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第62話:取り調べ
しおりを挟むというわけで、ドキドキの取り調べタイムです。
身柄を確保されたとしても、私自身の無事は確定しているようなもの。あまり気後れせずにいきましょう。
「えぇ、では……取り調べを始めていこうと思うのですが……」
取り調べ室って言ってたから、某刑事ドラマみたいに簡素な部屋かと思ってましたが……思いのほか綺麗な感じです。切り出した机に、草を編んだクッションが置かれた椅子。少ないながらも調度品もあり、おしゃれなが外観ですとも。
そんなお部屋の中で対峙した、私と女王様のトークが始まります。
「まず、貴女が配っていたという、あの葉……あれはなんなのでしょう?」
「あれは、世間樹の葉ですね~」
「せけんじゅ……世界樹ではないの、ですか?」
その質問には容易に解答できますね。
世界樹手前だけど、及んでいないという点を考えて、「世間くらいなら名乗っていいんじゃないかな?」って意味を込めて、世間樹。
私が唯一全力で魔力込めて出来上がった一本ですので、力はすごく強いってのを説明いたします。
「なるほど……」
女王様は指の背中を唇に当てて考え込んでいます。そうなると腕は組んだ形になり私にはない脂肪分が押し上げられて大変壮観です。
ドラミングしたら、さぞ暴れることでしょう。
「まぁ、貴女が生み出した樹の葉だということは、納得はできずとも理解はしました。問題は、なぜ貴女がそれをこの国で配ったかという点です」
「いやぁ、本当ならお茶にしようかとも思ったのですが、持ってきたお茶がとある理由で使えなくなりまして~」
まさか飲む人全員をマッチョメンにしてしまうお茶になるなんて、誰も想像できませんとも~。
その場で作った場合は、これまたゴンさんがダメっていう回復茶になりますし。
「という訳で、私が知ってる、お茶じゃない葉っぱで一番上等なものをお支払いしたのです~」
「えぇ……心遣いはありがたいのですが、ね?」
えぇ、お茶がダメなら葉っぱで良いと思ったのですが、大誤算でしたとも。
やはり私の手元にはお茶があればいいって事ですねっ。
「……失礼ですが、あの葉が個人の所有物になっていた場合、どのような事になるか考えましたか?」
「?」
「あ、やっぱり。いいですか? あの葉の存在が周囲に知れたら、まずどんな手を使っても手に入れようとする輩が出てきます。それはたとえ、エルフであろうと逃れられない物欲でしょう」
女王様は唇を一度湿らせて、再度続けます。
「その場合、あの葉を中心に、争いが起こるでしょうね。最初は小さくても、徐々に大きくなると思います。最終的には、葉一枚の為に国が傾く程度の大きな暴力に発展するでしょう」
「ひぇ……」
「貴女の本意ではないでしょう?」
「そうですね……すみませんでした……」
まさか、そんなことになるだなんて……想像もできませんでした。
バレちゃいけないって言われてたのは、そういう事だったのですね……バレた先に何が起きるかなんて思考の外でしたよ。
いや、そもそもバレちゃいけないってのも忘れていましたが!
「つまり貴女の行いは、個人に国が傾くレベルの高級品を渡して、内部腐敗を引き起こそうとした下手人
となるわけです」
「よく理解でしました……申し訳ございません……」
「まぁ、葉は我々で回収いたしましたので、未遂ではありますがね」
おぉ、よかった……! それなら皆さんで喧嘩する事もないですね~。
香草屋さんとキノコ茶屋さんには、後でお詫びをしないといけませんね。
あとでお茶持って行こう!
「ホッとしている所申し訳ありませんが、貴女への裁きはまだ終わっていませんよ?」
あ、そうでした。
私ったら大変な事をしてしまったので、なにかペナルティがあるんですよね。
女王様に先を促し、しっかり聞く体勢に入ります。
「……よろしい、では、沙汰を言い渡します」
女王様は瞳を細め、体に魔力を纏わせながら囁きます。
その光景はとても幻想的で、美しいものでした。どこぞの時代劇では、入れ墨見せて悪を成敗するような佳境の気配がしますとも。
「貴女の罪は、滞在期間内での奉仕活動です。それで許します」
「ん? それだけで良いんですか?」
「それ以上は貴女によって国が崩壊しかねませんので……長くは置きすぎない方が良いと判断しました。そのかわり、刑期の間は我々の為に働いていただきます。よろしいですね?」
「あ、はいっ!」
その程度でお詫びになるのならば喜んで働きますとも~。
んふふ、私だってノーデさんのご奉仕を受けていた身! どんな風に働けば良いかなんて、重々把握しております!
この程度はペナルティにもなりませんよっ!
「……ところで、キノコ屋さんは私の力で世界樹の復活を目論む~なんて言ってましたけど、それはしないんです?」
「……はぁ……」
あ、これは少ししてから切り出してやらせるつもりでしたね。
キノコ屋さんに妙な親近感が湧きますね!
「あはは~、まぁそのくらいの協力なら惜しみませんよ~?」
「その位って……そんな規模の話ではないのですがね?」
「ままま、無理なら無理って言いますからっ! それより、私メイド服着てみたいです!」
そう、ご奉仕といえばメイド!
心和ちゃんメイドスタイルを御所望します!
「メイド服……ヒュリンの商人から買った衣服の中に、その手の服があったと思いますので、ご自由に着ても良いですよ」
「わ~い!」
という訳で、私は滞在期間の間、エルフさん達のメイドとして働く事になったのでした。
ふふふ、スーパーメイド心和ちゃんの力で、エルフの里は全てピカピカにしてあげますとも~!
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