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第129話 行方不明者と古代の神殿
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馬車はアルテを出て森へと向かっていく。
その道中、様々な人とすれ違うことがあった。
比較的辺境と思われるこのアルテ村だが、それだけの人が集まってくることにボクは驚きを隠せないでいた。
特に、ハンターだけじゃなく商人や貴族といった人も混じっていたことが驚きだった。
どうやら想像以上にこのアルテ村は期待されているらしい。
「アルテ北西にダンジョンが見つかったらしい。なんでも中にはお宝がたんまりあったとかで、街のほうではちょっとした騒ぎなんだとか」
「なかなか価値のあるマジックアイテムが見つかったって話だ。今なら安く仕入れられるかもしれないな」
(ふぅん)
「遥お姉様、今の話は……」
「今はあまりに気になくていいと思いますよ。どうも北側ではダンジョンやら何やらがよく見つかるようでして」
ハンターの少女たちも今の話は聞いていたようで、少し興味を持ったような顔をしている。
「ほかに何かいい話はないですかね……」
街道を森へ向けて進む最中、聞き耳を立てながら噂話を収集することにした。
するとまた興味深い話が聞こえてきたのだ。
「古代の神殿って聞いたことあるか?」
「あぁ。なんでもアルテ北にある裂け目の奥にあったっていう古代遺跡のことだろ? 侵入しようとしたけど侵入できない上に、高濃度の魔素が渦巻いているせいで何人も死人が出たっていう」
「おう、それだ。ついさっきの話だが高ランクパーティーが全滅したらしい。早馬に乗った神殿の僧兵が話をしてた」
「高ランク? どこの誰だ?」
「Aランクパーティーの【叡智の探究者】だ」
「なんだって!? あそこはSランクがいただろ?」
「行方不明だとさ」
「なんてこったい。じゃあ救助は」
「何人か死体は回収したらしいけど、Sランクまでは探せなかったとさ」
「ギルドマスターは?」
「ヒンメス様は立ち入り禁止を宣言されたよ。捜索や回収については後程計画するらしい」
「最低でもSランクだけでも生きてればいいが」
「あぁ。なんたってヒンメス様の妹の娘だからな」
(う~ん。ヒンメスさんはあの時点では知らなかったのか)
どうやら何か事件が起きたようだ。
「あそこ8人だったよな」
「あぁ。前衛2中衛3後衛3だな。回収された死体はAランク戦士2とAランク探索者1、Cランク運び屋2だ。Aランク魔術師とBランク弓使い、Sランク神官は行方不明だ」
「こりゃあ荒れるな」
「とりあえず、ギルドの動向を見守ろうぜ」
「だな」
ボクが聞き取れたのはここまでだった。
死んでしまった人は仕方ないにしても、行方不明の人は少し気がかりだ。
でも、魔素が濃い場所かぁ。
長くは持たないかもしれないね。
「遥かお姉様、何をお考えで?」
ボクが考え込んでしまったのを見て気になったのか、瑞歌さんが語り掛けてきた。
う~ん、様子だけ見るべきだろうか?
