上 下
10 / 15

第10話 村にお狐様来たってよ!

しおりを挟む
 御狐に向かおうと領地を出たその時、私たちは謎の村を発見してしまいました。
 そしてそこの住人である門番さんに誘われ、謎の村に向かうことになったのです。
 
「まずはこの門を抜けるんだが、門の上に石が嵌ってるだろ?」

 門番のおじさんに言われるがままに門上部を見る。
 するとそこには透明な石がはめ込まれていました。
 あの水晶は見覚えがありますね……。

「どこでもあるありきたりな話だが、まぁいわゆる門を通る人間が安全かを判別する道具だな!」
「へぇ~……」
(ご主人様。お忘れかと思いますが、あれ、ご主人様とご主人様のお母様、そしてオモイカネ様のお三方で作られていた水晶ですよ?)
(あっ。だから見覚えがあるな~と思ったんですね)
 
 門番のおじさんが話している間にラティスが念話で話しかけてきてそんなことを教えてくれました。
 そういえば新世界なんだし、ちょっと色々とわかりやすくできるようにしたいとオモイカネさんに相談したんでしたっけ。
 オモイカネさんは高天原の神の一柱で、とても知識が豊富です。さらに技術にも詳しいので高天原の開発責任者をやっているくらいの方です。
 最近の高天原は地味に工業化が始まっているんですよね。
 ちなみに私にとっては優しいお爺ちゃんのような人です。
 飴くれますし。

「たとえば普通の人だと【青】に光るが、悪人が相手だと【赤】に光り、人に化けた悪鬼は【黒】に光る。そして妖は何も起こらない。これは神も同じだそうだ」
「妖にはって、東の山にいるんでしたね」
「おうよ。設置する時に見せてくれたぞ」

 どうやらこの辺りの物もその鬼族が設置していったらしいです。
 でもこの道具って私たちか高天原の神様くらいしかもってなかったはずです。
 ということはどこかで接点が? もしかすると気が向いたオモイカネさんが贈ってくれたのかもしれません。

「まずは俺が通るから見てみな」

 門番のおじさんはほかの門番さんに手を挙げて挨拶すると門を通りました。
 その瞬間、頭上の水晶が青く光りました。
 どうやら鬼人や獣人は人と同じ扱いのようです。
 それもそうか、私たちの認識がそうですもんね。

「じゃあお嬢ちゃんたちも通ってみな」
「あ、はい」

 門番のおじさんに言われるがまま私は通り抜ける。
 すると水晶は何の反応も示しませんでした。

「えっ?」

 それを見た門番のおじさんは驚きの表情で固まってしまいました。

「お、おい。あれ……」
「いやまさかな……」
「でもそれしかないだろう? 何の反応も示さない水晶に狐耳の狐人と思われる少女」
「こりゃ大変だ! 長に知らせてくらぁ!」
「こ、こいつぁ失礼しましたぁぁぁぁぁぁ!!」

 門番のおじさんから広まった波紋はいつのまにか村全体に波及してしまったようです。
 そのせいもあってか門番のおじさんは顔色を変えて私の前に土下座してしまいました。

「え、えっと?」
「まさか伝説が本当とは思いもしませなんだ。ご容赦を……」
「あ、えっと。だ、大丈夫、ですよ?」
「いやしかし、まさかお狐様だったとは……」

 どうやら門番のおじさんは私たちのことを知っていたようです。
 でもどうやってわかったのでしょう? あの水晶だけでだとしたらすごい推理力ですよね。
 
「おーい、村の巫女様連れて来たぞー!」
「すまねぇ、助かった!」

 まだ村の入り口ですが、どうやら偉い人まで出てきてしまったようです。
 しかも巫女とは……。
 でもなんでこの村に巫女がいるのでしょうか。

「へへぇ~。お出迎えもできず申し訳ございませんでした。わしがこの村の長の【伊助(いすけ)】と申します。見ての通り狐人族の男です。隣にいるのはわしの娘の」
「【香菜(かな)】と申します」
「あ、どうも……」

 目の前には一見すると30代くらいに見える狐の獣人族【狐人】の男性と12歳くらいの幼い見た目の狐人の少女がいました。
 2人とも私の前に跪いて頭を下げます。
 そんなに頭を下げなくてもいいのに……。

「近くお狐様がいらしゃるかもしれないことは天照大神様のお言葉を聞いて存じておりました」

 そう口にしたのは狐人の巫女さんでした。

「あ、やっぱり……」

 この世界でも天照大神ことあーちゃんたちは信仰されています。
 しかも私たちが関わっているせいかあーちゃんたちはこの世界に結構甘いです。
 まぁ東方世界限定ですが。
 そんなわけで時々神託のようなものを託してくれるようです。
 もちろん巫女限定ですが。
 
