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第34話 にゃーにゃー七海チャンネルその2

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 しばらく休憩した後、映像が再び映し出された。
「次はセレスティナ学園に着陸するところからだよ~」
 映像の中の七海ちゃんがそう言うように、徐々に近づいてくる巨大な建築物が映し出されていた。ボクたちの通う学園よりも大きいのは間違いなく、その建物と周囲の面積を合わせるだけでも有名な巨大テーマパークに匹敵するかもしれない。あれが七海ちゃんの言う学園全体なのだろうか?
「今映像に出ている建物は、セレスティナ学園の本館と周囲の施設ですね~。ここが一番のマンモス校で、分館やそれぞれの関連施設、住宅街や商店街など、もろもろを含めるとちょっとした市や区にも匹敵するかもしれないです。なぜこんなに大きいかというと、実験場や演習場なども含んでいるからなんですよ~」
 今映し出されている巨大な建築物はヨーロッパの街並みを彷彿させるような石造りの建物だった。周囲の道には石畳が敷かれ、非常に綺麗に整備されている。道にはたくさんの人が歩いていて賑わっていることが上空からでもよく分かった。
「本館には女子学生のみが在籍していて、男子学生はここから二つ先の駅にあるセレスティナ学園男子学生館に通っているんだよ~。どの学園にも共通してるのは、男女が完全に別れているっていうこと。共通して使える施設もあるから、そこで出会ったりとかしてるみたいだけどね~。でも風紀には厳しいから注意してほしいかな」
 七海ちゃんは何でもないようにそう学園の事情を説明している。ボクたちが通っている学園は大学に行くと男女が別れる形になるけど、それまでは共学となっている。さらに言うなら特殊総合の子たちはさらに別館にて勉強することになるんだけど。
「さて、これから駐車場に着陸したあと、学園警備部に撮影許可を申請しなきゃいけないので少し硬いやり取りが始まるよ~。注意しててね」
 徐々に降下し近づいてくる駐車場。少し後、軽く映像が揺れるとカメラはエアロバイクから降りる皆の姿を映し出していた。そこから徒歩でしばらく歩くと白い大きな建物へと入っていく。

「セレスティナ学園本館へようこそ、学生の方は学生証の提出を。それ以外の方は見学許可の取得をお願いします。撮影の許可申請については学生の方のみ出来ることになっています」
 白い軍服のような服を着た天使の姿をした女性が七海ちゃんたちに応対した。
「はい、学生証です。それと例外許可証。撮影許可申請も同時にお願いしますね」
 七海ちゃんは必要な物を提示し、どんどん手続きを進めていく。
「学生証の確認と例外許可証の確認が完了しました。同時に撮影についても生徒会執行部の名で許可が出ています。更衣室やトイレなどのプライベートスペース以外では自由に撮影ができます」
 そう言うと警備部の女性は七海ちゃんたちに敬礼をした。
「それにしても新設されたばかりですが、生徒会特殊捜査部の方々なら別の入り口からでも自由に出入りできたのでは?」
 先ほどまで敬礼していた警備部の女性はそんな疑問を口にした。
「今回は紹介動画なので通常手順を見せたかったんですよ。ご対応ありがとうございます」
 七海ちゃんはそう話すと、警備部の建物を後にした。
「あの警備部の子たちも学生なんですよ。交代で授業を受けているので時間によっている子たちが違うんです」
 警備部の建物を出て少し歩くと、大きな石造りの入り口が見えてきた。その正面にはガラス張りのドアがある。どうやら自動ドアのようで、人が通るたびに忙しなく開いたり閉じたりを繰り返していた。
「アリサ~、なにしてんの~?」
 七海ちゃんたちが歩いていると、よくそんな風に声をかけられる。アリサちゃんは人気があるのだろうか?
「ちょっと紹介動画撮ってるの、またあとでね~」
「は~い」
「お、アリサじゃん!」
「やっほ、でも今撮影中だからまたあとでね?」
「へ~、動画撮影か~。いぇ~い、見てる~?」
「あっ、こら」
 アリサちゃんに事情を教えてもらったせいか、いたずらをするように突如うさ耳の美少女がカメラの前に現れた。
『うわっ、めっちゃかわいい』
『うさ耳最高!!』
『こんなレベルの美少女見たことないんだが?』
『それにしてもこのクソガキムーブ……最高!!』
 などなどチャット欄は非常に盛り上がっている。
 画面に映ったうさ耳の美少女は、白っぽい色の髪のロングヘアの子で、赤色の瞳が特徴的だ。肌は白めで唇は薄桃色、眼は大きめで非常に愛らしい笑顔を浮かべながらピースサインをしていた。そんな風にマジマジと観察できてしまうくらい、彼女は画面に近かったのだ。
『スクショしたわ』
『俺も俺も』
『私も~』
『ワイもワイも』
『拙者も保存したでござる』
『拙僧も』
『今、侍とか僧侶いなかったか?』
『気のせいだろ?』
 チャット欄の紳士淑女たちは新しい獲物を見つけたようで、大賑わいだ。これは後日、うさ耳美少女特集が組まれることだろう。
「ねぇねぇ、この動画ってどんな人たちが観るの~?」
 うさ耳少女が七海ちゃんたちに問いかけてくる。
「えっと、色々な人かな? 若い人からそれなりに年を取ってる人とか。あとは人間だけじゃなくて妖種の人も見るよ」
「へぇ~! 妖種っていえば、今クロちゃんにくっついているモモちゃんとミドリちゃんだよね。なんだっけ……ねこまた?」
「そう」
「うん」
 七海ちゃんの言葉で視聴者に興味を持ったのか、うさ耳少女がモモちゃんとミドリちゃんに言及した。どうやら彼女たちは黒奈と同じ妖種だったらしい。どうりでよく懐いているわけだ。
「ほうほう。ということは、クロちゃんも? あたし、てっきり猫の獣人だと思ってたよ」
「そういう稲葉だって妖種でしょ? 兎の」
「そうだけど、クロって不思議な感じなんだよね」
 どうやらこのうさ耳少女の名前は『稲葉』というらしい。アリサちゃんがそう呼んでいたので間違いないだろう。
「で、稲葉、何か用事あるんじゃなかったの?」
 アリサちゃんにそういわれて、ハッとしたように稲葉ちゃんが顔を上げた。
「忘れてたああああ!! 宗親先生にお使い頼まれてたんだ!!」
 そう言うと稲葉ちゃんは猛スピードで皆から離れて走って行ってしまった。
 それにしても『宗親』か。同じような名前の人もいるのかな? ボクはそれが少しだけ気になった。