「いえ、ちょっとその遺跡とやらが気になりまして」
「なるほど。では少し遠回りをいたしましょう。ミレさん」
瑞歌さんがそう言葉をかけると、ミレは頷いて進路を森から方向をずらし、森沿いに北に向かうように進めさせた。
「あ、ありがとうございます。現地に着きましたら、ボクと酒呑童子さん、瑞歌さんとミレたち以外は馬車で待機していてください。それと瑞歌さん、人払いの結界をお願いします」
「わかりましたわ」
「わ、わかりました」
「おう」
危険な場所らしいので新しく加わった8人を連れていくことはできない。
影響の及ばないボクたちだけで行くのが最適だろう。
「あ、現地に到着したら瑞葉を連れてきますね」
「わかりましたわ」
ダンジョン化してる可能性があるので、瑞葉を連れて行くといいかもしれない。
馬車は街道をそっと離れ、誰もいない場所まで行く。
そして誰にも見られないようそっと姿を隠すとペガサスさんたちが空を飛んで馬車をけん引した。
当然一瞬馬車が少し傾いてみんな驚くが、すぐに安定するので何事もなかったかのように車内は落ち着きを取り戻した。
この馬車は空を飛ぶと水平になるよう魔法が掛かっているらしく、空中でぶら下がった状態になることはない。
なんというか、とてもご都合主義な馬車なのだ。
「遥お姉様、瑞歌お姉様、今何が」
「ちょっと空を飛んでいるだけですわ。気にせずその場にいなさいな」
「そ、空!?」
「ちょ、暴れないでちょうだい」
「大丈夫ですから。落ちたりしませんから寛いでいてください」
若干パニックになるものの、シーラがお茶とクッキーを取り出したことで車内は一時的に落ち着いた雰囲気を取り戻した。
まぁ、この状態で外に出ようとしても出られないから落ちることはあり得ないんだけどね。
しばらく談笑を続けていると、目標を発見したらしく馬車は緩やかに下降を始めた。
最初と違って傾きを感じないので車内に異変はない。
「どうやら到着したようですね」
まるで空飛ぶ救急車とでも言わんばかりの速度で現地へと向かったわけだが、少し急ぎすぎたかもしれない。
まだ現場には人が残っているのが確認できた。
長い台車には布に包まれたものが5本積み重なっているのが見える。
あれが件の遺体なのだろう。
「さて、人払いをしたまま降りるしかないですね」
遺体についてはあとで考えておこう。
まずは裂け目へと降りることが重要だ。
「オレは飛び降りても大丈夫だけどよ、遥はだめだろ?」
「はい、死ぬほど怖いです」
これがボクの率直な感想だ。
「では私が下にお連れしますわ。お姉様たちは私のそばにいてくださいな」
瑞歌さんがそう言い終わると、ボクたちは急いで瑞歌さんの周りに集まった。
すると、足元が薄く輝き、そのまま円盤が出現。
ボクたちをエレベーターの要領で遺跡部分まで運んでくれたのだ。
「ありがとうございます。ここに転移水晶を設置します」
ボクはさっそく台座と転移水晶を設置し、そのまま起動させた。
繋がっている先はボクたちの拠点だ。
「さて、少し行ってきますね」
「おうよ」
「いってらっしゃいませ」
みんなに見送られながら開いたゲートをくぐって転移部屋へと移動する。
「遥様お帰りなさいませ!」
転移部屋待機係のフェアリーノームがボクを見てにこやかに挨拶をしてくれる。
「ただいまです。瑞葉はいますか?」
「はい、お部屋でゆっくりしております。お呼びしますか?」
「お願いします。少しダンジョンと思われる場所へ行くので」
「わかりました。少々お待ちくださいませ」
待機係のフェアリーノームはそう言うとタタタと駆け出して部屋へと向かっていった。
それからしばらくして……。
「お母様!!」
「おっと」
駆け寄ってきた瑞葉を抱きとめるとその頭をボクはそっと撫でる。
「何やらダンジョンへ行くと聞きました!」
「はい。ダンジョンだとは思いますが、色々問題のあるところのようでして」
「なら私の力が役に立つと思います!」
「では行きましょう」
「はい!!」
笑顔の瑞葉と手を繋いで再びゲートを通り、現場へと戻る。
「おう、戻ったか。瑞葉にっこにこだな」
