……まぁ、話が早いのは助かります。どうぞ、ご覧になってください?」

 ネグノッテ女王から巻物を受け取り、私はそれを開きます。
 途中結び目がこんがらがったので、ため息つかれながらデノンさんが開けてくれました。優しみ。
 さて、どんな内容なんでしょうね~。
 
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