「校内はこんな風に白い石材で作られていますよ。素材はなんだったか忘れちゃいましたけど、すごくきれいで、そしてすっごく固いやつです! ほんと、なんて名前だっけ?」
「大理石を星光の泉に漬けて変化させた奴らしいけどよくわからないんだよね。ただすっごく高い上にすっごく硬いってのだけは覚えてる感じかな」
 七海ちゃんの疑問に答える形でアリサちゃんが答える。
「星光の泉は天使族がずっと守ってるんですけど、時間が経つにつれて徐々にその量は減っているんですよ。補給の手段がないとか」
「へぇ~」
 天使族のアルマちゃんがそう説明してくれた。それを聞いた皆はぽかんとした顔で同じように返事をしている。
「いつかは見てみたいけど、難しいかもね~。さて、気を取り直してどんどん説明していきましょう!」
 それから七海ちゃんの説明は続く。校舎内は非常に広く教室数も多いため、人によっては迷ってしまうかもしれない。そのためか、区域と番地が割り振られている。
「どこも冷暖房完備なのでとても過ごしやすいんです。校舎内には浴場もあるので安心して泊まり込みもできますよ!」
 なるほど、下手なホテルなんかよりよっぽど過ごしやすそうだ。ボクは動画を見ながらどう思ってしまった。近未来感のある世界だけど、施設の類はそう変わらないらしく、ボクたちでも安心して使うことができるようだ。もしここに行くなら一回くらいは泊まってみたいものだ。

「さて、ざっと校舎内の説明をしましたが、今、目の前に見える扉が、私たちの所属する『生徒会特殊捜査部』の執務室になります。やっていることといえば、依頼された内容を確認して調査をしたり、素行不良の生徒がいたら改善に努めたり、事件が起きたら解決をしたり、異世界の調査に行ったりとかですね。特に異世界には問題が多くて、生徒が犯罪に巻き込まれる可能性もあるんです。それを交渉や武力で解決します」
「そういう使命もあるから、セレスティナ学園は他の学園より優秀な生徒が多いの。モモやミドリもこう見えて結構強いよ」
 七海ちゃんの説明のあとに、エマちゃんがそう話してくれた。小さくて可愛いと思っていた双子が実は強いとか……。異世界って怖い!!
 紹介された双子の少女はカメラの方をちらりと見ると、そのまま視線を戻してしまった。相変わらずクロにぴったりくっついている。
「さてさて、それでは扉を開けて中を見てみましょう! 特に機密とかはないので安心してくださいね~」
 七海ちゃんはそう言うと扉をゆっくりと開けた。
「おや、いらっしゃい」
 ボクにとってはく見慣れた人物がそこにいた。
「こんにちは、宗親先生」
「宗親様、いらっしゃったんですね」
「宗親兄」
「今日もいるなんて珍しいですね。お仕事ですか?」
「先生だ」
「先生」
「ごきげんよう、宗親様」
 全員がそこにいた人物にそう挨拶する。特に黒奈は双子を引きずりながらその人物に抱き着いていた。
「クロちゃんったらだいた~ん」
 冷やかすような声が聞こえるが、クロはお構いなしに頭をぐりぐりと押し付けている。
「よしよし。クロと七海ちゃんがいるってことは、前に言っていた動画撮影だね? なら私の妹も観るだろうね」
 頭を撫でられている黒奈が抱き着いている人物、それは間違いなく宗親兄様だった。
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