ゲートを出てすぐに出会ったのは酒呑童子さんだった。
酒呑童子と瑞葉は馬が合うようで早いうちから仲良くなっていたのだ。
「酒呑童子お姉ちゃんこんにちは。瑞歌さんもこんにちはー」
「はい、こんにちはですわ」
小さくて元気で可愛らしい瑞葉が来てからというもの、瑞歌さんもすっかり柔らかくなったような気がする。
「準備はどうですか?」
早速突入したいところだが、現在の状況はどうなっているのだろうか。
「いつでも大丈夫ですわ。しばらくはこの遺跡地には誰も立ち寄らないでしょう。それにしても、ただの人間がよくここに入れましたわね」
「短時間なら何とか大丈夫とは聞きましたけど、よくこんな危ない場所にある古代の神殿なんかに来ようと思いましたよね」
瑞歌さんが疑問に思うのももっともで、ここは大地の裂け目の底にある。
近くにはポツポツと黒い水溜りのような魔素だまりがあり、非常に危険な状場所となっていた。
おそらく、通常の人間だと1~2時間が活動限界といったところだろう。
「では行きましょう。魔素は回収していきますよ」
「わかりましたわ」
「おう。魔素ってのは変なにおいがするからすぐわかるぜ」
「ダンジョンマッピングなら私にお任せです!」
こうしてボクたちは古代の神殿と呼ばれる場所へと足を踏み入れるのだった。
その道中、様々な人とすれ違うことがあった。
比較的辺境と思われるこのアルテ村だが、それだけの人が集まってくることにボクは驚きを隠せないでいた。
特に、ハンターだけじゃなく商人や貴族といった人も混じっていたことが驚きだった。
どうやら想像以上にこのアルテ村は期待されているらしい。
「アルテ北西にダンジョンが見つかったらしい。なんでも中にはお宝がたんまりあったとかで、街のほうではちょっとした騒ぎなんだとか」
「なかなか価値のあるマジックアイテムが見つかったって話だ。今なら安く仕入れられるかもしれないな」
(ふぅん)
「遥お姉様、今の話は……」
「今はあまりに気になくていいと思いますよ。どうも北側ではダンジョンやら何やらがよく見つかるようでして」
ハンターの少女たちも今の話は聞いていたようで、少し興味を持ったような顔をしている。
「ほかに何かいい話はないですかね……」
街道を森へ向けて進む最中、聞き耳を立てながら噂話を収集することにした。
するとまた興味深い話が聞こえてきたのだ。
「古代の神殿って聞いたことあるか?」
「あぁ。なんでもアルテ北にある裂け目の奥にあったっていう古代遺跡のことだろ? 侵入しようとしたけど侵入できない上に、高濃度の魔素が渦巻いているせいで何人も死人が出たっていう」
「おう、それだ。ついさっきの話だが高ランクパーティーが全滅したらしい。早馬に乗った神殿の僧兵が話をしてた」
「高ランク? どこの誰だ?」
「Aランクパーティーの【叡智の探究者】だ」
「なんだって!? あそこはSランクがいただろ?」
「行方不明だとさ」
「なんてこったい。じゃあ救助は」
「何人か死体は回収したらしいけど、Sランクまでは探せなかったとさ」
「ギルドマスターは?」
「ヒンメス様は立ち入り禁止を宣言されたよ。捜索や回収については後程計画するらしい」
「最低でもSランクだけでも生きてればいいが」
「あぁ。なんたってヒンメス様の妹の娘だからな」
(う~ん。ヒンメスさんはあの時点では知らなかったのか)
どうやら何か事件が起きたようだ。
「あそこ8人だったよな」
「あぁ。前衛2中衛3後衛3だな。回収された死体はAランク戦士2とAランク探索者1、Cランク運び屋2だ。Aランク魔術師とBランク弓使い、Sランク神官は行方不明だ」
「こりゃあ荒れるな」
「とりあえず、ギルドの動向を見守ろうぜ」
「だな」
ボクが聞き取れたのはここまでだった。
死んでしまった人は仕方ないにしても、行方不明の人は少し気がかりだ。
でも、魔素が濃い場所かぁ。
長くは持たないかもしれないね。
「遥かお姉様、何をお考えで?」
ボクが考え込んでしまったのを見て気になったのか、瑞歌さんが語り掛けてきた。
う~ん、様子だけ見るべきだろうか?
