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第51話:見えちゃう夢の国

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 エルフの里は、ピットからそこそこ離れた場所にあるらしく、兎車でも2日はかかるのだとか。
 平坦な草原を走って2日ですからね~。確かにそれは距離があるのです。
 私は長時間の乗車で吐くというのが明らかになったので、追走気味に飛んでいく事を了承してもらいました。まぁ目的地ギリギリでは中に入っててほしいって言われましたけども、それはまぁ仕方ないでしょうね~。

 今は、どこまでも澄み切った空の下で、兎さん達が頑張ってくれてる真っ最中です。草原故に景色が変わらないかと思っていましたが……中々どうしてそんな事はありませんね。
 ここに来るまででも、やたら大きな魔物が草原にぽつんと生えた林をもしゃもしゃしてたり、空では翼竜が火ぃ噴きながら横切ってたりしましたし。
 いやぁ、こうして森を出てみれば、素晴らしくファンタジーですねぇ~。心和の知識を持つからこその感想ですが~。

「うぅん、おひさまが気持ちいいのです~」

 照りつける夏の太陽は、風の涼しさも相まって程よい暑さとなり照りつけます。この世界にオゾンとかあるのなら、環境破壊されてない分紫外線とかも少なそうですよね。
 ドライアドの身体はなんのかんので植物ですからね。こういう時に光合成しておくと、結構魔力の節約になるんですよねぇ。

 私は気分よく、背泳ぎみたいにひっくり返りながら飛んでみています。足をバタバタさせて、腕をグルグルすいすい~。
 兎さんのすぐ横につけて、可愛さを堪能しながら飛んでいますとも。

「お~い、管理者さ……ぶほっ」

「ふぇ?」

 不意に、足元で声がしました。
 体の向きを変えて、そちらを見ますが……うん、誰かが顔を引っ込めましたね。
 誰かっていうか、デノンさんでしたね。
 …………おんやぁ? 私今、どんな体勢してました?
 こう、兎さんと追走して背泳ぎ、ですから……車側に足を向けて、ばたばたしてたわけですよ。
 で、今の私はいつも通り、葉で織ったワンピースを着ているわけで。

「……………………」

 私は、閉められた兎車の窓にビタン! とくっつきます。

「ひっ」

 中で、顔を赤くしたデノンさんが声をあげました。

「見ました?」

「みみみ、見てない……」

「見ましたね?」

「見てないってば……」

「じゃあ質問です、どんな色だったでしょうか?」

「……ま、マゼンタ?」

「正解で~す」

「はぁ!? オイこら嘘つくな! 緑だっただろうが緑!? 俺を変態に担ぎ上げようとしてもそう……は……」

「…………」

「……あ……」

「あらあら」

 私のひっかけに見事乗ってくれたデノンさんが、滝のような汗を流しています。
 うぇへへ……焦る少年、これだけでご飯いけちゃいますよ~。

「デノンさん、や~らし~」

「ば、ち、ちが! 不可抗力だってあんなん!? いやまずはごめん! でもワザとじゃねぇって!?」

「デノンちゃん? 言い訳は男らしくないわよぉ?」

「なんっ、ば、ぉ……!」

「まずは、感謝と感想を述べないといけないわ!」

「それこそ俺がお縄につくわ!?」

 いや~、キレッキレじゃないですかぁ~。
 私の周りは、ここまでツッコミに特化した人いませんからねぇ。ゴンさんはまず手が出るし、ノーデさんはやりすぎない限り肯定派ですし。
 こういう時に、デノンさんのツッコミを味わっておくのは大変貴重な事だと言えましょう。

「うぇへへ……まぁまぁ、ワザとじゃないのはわかってるから、もう大丈夫ですよ~?」

「うぐ……ほ、ほんと、ごめん」

「いいですってば~。可愛かったですしっ」

「いや、その感想はおかしい……」

「それで、何の御用で呼んだんです?」

 私の指摘にはたと用件を思い出したのか、デノンさんが小さな石を取り出します。
 これは……通信石ですね。割れた片割れが魔力により常に連動し続け、振動を音として伝え合う事が出来る石です。
 つまり、この石を半分に割って、口元に近づけて「あ~」って言うと、その振動がもう片方に伝わって、『あ~』って声みたいになって伝わるのです。

「さっき、先頭を走ってる騎士から連絡が来てな。水場がこの先にあるから、兎達を休ませたいんだそうだ」

「ほうほう、良いんじゃないですか? 休むには良い時間でしょう~」

 今はのんびりしたスピードとはいえ、ずっと引っ張りっぱなしって訳にはいかないですからね~。
 水場があるなら、丁度よく休憩と行こうじゃないですか。

「ん、じゃあ休憩でいいな。伝えとくよ」

「別に私に聞かなくても大丈夫ですよ~?」

「一応大使様だしな。筋は通さないといけないんだよ」

 そういうもんですかね~。ややこしややこし。
 そうこうしている内に……そ、走行、している内に……おそまつ。あぁ、我慢できなかった……!
 まぁそれはそれとして、兎さん達が減速していきますね。どうやら目的地についたみたいです。
 前を見てみれば、ちょっとした大き目の茂みがあります。その中心に、大き目の湧き水が溜まっているのが見えますね。
 広原のど真ん中に湧き水とは……ここを中心にちょっとした文化が出来上がっててもおかしくないですね~。

「よぉしよし、頑張ったな」

「俺、水汲んできますっ」

 先行していた騎士さん達は、休憩という訳で兎を労ったり、水汲みに奔走を始めた様子。
 おぉ、周囲の索敵をしている人もいますね。さすが、ノウハウをわかってる感じですね~。

「運が良かったな。こういう水場には魔物がいてもおかしくなかったけど」

「そうねぇ、素直に休憩できるのはありがたいわぁ。んんっ、腰が痛くなっちゃった」

 降りてきたデノンさんとえっちゃんも、思い思いに休憩する感じですかね?
 あ、デノンさんは指示を出しに行きましたね。働き者ですこと~。

「ん~、ちいなみに……!」

 私は湧き水にちょちょっと近づき、指を突っ込んでみます。
 きゅきゅっと吸い取り……ん~、やや硬め? あまりお茶には向かないかもです。
 ですが、せっかく水を確保できるならお茶にしたいものですよね~。さてさて、どれにしましょうか……!
 
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