「お狐様の伝承、神々の伝承については古来より聞き及んでおります。特に日ノ本の件などは東の山の鬼族から何度も聞かされておりますゆえ」
「東の山の鬼族はお狐様にお会いしたいようです。用件が済んだ後で構いません。訪れていただけませんか?」
「はい。後程訪ねてみようかと思っていましたので」
「ありがとうございます!」
 
 妙なお願いをされてしまいましたが、元々訪れる予定もありました。
 しかし、あーちゃんは何をさせたいのでしょうか。
 最近、所々にあーちゃんの影があるんですよね……。

「ところで、お狐様は何故御狐の土地へ?」

 不意に村長さんが問いかけてきました。
 そう言えば説明していませんでしたね。

「いくつかありますが、1つは西方世界の人間に会いに行くためです」
「あの結界を抜けて来たという異邦人ですな」
「はい。条件によっては永住許可を与える予定です。ただ、西方世界には帰れなくなると思いますが……」
「我らが西方世界に長く滞在できない理由と同じということですな」
「はい」

 村長さんが口にした東方世界人は西方世界では長く滞在できないという話。
 これには理由があります。
 そもそも西方世界は現在仮想の大地であり本物ではありません。
 東方世界の人は力の均衡を取るために妖力や仙人の仙力を利用し強化されていますが、その代償に定期的に地脈の力を受ける必要があります。
 そんな理由もあり東方世界人は西方世界には長く留まれないのです。

「ですので恒常的な許可を受けなければいずれ居られなくなります。一時的な許可にも限度がありますので」
「そうでしたか。お狐様はそのために」
「それと彼らの技術を利用して日ノ本の文化を発展させようかと思いまして。聞くところによると技術者とのことですので」
「なるほど」
「それと私の巫女探しですね。相性のいい巫女を探したいのです」

 目指せ文明開化です! 江戸後期から一気に明治を目指しましょう!!
 これが私の目的の1つです。
 でも、出来ることならこの世界の人たちで達成してほしいですけどね。

「あの、お狐様!」
「どうしましたか?」

 突然狐人の巫女さんが私を呼びます。
 何かあったのでしょうか。

「お狐様の領地の巫女、私にできないでしょうか」
「本気、ですか?」
「はい!」

 突然の私の巫女への立候補。
 さて、どうしたものでしょうか。

「お言葉ながら、娘はまだ年若いですが鬼族から妖力を扱う方法を学んでおります。村にいるよりはお役に立てるのではないかと……」
「ほう。妖力をですか。なるほど。少し考えさせてください」
「はい!」
「お願いします」

 村長さんと巫女さんの熱意はわかりましたが、考える時間が必要です。
 それにいろいろと調べなければいけませんしね。

「ともあれ、みなさんもう立ち上がってください。私たちは公儀の者ではありませんので」

 見ると、村中の人が来ているのではないかと思うくらいたくさんの人たちが跪いているのが見えました。
 これはよろしくありませんね。
 早速立ち上がってもらうとしましょう。
 そしてできることならちょっと村を見てみたいのです。

「どうやら終わったようですね。ご主人様、さっそく見て回りましょうか」
「ラティス、貴女……」
「えへへ」

 ずいぶん静かだな~と思っていましたが、ラティスは横で事の成り行きをひたすら見守っていたようでした。
 この子は本当に……。

「ところでお付きの方ですが、その方も無反応だったのですが……」

 まだそこにいた門番のおじさんが恐る恐る声を掛けてきました。
 そういえば言ってませんでしたね。

「この子はラティス。私の従者でこの世界の神様を任せています」
「よろしくお願いしますね?」
 
 茶目っ気たっぷりにウィンクをして応じるラティス。
 当然村は再度大騒ぎになるのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

その聖女は身分を捨てた

メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

出来損ない勇者とアンドロイドは二人三脚でいきていく

塩ノ下ユカリ
ファンタジー
神の神託により、世界の中から5人のみ選ばれる勇者と言う存在。 その役目は、魔王に奪われたままの世界の半分を取り戻す事である。 魔王が世界のほとんどを手中に納めるきっかけを作ったエストレア国だったが、幾つもある国の中で唯一、必ず優れた勇者を誕生させることから世界を危機に晒したと言う罪から見逃されていた。 しかし、今代選ばれたのは弱虫で秀でた所のない臆病な少年のヘルト。 他国の勇者と比べられ、国中から出来損ないと馬鹿にされる日々を過ごしていた彼だったが、ひょんなことから化け物屋敷と呼ばれる洋館に足を運ぶ。そこにいたのは、溢れ返る凍り付いた魔物達と美しいアンドロイドの少女だった。 臆病者な勇者と世間知らずな機械の少女が手を取り合い時にぶつかり、良い人とも悪い人とも関わりながら弱い自分と向き合い成長していく話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...