「いえ、ちょっとその遺跡とやらが気になりまして」
「なるほど。では少し遠回りをいたしましょう。ミレさん」
瑞歌さんがそう言葉をかけると、ミレは頷いて進路を森から方向をずらし、森沿いに北に向かうように進めさせた。
「あ、ありがとうございます。現地に着きましたら、ボクと酒呑童子さん、瑞歌さんとミレたち以外は馬車で待機していてください。それと瑞歌さん、人払いの結界をお願いします」
「わかりましたわ」
「わ、わかりました」
「おう」
危険な場所らしいので新しく加わった8人を連れていくことはできない。
影響の及ばないボクたちだけで行くのが最適だろう。
「あ、現地に到着したら瑞葉を連れてきますね」
「わかりましたわ」
ダンジョン化してる可能性があるので、瑞葉を連れて行くといいかもしれない。
馬車は街道をそっと離れ、誰もいない場所まで行く。
そして誰にも見られないようそっと姿を隠すとペガサスさんたちが空を飛んで馬車をけん引した。
当然一瞬馬車が少し傾いてみんな驚くが、すぐに安定するので何事もなかったかのように車内は落ち着きを取り戻した。
この馬車は空を飛ぶと水平になるよう魔法が掛かっているらしく、空中でぶら下がった状態になることはない。
なんというか、とてもご都合主義な馬車なのだ。
「遥お姉様、瑞歌お姉様、今何が」
「ちょっと空を飛んでいるだけですわ。気にせずその場にいなさいな」
「そ、空!?」
「ちょ、暴れないでちょうだい」
「大丈夫ですから。落ちたりしませんから寛いでいてください」
若干パニックになるものの、シーラがお茶とクッキーを取り出したことで車内は一時的に落ち着いた雰囲気を取り戻した。
まぁ、この状態で外に出ようとしても出られないから落ちることはあり得ないんだけどね。
しばらく談笑を続けていると、目標を発見したらしく馬車は緩やかに下降を始めた。
最初と違って傾きを感じないので車内に異変はない。
「どうやら到着したようですね」
まるで空飛ぶ救急車とでも言わんばかりの速度で現地へと向かったわけだが、少し急ぎすぎたかもしれない。
まだ現場には人が残っているのが確認できた。
長い台車には布に包まれたものが5本積み重なっているのが見える。
あれが件の遺体なのだろう。
「さて、人払いをしたまま降りるしかないですね」
遺体についてはあとで考えておこう。
まずは裂け目へと降りることが重要だ。
「オレは飛び降りても大丈夫だけどよ、遥はだめだろ?」
「はい、死ぬほど怖いです」
これがボクの率直な感想だ。
「では私が下にお連れしますわ。お姉様たちは私のそばにいてくださいな」
瑞歌さんがそう言い終わると、ボクたちは急いで瑞歌さんの周りに集まった。
すると、足元が薄く輝き、そのまま円盤が出現。
ボクたちをエレベーターの要領で遺跡部分まで運んでくれたのだ。
「ありがとうございます。ここに転移水晶を設置します」
ボクはさっそく台座と転移水晶を設置し、そのまま起動させた。
繋がっている先はボクたちの拠点だ。
「さて、少し行ってきますね」
「おうよ」
「いってらっしゃいませ」
みんなに見送られながら開いたゲートをくぐって転移部屋へと移動する。
「遥様お帰りなさいませ!」
転移部屋待機係のフェアリーノームがボクを見てにこやかに挨拶をしてくれる。
「ただいまです。瑞葉はいますか?」
「はい、お部屋でゆっくりしております。お呼びしますか?」
「お願いします。少しダンジョンと思われる場所へ行くので」
「わかりました。少々お待ちくださいませ」
待機係のフェアリーノームはそう言うとタタタと駆け出して部屋へと向かっていった。
それからしばらくして……。
「お母様!!」
「おっと」
駆け寄ってきた瑞葉を抱きとめるとその頭をボクはそっと撫でる。
「何やらダンジョンへ行くと聞きました!」
「はい。ダンジョンだとは思いますが、色々問題のあるところのようでして」
「なら私の力が役に立つと思います!」
「では行きましょう」
「はい!!」
笑顔の瑞葉と手を繋いで再びゲートを通り、現場へと戻る。
「おう、戻ったか。瑞葉にっこにこだな」
ゲートを出てすぐに出会ったのは酒呑童子さんだった。
酒呑童子と瑞葉は馬が合うようで早いうちから仲良くなっていたのだ。
「酒呑童子お姉ちゃんこんにちは。瑞歌さんもこんにちはー」
「はい、こんにちはですわ」
小さくて元気で可愛らしい瑞葉が来てからというもの、瑞歌さんもすっかり柔らかくなったような気がする。
「準備はどうですか?」
早速突入したいところだが、現在の状況はどうなっているのだろうか。
「いつでも大丈夫ですわ。しばらくはこの遺跡地には誰も立ち寄らないでしょう。それにしても、ただの人間がよくここに入れましたわね」
「短時間なら何とか大丈夫とは聞きましたけど、よくこんな危ない場所にある古代の神殿なんかに来ようと思いましたよね」
瑞歌さんが疑問に思うのももっともで、ここは大地の裂け目の底にある。
近くにはポツポツと黒い水溜りのような魔素だまりがあり、非常に危険な状場所となっていた。
おそらく、通常の人間だと1~2時間が活動限界といったところだろう。
「では行きましょう。魔素は回収していきますよ」
「わかりましたわ」
「おう。魔素ってのは変なにおいがするからすぐわかるぜ」
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