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第77話 帰還、そして大問題発生

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 お母さんに力を借りて自宅と新世界拠点を繋ぐことができた。
 今はお試し接続の形を取っているけど、後程部屋ができたときは直接部屋と部屋を繋ぐ予定だ。
 その場合、この転移部屋はもっと広い場所に接続することになるだろう。
 場所の選定もしておかないとかな?

「これでいつでも帰れるわね。そうそう、遥ちゃんの部屋の掃除と洗濯は一通りしておいたわよ? 姿も性別も種族も変わったから、今までの部屋のままだと違和感を感じちゃうと思うから」
「違和感、ですか?」
 自分の匂いに違和感を感じるものなのだろうか?

「性別が変わったことで体臭も変わっていると思うわ。それに匂いにもある程度敏感になっているはずなのよ。まぁ行ってみればわかると思うけどね」
「は、はぁ……」
 お母さんもおかしなことを言うものだ。
 慣れ親しんだ自分の匂いに違和感を感じることなんてあるはずもない。

「じゃあみんなはここで待っていてください。ボクは軽く行ってまた戻ってきますから」
「「わかりました」」
 みんな待っていてくれるということなので、さっそくボクは自室へ戻ることにした。

「少ししか離れていないはずなのに、なんだか懐かしいですね。それにしても……」
 自分の家のはずなのにお母さん以外の匂いがわからない。
 むしろ知らない匂いが多いせいで違和感があるのだ。

 祖父母の家などに行って長期間不在にした後帰宅してみると、家の匂いに違和感を感じたことはないだろうか?
 鼻が慣れていないせいで、変な匂いに感じるのだ。
 今ボクが感じているのは、そんな感じの家の匂いと知らない体臭だった。

「あ、あれ?」
 自分の部屋に戻ってみる。
 自室は2階にあるので、いそいそと階段を上がり部屋の扉を開けた。

「えっ!?」
 匂いは確かに薄い。
 けど、うん。知らない匂いだ。

「えぇ? 今までの自分の匂いってこんなのだったの?」
 男性と女性では匂いの感じ方が違うような話を聞いたことがある。
 自分の体が全く別物になったせいかはわからないが、全く知らない匂いなのだ。

「これは、完全に他人の部屋ですね……」
 自分の部屋だから落ち着けるかと思ったけど、大きな間違いだった。
 これ、他人の部屋です。
 これじゃ安心できない!!

「うぅ……。どうにかして自分の匂いにしないとだめかも……」
 こうなったら、一旦必要なものだけ向こうに持っていこう。
 それから自分の匂いのついた衣類とか備品、シーツなどをこっちに持ち込まないといけない。

「遥ちゃん、どう?」
 どうしようか悩んでいると、お母さんが部屋に入ってきた。

「お、お母さん。これ、だめです。知らない匂いです」
「あらあら。いつもの遥ちゃんの匂いよ? 今はもっと別の匂いになったけどね」
「そうですよね。うー……」
 先に注意されていたとはいえ、ショックだった。
 この言いようのない不安感は、なんだろう。

「不安に苛まれる遥ちゃんかわいいわ。知らない匂いでいっぱいだから安心できないでしょう」
「まさか、こんなことに、なるなんて……」
 こうなると、ほかの匂いにも慣れないといけない……。
 帰還して早々、躓くことになったわけだ……。

「そうそう、遥ちゃん? そのままだと今通っている高校に通えないけどどうするの?」
「あっ」
 今のボクは大きさからいって8歳相当の女児だ。
 当然高校に行けるはずもない。
 ど、どうしよう……。

「どうしたらいいですか? まさか、小学校からやり直しですか?」
「う~ん。戸籍的にどうしたらいいか考えないといけないわね。まぁその辺りは相談してみるから安心しなさいな」
「わ、わかりました……」
 年齢そのままで性別が変わったわけじゃないので、そういう人たちと同じようにはいかないだろう。
 ほんと、どうなるのこれ。

「ちなみに、相談ってどうするんですか?」
「そうねぇ。死んでないけど性別変わって身長低くなりました。遺伝子は同じだと思いますけど~みたいな話はしないといけないわね」
「あわわわわ……」
 ちょっとした大事件である。

「と、とりあえずパソコン運んじゃいますね」
 ノートパソコンを一台運んでいくことにした。
 データはどうやって飛ばそう?
 後電源とか……。

「電波に関してはおうちのwi-fiに転送できるようにしておくわね」
「? どうやるんですか?」
 異世界からwi-fiをどうやって飛ばすんだろうか。

「中継するのよ。転移水晶を組み合わせたモバイルwi-fiがあってね? それを使って異世界から電波を送受信するのよ。もしかしたら遥ちゃんのところの瑞歌ちゃんが中継のお手伝いをしてくれるかもしれないけどね」
「ふーむ。よくわかりませんが、そういうのができるってことですね? 便利なんだか不便なんだか……」
 送受信速度とか全く不明だけど、とりあえず動くには動くようだ。
 中継局みたいなものに関しては瑞歌さんに聞いてみよう。
 空間に穴とか空けてくれるかもしれないし。
 ご都合主義だとわかっていても頼りたくなってしまうのだ。

「それと持ち運べるソーラーパネルとバッテリーのセット運んでおくわね。災害用の便利なやつで発電量多めのやつよ」
「いつの間にそんなの買ったんですか!?」
「ちょっとこの間ね~。30万円くらいだったかしら」
 なかなかの買い物をしたようだ。
 お値段から考えると、ボク一人では運べそうにないと思う。

「ありがとうございます。こっちにも戻ってきますけど、とりあえずしばらくはあっちに尽力しないといけませんし」
 学校の件とか諸々あるけど、今はそれよりも新世界だ。
 でも、ここまで行くと学校に通う必要ってあるのだろうか?
 ボクはふと疑問に感じてしまった。

 いっそ本拠地を向こうに移して、ここは別荘みたいな扱いにしたほうがいいのではないだろうか?
 う~ん、悩む。
 でも、戸籍とか繋がりだけは維持しておかないとね。
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