ドライアドさんのお茶ポーション

べべ

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第38話:ポンコツ心和ちゃん

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「うぇへへへ~、お茶、お茶~」

 管理者家業から帰宅した私は、早速皮の袋を開けていました。
 一体どんなお茶が入っているんでしょうか。楽しみでしかたありません。
 大変心苦しくはあるんです。ですが仕方ない! 何度目かの大いなる自己肯定力を発揮しつつ、口を縛っている紐を解いていきます。

「おや? ココナ様、そちらの袋は?」

 そこへ、おやつの仕込みを終わらせたノーデさんがやってきました。
 エプロンなんか着込んじゃって、完全に若奥様ルックです。

「大変失礼ですが、また女扱いしませんでした?」

「いいえ?」

「それなら良いのですが……」

「あ、それよりもノーデさん。今日のお茶会はこのお茶飲みましょっ」

 私がひらひらと皮の袋を揺らすと、ノーデさんは怪訝な表情をさらに怪訝にして首を傾げました。

「ココナ様、その袋にはお茶が入っているのですか?」

「はいっ、ここにちゃんとお茶って書いてあるでしょう?」

 皮袋に書いてある文字を指差し、見せてあげます。
 ノーデさんの記憶にないってことは、ピットとは違う国のお茶なんですかね? ますます楽しみです。

「……ココナ様? その袋は、どこで見つけたのですか?」

「ん~? 森の東南に診察に行った時に見つけたんです。こんな雨の日にお茶を落としてしまった人がいるみたいなんですよね~。可哀想ですけど、お茶がダメになったらもっと可哀想なので、私たちが飲んじゃいましょう!」

「ふむふむ、なるほどなるほど……」

 ノーデさんはしばらく考え込み、何度も深く頷きます。
 そして、一瞬後……

「守護者様ー! 守護者様ー! ココナ様がー!」

 何でか、ゴンさんを大きな声で呼び始めました。
 あぁ、ゴンさんならこれがどんなお茶かわかるかもですもんね~。
 もし美味しいお茶だったら、褒めてもらえるかもしれません!
 私は、ゴンさんの肉球で頭をぽふぽふされる未来を想像して、はにかむのでありました。




    ◆  ◆  ◆




『こんの……大馬鹿者がぁぁぁぁ!!』

 ごちーん!

「ぎゃふーん!?」

 私を待っていたのは、にくきゅうぽふぽふではなく、てっけんせいさいでした。
 おぉぉぉ、脳天から股関節にいたる道筋に衝撃という衝撃が響き渡るるるる……!?

『チビ王から話は聞いていたであろうに! 何を軽率にもの拾いなどしておるか! 茶葉の入った革袋など、そうそう落ちているはずがあるまい!』

「はぁ……やはり私が同行するべきでした……」

 あぅあぅあぅ、あ、頭にたんこぶできてますよこれ?
 しかもなんか果汁溜まってます。めっちゃ瑞々しいたんこぶです。
 とりあえずもいで一口……あらやだ甘い! これ美味しいです!

『話を聞かんかぁ!』

 ごちーん!

「ぎゃふーん!?」

 2個目が実ってしまったではないですかー!
 こんなに美味しいたんこぶが出来るなんて、人にバレたら私の頭ガンガン叩く人が増えちゃいます!
 私、バカになってしまいますよ!?

『貴様は既に馬鹿だ。気にするでない』

「素直さはココナ様の美徳ではあるのですが……少々の警戒心は必要かと存じますよ?」

「あふんっ、ノーデさんに言われるとショックですぅ……」

 あ、ちなみにこのたんこぶもまた、回復アイテムみたいですね。食べたらゲンコツのダメージが無くなりました。
 私の体、余すことなく癒しのレディって感じです!

『……して、どう見る。チビ助』

「は、十中八九グラハム殿かと存じます。どんな手を使ったやら、既に我々の居場所を突き止めたご様子ですな!」

 ほうほう、このお茶を落としたのは例のグラハムさんだったんですね。
 運が悪いですねぇ。商人さんなら品物の管理はしっかりしとかないと。

『……まぁ、これ以上馬鹿になられても困る故、もうコヤツは放置するぞ。それで、そやつの狙いはなんだと思う』

「ふむ……ピットの子供らから話を聞き出したのならば、ココナ様がお茶に目がない事を知ったはずです。今回のこれは、その事実を確定させる為のものだったのでは?」

『なるほどな』

 んー、つまり、私にお茶をプレゼントして、お茶大好きですーって所が本当だったか知りたいって事です?
 なんでわざわざ、そんな片想いの男子の好物を知ろうとする青春真っ盛り女子高生みたいな事を?

「えぇと、つまりですねココナ様。グラハム殿は、次にココナ様に接触する際、手土産にお茶を数種類持参してくるつもりなのですよ」

「なにそれ聖人じゃないですか」

「うーん、そうとも言い切れないですかねぇ……お茶をエサに、ココナ様の秘密を暴こうとしてくるでしょうし」

『雨の中でこの確認を行ったという事は、我の存在も知っておるな。匂いを追われないようにしていたのだろう』

 なるほどー。そういう裏があるんですね。
 でも、そう考えるとお間抜けさんな話なのです。こんな明確な証拠を残してしまったら、ゴンさんやノーデさんにグラハムさんの企みがバレてしまうに決まっています。
 現に今バレていますからね。こんなに用意周到な御仁が、そこまでの愚を犯すでしょうか?

「ふむ……おそらくですが、グラハム殿自身も、この流れは予想外なのではないでしょうか?」

「ん~? どういうことです?」

「つまり、ココナ様がこうしてお茶袋を持ってきてしまった事が、グラハム殿の想定と違う可能性がある、ということです」

『……普通ならば、人の手の及ばぬバウムの森で、茶の袋が地面に落ちていたら、怪しむものだ。拾う事はまずないと言っていい。だが、真に茶の好きな者ならば、拾いはせずともしばらく眺めたり、葛藤はする可能性がある、という事だな。それを判断材料にするつもりであったか』

「ご慧眼、感服いたします」

 ほうほう、つまり私は、グラハムさんを良い感じに出し抜けたってことですね。
 その結果、ゴンさんとノーデさんが警戒すべきと気付いてくれた感じです! これはグッジョブなのでは!?

「あはは、まぁ、ココナ様の事ですからね。おそらく2秒以内で即決即座に雨風から保護して、スキップみたいに上下に飛びながら帰路についたのでしょうね」

 すごい! ノーデさんはエスパーなのです!
 ここまで私の行動を読むなんてっ。

「そのような神々しい、純粋なココナ様が見れなかったのはとても残念です……」

『何故今の今まで利発に語っておったのに、そこで盲目と化すのだ貴様は……とにかく、貴様の情報は間違いなくその商人に流れた。今後、必ず接触を図ってくるだろう』

「そうですね。商品を持ってきて取引を持ち掛けるならば、おそらく梅雨明けでしょう。それまでの間に。ココナ様の力や弱みを隠す術を身に着けていきましょう!」

「わかりました!」

 こうして私たちは、来るべき商人さん達とのバトルに向けて牙を磨くのでありました。

「……ちなみに、このお茶どうします」

『やむを得まい。飲むしかないであろうな。貴様の尻ぬぐいをしてやる故、ありがたく思えよちんくしゃ』

「あはは、守護者様も守護者様ですねぇ」
 
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