ドライアドさんのお茶ポーション

べべ

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第30話:クマとカマの実食

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「おまたせしました二人とも! ご飯お持ちしましたよ~!」

 私とノーデさんは、意気揚々と広間への襖を開け放ちました。
 そこにいるのは、畳に設置された長机を挟んで笑顔を浮かべる精霊様と、ぶっきらぼうな守護者様。
 どうやらお話はまとまりつつあるご様子ですかね~。どちらに軍配が上がったかはともかくとして。

「ままま、積もる話もあるでしょうが、まずはご飯を食べてゆっくりしてから続きをどうぞ~」

「あらやだ素敵! 私ったらお腹ペコペコなのよぉ」

『嘘をつけ。貴様に膨れる腹などあるものか』

「やぁねぇ、私だって日々進化してるのよ? お茶を飲むようになってから、どんな食材がご飯に合うか~とか模索してるんだからぁ」

 ふむふむ、確かにそういうえっちゃんのお肌は前にも増してスベスベしているかもしれません。
 これは、私の魔力入りお茶だけでなく、色んな食べ物を摂取している証拠でしょう。
 ならば、これを食べて更に美に磨きをかけていただきたいものですとも!

「今日のメニューは~、鶏皮のパリパリ焼き~。和風鶏ガラスープ~、そして親子丼ですよ~」

 あとは、軽くサラダとか作りましたね~。
 新築祝いということで、量は十二分に作らせていただきましたとも!
 特にゴンさんのはビッグサイズですから、圧巻の一言です。
 並べられる3品の料理に、全員の視線が集められます。

『ふむ、パリパリ焼きか。あれは良いな、実に美味いやつだ。しかし残りの2つは見たことないぞ』

「ココナ様が、お米の状態を確認した上でこの料理を作ろうと判断していた料理です。きっと美味しいと存じますよ」

「素敵! 黄色くてとろっとしてて、まるで子どもたちの描いてくれた絵みたいに明るいわ!」

 三者三様のご意見をいただきつつ、全員がそわそわしています。
 ……あぁ、私が席についてないから食べようとしない感じですか?
 これは失礼。ではちょっと失礼いたしまして~。

「あらん、フラれちゃった」

『……フン』

「んん?」

 なんでしょう。ゴンさんの隣に座っただけなのに。
 私、なにかしましたか?

「はは、なるほど。いやいやココナ様、今のは二人だけのなにがしがあっただけのようです。お気になさらず」

「んん? そうなのですか?」

『おい、飯が冷めるぞ』

「あ、はいなはいな~」

 よくはわかりませんが、確かに今は料理が冷めてしまう以上に重要な事はありません。
 お早くいただきますしちゃいましょう!

「え~では、一家の大黒柱であるゴンさんからお言葉をどうぞ~!」

『……何故貴様はそう、打ち合わせもないまま唐突に無茶ぶりを振ってくるのだ』

「愛ゆえに、ですかね?」

『たわけ』

 それでものっそり立ち上がって麦茶を握るゴンさん。そういう付き合いの良い部分好きですよ~。

『……ふん。本来ならば、そこのチビ助が森に居つくことになった経緯を労い、また我としても住み心地の良い屋敷が出来た事に対する宴のつもりであったが、こうして余計な存在が入り込んだことは不服と言わざるをえん』

「ぶ~ぶ~、何よ何よぉ」

『……だが、来てしまった以上はちんくしゃの料理を食っていけ。なんのかんので我はこやつの飯だけは評価しておる。残すことは許さん……チビ助も、手伝いをしたことは褒めてやる』

 おぉ、これは嬉しいお言葉ですねぇ。ノーデさんも嬉しそうに微笑んでいます。
 なんかえっちゃんが「あら、当て馬にされちゃったん」とか言ってますけど、えっちゃんそれ意味わかってて言ってます?

『というわけでさっさと食うぞ。本当に冷める』

「はいっ、では乾杯です~!」

「「かんぱ~い」」

 ゴンさんが焼き上げたコップがカコンとぶつかり合い、全員が麦茶を一口。
 そして、いよいよ始まる御食事タイム。
 湯気を立てるスープを飲み、しゃきしゃきのサラダを堪能し、鳥皮を貪り親子丼をかきこむ時間です。
 うんうん、みんなよく食べてくれますねぇ。

「このスープ、凄く美味しいですね! 鳥の骨からこんなにも濃厚な味が染み出すなんて……それでいてあっさりしています」

「このお肉って、コカトリスなんでしょぅ? すごいわねぇ、あの子達をこんなにおいしくしちゃうなんて。デノンちゃんに良いお土産話ができたわ~」

『うむ、親子丼と言ったか? これはいいな。程よい柔らかさの肉に卵と野菜が絡む事で味がさらに深まっておる』

 皆さんとても美味しそう!
 うんうん、やはりこの瞬間はすごく気持ちいいですねぇ。私も麦茶がはかどると言うものです。
 ご飯を食べてもらえるという喜び、プライスレスって奴ですね!

『ふむ……森の区画を一部利用して、米を栽培するのもありだな。どうせなら新鮮なものが食べたいぞ』

「あはは、すみません古米で。米の栽培をするのでしたらば、水を引っ張ってこないといけませんよ?」

『どうにかしようではないか』

 またゴンさんのやり込み癖が出てますねぇ。
 家といい茶器といい、こだわり始めたら休日のお父さんの日曜大工並みに色々作っちゃうんですから。

『む……おいアースエレメンタル。貴様だけ鳥皮を食いすぎだぞ!』

「いいじゃないの~、これってお肌にもいいんでしょう? いっぱい食べなきゃっ」

『たわけ! 我はまだほとんど食っておらんのだぞ!』

「まぁまぁ、お変わりはこのノーデめが作ってきますので……」

 うんうん……騒がしい食事の風景。
 そうですね。記憶の中でも、4人家族でにぎやかに食べておりました。
 なんだか、心和の記憶でしかないのに、凄く懐かしい気分になってしまいます。……少し寂しい感じ? ん~、でもそれとも違うような。複雑なものですとも。

『おいちんくしゃ。お代わりだ。大盛で頼むぞ』

「ココナちゃん、私も!」

「はは、行きましょうかココナ様。ノーデめもお代わりをしたいので、お手伝いいたします」

「あぁ、はいなはいな~」

 ……うん、寂しいなんてのは失礼ですね!
 私にとっては、この人たちが初めての家族なのです。心和の記憶には悪いけど、彼ら以上の価値は、記憶の中の家族には見出せません。
 今の私には、これが一番! ですが、記憶の中の彼らにも、それを再認識させてくれた感謝を送りましょう。

「ではノーデさん、お手伝いお願いしますね~」

「はいココナ様! どこへなりとも!」

 ……その後、飯は大変進み。
 結局、皆さん沢山お代わりして、用意した食材を使い切ってしまったのでありました。
 うんうん、満足!
 
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