≪最つよ≫もふかわお狐様は異世界で休暇中です。連絡は最寄りの巫女までお願いします〜美少女お狐様の異世界のんびり休暇ライフ日記〜

じゃくまる

文字の大きさ
上 下
2 / 15

第2話 建築と採集と自然霊

しおりを挟む
 転移初日の開拓状況は古びた社の調査と草むしりだけで終了。
 その日の夜は焚火をしつつ二人で持ってきたご飯を食べました。
 ちなみに私は調理ができるのですが食べたのは自宅で作っておいたお稲荷さんです。
 うまし。
 
 そして雑魚寝をして二日目の朝。

「トイレどうしましょうか。一旦地下深くに穴を掘るとか?」
「異世界の定番と言えばスライム処理ですけどスライムはこの辺りにいません。まぁ結界のせいなんですけど」
「あー……。そうでしたね」

 この世界のうち、東方世界である日ノ本は街中に魔物が沸くことはありません。
 また小さな村であっても襲われる心配がないのです。
 ただし街道を外れたり森の中に入ると別ですが。

 理由は簡単で、各村や街には中心部と寺社仏閣に必ず守護水晶が設置してあるからです。
 村や街には所謂お稲荷さんと呼ばれる小さい社が設置してありますが、あの中にも守護水晶があります。
 それぞれの村や街にある寺社仏閣にある守護水晶はそれぞれ連動していて、朝昼晩の祈祷でその効力を保っています。

「作りましょうか? スライム」
「いえ、恥ずかしいので別の方法を考えます。今は深めの穴を掘って対応しておきましょう」

 よくある手法を取るには私では覚悟不足なようでした。
 トイレは2つ用意しておきましょう。
 個別にあったほうがいいですからね。

「し尿処理場は別に用意しなければいけませんね。いつまでもこのままというわけにはいきませんし」
 
 でも実際に作るとなると相当大掛かりな施設になりますし、自作というわけにもいきません。
 どうしたものかと考えているとラティスが空気を読まない提案をしてきました。

「でしたら上空にある中継艦に転送して処理してもらえばいいと思いますよ? 人類のし尿はそれぞれの処理方法に任せるとして、影響がありそうな私達の分は適切な設備に送るべきです」
「ぐぬぬ……」

 スライム処理ができない理由の1つに恥ずかしいというのもあります。
 ですがそれ以上に懸念しなければいけないのは、妖種のし尿は微量ですが妖力を含んでいるという事実です。
 つまり、スライムで処理させると妖かしになったスライムが生まれかねないというわけです。

「妥協、しますか……」
「そうしてください。アレモコレモというのは流石に無理がありますので、せっかく使える権利があるのですから使ってしまいましょう」

 こうしてトイレ問題は速やかに解決されたのでした。
 ちなみに、この惑星の衛星付近に中継管理艦という巨大な宇宙船が停泊しています。
 この艦はこの惑星を含む恒星系全体を監視していて、私がこの世界を作った際にお父様によって配置されたものでした。
 大きな問題が起きた際には支援を受けられる他、私が生産した物品を購入してくれたりもします。
 ターミナルステーションでも同じことができますが、あちらの話はまた次の機会に。

「ところでお父様は?」
「グランドマスターでしたら現在は別の宇宙で実験をしている最中です」
「となると、また会えるのは5年は先でしょうか」
「いくら寿命らしい寿命がないとはいえ長すぎますよね」
「あはは……」

 とりあえずトイレ事情はご都合主義的解決ができたので社の修理を始めたいところ。
 多少のことはわかりますけど専門的なことはわからないのも悩み。
 まずは持ってきた端末で簡単な拠点の作り方を観てから見様見真似で作ってみましょう。

「穴を掘るか細い木を見つける。どちらがいいですか?」
「私たちの体躯ではどちらも現実的ではないように思います」
「残念です」

 私が観ていた動画は某クラフトゲームさながらの建築動画でした。
 最初に見たのは穴を掘るタイプ。
 穴を掘って石を敷き詰め、水と土と繊維で作った泥で隙間を埋めたりする感じのやつです。
 その次に観た動画は細めの丸太を林から回収して家を建てるというもの。
 どちらも半地下の、いわゆる竪穴式住居に近いものでした。

「天気は悪くならなさそうですし、今夜も社ですかね。とりあえず素材集めのお手伝いを作ってしまいましょう」
「お手伝いします!」

 二人での拠点作製は断念して一緒にお手伝いしてくれる従者を作ることにしました。
 私が源となる妖力を生み出し、ラティスが受け取るための自然霊を周囲から探して用意します。
 この2種を組み合わせて私から力を与えて形を成型すると人型従者の出来上がりです。

