ドライアドさんのお茶ポーション

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第53話:エルフの里にご案内

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「うぉぉぉぉぉおおお!!」

「俺達はやった! やったんだぁぁあ!!」

「はっはっはっはっはっは!!」

 翌日、明朝。
 騎士さん方一同は、朝日に向かって抱き合い、雄叫びを上げております。
 その表情はどなたも活力に満ち溢れ、体と体がぶつかる度に玉のような汗が飛び散ります。
 まさに青春。まさに友情。
 本当に一晩かけて走り切るとは、思っておりませんでしたとも……。

「おかげで私、絶賛兎車酔い中ですが……」

「気にすんな、俺もだ……」

「んもう、二人とも軟弱ねぇ? あぁ、しかし素敵な光景だわぁ。皆若々しくて、食べちゃいたい♪」

 はい、私達は今、エルフの里に程近い、森の手前に来ております。いえ、到達したと言うべきですね。
 ドーピングした騎士さん達がハッスルしたおかげで、ここまで最短で来ることができたわけですが……私も夜中まで飛ぶわけにもいかず、こうして兎車に乗らざるをえなかったのですよ。
 結果として、こうしてお酒も飲んでいないのに二日酔い状態です……デノンさんも、流石に一晩揺られたら流石に酔いもするわけで。
 というか、えっちゃんがおかしいんですよ。普通酔いますって……。

「とにかく、少し休んで行こうぜ……こんな顔して国に入れねぇよ……」

「賛成です~……私もこの辺に樹でも生やして、少し休みたいですね……」

「あらん? でも、もうお迎えが来ちゃったみたいよ?」

「「えぁ?」」

 えっちゃんの言葉を聞いて森の方を見てみれば、確かに一人の人物がこちらに向かってきています。
 うん、うん……あれエルフですね。マジにお迎えじゃないですかぁ。
 女性ですよね? 綺麗な金髪に、長い耳。瞳が細く吊り気味だから、ちょっとキツネっぽい雰囲気です。あと脅威の胸囲的に私の敵だと思われます。
 というか対応早すぎ! 優秀? 優秀なのですか!?

「し、失礼しますっ。フィルボの皆さんです、よね? ドワーフではなく」

「あ、あぁ、この大陸にドワーフはいないだろ? ピットから来たフィルボだよ」

「随分お早い到着ですね……」

 あぁ、なんか呆れ半分焦り半分な言われよう!
 これはあれですね。「こっちはまだ準備の途中なのに、なんで約束より早く来てくれてんのお前ら」って感じですね。

「色々あったんだ、すまないな。都合が悪いならこっちで時間潰しとくから……」

「い、いえいえ! 客人、それもピットの王を待たせるなどできません! どうぞ中へ!」

 エルフの人は、慌てた様子で私達を国へ促してくれます。
 ここで私もデノンさんも苦い顔。どうせなら休んで行きたかったです……入ったら絶対偉い人に一番に会わないといけないじゃないですか~。

「はぁ、じゃあ……すまないが、入らせてもらおうか」

「はい、どうぞどうぞ!」

 え~、断らないんですねぇ。
 向こうの都合も考えると、待ってた方が絶対いいのに。

「……向こうにも面子があるだろうが」

「あ、聞こえてました?」

「向こうからの印象悪くなりそうだなぁこれ……あ~胃が痛い……!」

「まぁまぁ、なる様になるわよ」

 結局、私達はエルフのお姉さんに連れられて、お国に向かう事になりました。
 まま、交渉とかはデノンさんがやってくれるでしょうし、あまり深く考えずに行きましょう~。

「……あの、ところで」

「ん?」

「失礼いたしますが……彼女が?」

 エルフのお姉さんは、申し訳なさそうにしながら私を見ています。
 私がなんでしょう?

「あぁ、先にそちらにも伝えてあっただろう? 森の管理者様だ。俺らと一緒に挨拶にきたんだよ」

「あぁ、やはり! 管理者様、どうぞよろしくお願いいたします」

「あ、はいっ、いえいえこちらこそよろしくです~」

 私がお辞儀すると、お姉さんも慌てて頭をさげました。
 うんうん、礼儀って大事ですね~。何事も丁寧な対応が一番心地いいものなのですよ。

「では、改めてご案内させていただきますねっ」

「あぁ、よろしく頼む」

 あれ? えっちゃんには挨拶なし?
 私が指摘しようとすると、唇に人差し指が当てられます。
 ちらりと見てみると、えっちゃんがウインクしていました。

「な・い・しょ♪」

「?」

 内緒……なんで?
 ん~、よくわかりませんけど、えっちゃんが良いなら別にいいでしょ、
 私もまた、素直にお姉さんに付いて行くことにしました。

「車は……森の中では無理そうですね」

「あぁ、ピットも森に面してるとはいえ、車は草原を走る用だからなぁ」

「大丈夫ですか? 多少歩きますけど」

「いや、むしろありがたいな……少し歩きたい気分なんだ」

 そこに関しては同感です。私は浮いてますけど~。
 お姉さんはきょとんとしながらも、深く考えるのをやめて案内に戻ってくれました。
 森に足を踏み入れ、フィルボの皆さんを先導していきます。
 んん~……やっぱり草木が多いといいですね~!

「…………」

 おや?
 エルフのお姉さんから、何やら魔力を感じたような……少し荒いですけど、念話ですね。
 見つかる時点であまり念話に慣れていないのでしょうね。まぁホントは難しいですからさもありなんです。
 でも、誰に念話したんですかね? ん~……上からの命令で来たのでしょうから、その上司さんとかに連絡したのかな?
 ホウレンソウは大事ですね~。

「エルフの里、楽しみですね~」

「……えぇ、そうねぇ」

 えっちゃんと他愛ない会話をしながら、私は胸を躍らせていました。踊る程ないって思った奴は表へ出ろ。
 もちろん、楽しみなのはお茶に関してですよ! エルフ秘伝の調合とか見れるのかな~!
 ワクワクが止められず、私はついついくるりと一回転してしまうのでしたっ。
 
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