「ご主人様~! 作っていただきありがとうございます~」
「なかなか可愛らしい子が出来ました」
「よろしくお願いしますね~」

 生まれた人型自然霊の従者は10歳くらいの女の子でした。
 間延びした話し方と黄緑色の髪が特徴的なショートボブの女の子です。
 体躯が似通ってるけど大丈夫でしょうか。

「よろしくお願いします。ところで近くにある木を切ったり運んだりってできたりします?」
「はい、問題なくできます~!」
「おぉ、ようこそ! ウェルカムです!」

 ようやく私たちの待ち望んだ子が生まれたようです。
 ところで同じような体躯ですが、どうやって運んでくるのでしょうか。

「ではさっそくですが木を伐採して生木を持ってきてください」
「は~い!」

 生まれたばかりの自然霊の子はそう返事をするとふわふわと浮いて近くの林へと飛んで行ってしまった。
 様子を見るために後を追いかけてみると、一本の木の前で止まっている姿を見つける。
 どうするんでしょう? そう思っていると何やら小さな両手を突き出し、空気の渦のようなものを生み出していました。
 そして。

 フォンという音と共に空気の渦が木に当たり通り抜けていきます。
 その後少しずつ木は傾き、やがてドスンという音と共に倒れてしまいました。
 どうやら自然霊の力のようです。
 周囲に妙な力の汚染もなし。
 これなら色々とお願いできそうです。

「ご主人様~! 切り倒し終えました~」
「お疲れ様です。後は運んで乾燥させたいところですね」
「乾燥くらいでしたら私たちでもできそうですよ?」
「自然霊の子、お願いできたりします?」
「おまかせくださ~い!」

 どこまでできるか気になったのでラティスの提案をあえて無視して自然霊の子に話を振ってみました。
 どうやらそちらも対応できる様子。
 となると、今後お願いできることは確実に増えそうですね。
 現状私たちが直接力を使うと無視できない影響が周囲にでるので、お願いできるならそれに越したことはありません。
 今後は自然霊の子にお願いするか、私たちの力と相性のいい巫女を探すしかありませんね。

「運搬運搬~。乾燥乾燥~」
 
 自然霊の子が切り倒して枝払いした丸太を空中に浮かせて運んでいく。
 その途中、頭上で丸太がくるくると回っていた。
 言葉通りだとすると乾燥しているのだろう。
 私の力が若干減っているのでまず間違いないはず。
 
「ご主人様、あの子器用ですね」
「生まれたばかりとは思えない器用さですよね。あ、あとで建築出来そうな子も生み出せるか試してみましょうか」
「それは良い提案ですね。さっそく試してみましょう」
「ふんふ~ん。良い感じに丸太が乾燥してます~。ご主人様~。どこに置けばいいですか~?」
「じゃあ社前にお願いします」
「は~い」

 嬉しそうに返事をし楽しそうにゆっくり丸太を下ろす。
 軽くコンという音が響いたので乾燥できていそうではある。
 う~ん、器用な子ですね。

「よいしょっと~。ところでこの丸太をどうすればいいのでしょうか~?」
「建築出来そうな子を作ってみようと思うのでその時になったらサイズに合わせて切ってください」
「は~い! あっ、建築出来そうな子は知ってます~! ずっと昔から人間さんの建築を見ていた子がいるんです~」
「おぉ? これは思わぬ新情報!?」
「いいですね。その子をリクルートしましょうか」
「じゃあ連れてきます~」

 そう言うと自然霊の子はどこかへと飛んで行ってしまった。
 ラティスが選ぶ必要はなくなったのでラティスには連れて来てもらった子の調整をお願いしておきましょうか。

「ラティスは受け取る力の調整お願いしますね」
「お任せください、ご主人様」

 こうして私たちは早くも次なる予定を立てるのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編完結済】『Sugar Magic』 ~ 王道洋風ギャグファンタジー ~

白楠 月玻
ファンタジー
魔道戦士ローデンドに来た依頼は、新作武器の性能実験。 しかし、天才武器職人を自称するサックの用意した武器は武器と呼べるのかすら危ういものばかり。 剣と魔法、魔獣の王道ファンタジーに 多量のおかしな武器を詰め込んだコメディーです。 文字数:約12000字 ※ 一話読切(完結済)なので、お気軽にどうぞ!

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...