32 / 74
第30話 葵姉様の婚約事情とお父様の話
しおりを挟む
葵姉様が用意したオーバーオールを着用したボクは、葵姉様のメッセージ通りに部屋の前へとやってきた。同時に軽くコンコンとノックをして呼びかける。
「葵姉様、来ましたよ~」
ボクがそう言うとすぐに扉が開き、葵姉様が満面の笑顔で出迎えてくれる。相変わらずお母様にそっくりだ。
「いらっしゃい、待ってたわ。雫ちゃんにも来てもらってるから入っちゃって」
葵姉様に誘われるがまま部屋に入っていく。葵姉様の部屋はきちんと整理されているけど、物が多いので少し手狭に見えてしまう。仕事の関係上、ボクたち一家の中では一番広い部屋をもらっているし、妖精郷の方にもいくつか部屋を持っている。それでもここまで物が多いのだから困ったものだと思う。しかも本人曰く、趣味用6割仕事用4割なのだとか。一回衣装専用の部屋を見せてもらったことがあるけど、どこかのアパレルショップの倉庫かと思うほど服が並んでいた。古いものから新しいものまで色々なものがあったので、あまり捨ててはいなさそうだ。この前なんか妖精郷の葵姉様の部屋から一台百万円の値段が付いていたアンティークなおもちゃが出てきた。さすがに驚いたし、状態も未使用かつパッケージに入ったままだったのでほしい人からしたら相当なお宝になっていることだろう。
「それにしても雫ちゃんも来ていたんですね? 普段来るときは必ずボクに挨拶に来るから、家に来ているとは思いませんでした」
「こっちには来ていなかったわよ? 本邸の部屋にいたから絵のモデルとして連れてきただけだから」
「それは来てもらっているとはいいませんよね!?」
何でもないようにそう言った葵姉様にボクは思わずツッコミを入れてしまった。
葵姉様はボクや弥生姉様と違ってお母様の最初の女子ということもあって、お母様の生き方を見て育ってしまったと宗親兄様が言っていた。後に生まれたボクたちとはかなり歳が離れているので価値観もだいぶ違うという問題もある。長男である宗親兄様と長女である葵姉様はお父様がまだ健在だったころの生まれなので、年齢で言えば千歳は軽く超えている。それに対してボクたちはといえば、お父様の残した精からの生まれなので、実際にお父様に会ったことはない。そんな事情もあるせいか葵姉様はやたらとボクたちに甘いのだ。
「あら、でも暮葉ちゃんと一緒に居てもいいからって言ったら、『はい! 喜んで!!』って元気に尻尾を振りながら言っていたわよ?」
「雫ちゃああああん……」
葵姉様のその言葉を聞いたボクは思わず頭を抱えてしまった。雫ちゃんはボクのことになるとコロッと騙されてしまうほど単純になるのだ。狗賓は犬っぽいというか狼っぽいと思っていたけど、たぶん雫ちゃんの場合は柴犬か何かなんじゃないかなと考えてしまう。
「うふふ、あらあら。仲の良いこと。さて、それじゃあ中に入って頂戴」
頭を抱えているボクを楽しそうに見ながら、葵姉様はボクを部屋に招き入れた。中に入ると、ローテーブルの前に座りやたらとニコニコしている雫ちゃんが待ち構えていた。
「お待ちしておりました! 葵様に攫われた時はどうしようかと思いましたけど、暮葉様にお会いできたので何も問題なしです!」
雫ちゃんが嬉しそうで何よりです。ボクは不満だけど仕方ないよね? しかし雫ちゃんの現金さにも困ったものだとボクは思った。
「まぁ、その無防備さが雫ちゃんの良いところなのかもしれないけど。それはそうと、さっき葵姉様の婚約者という人が来ていましたけど、お会いしましたか?」
未だニコニコしている雫ちゃんのことはさておき、ボクは葵姉様に向かってさっき起きたことについて尋ねた。そもそも弥生姉様は知っているようだったけどボクは全く知らなかったのだから、話くらいは聞いておきたいのだ。
「婚約者? 誰かいたかしら?」
ボクの言葉を聞いた葵姉様は顎に人差し指を当てて小首を傾げる。この動作をするということは、葵姉様の頭の中にはその記憶が全くないか、もしくはほとんど残っていないということである。なのでさらに具体的に聞くことにした。
「井坂源一郎という人なんですけど、ご存じですか?」
「あぁ、源君ね。でも昨年解消したと思ったのだけど、まだ挑戦しているのかしら」
井坂源一郎という名前を具体的に出すと、葵姉様は掌をポンと叩きそう答えた。しかしその口から出た言葉は『昨年解消した』というもの。これはいったいどういうことだろうか。
「解消……ですか? 良い人そうな上に有能そうな男性でしたけど、また何で?」
ああいう人ならお母様も了承するとばかり思っていたので、お母様の言葉ならよく聞く葵姉様が自ら解消するとは思えなかった。まさかお母様からのNoということ?
「お母様達は当然私にどうしたいか聞いてきたのだけど、源君って見た目は良いし有能なのだけど、面白みに欠けるのよね。彼自身はVtuberとしても活動しているけど、基本的に紳士だから視聴者の層もそういう人を求めてる子ばかりなのよ。そうしてそういう風に振る舞う源君を見て、『うん、なかったことにしよう』って思ってしまったの」
葵姉様は婚約解消の経緯をそう淡々と語った。そしてそこで語られた振る舞いというのが大きなポイントだった。なぜなら――。
「見た目が良くて有能でさらに紳士、そこに面白みが加わった人って誰かわかるかしら?」
葵姉様はボクに向かってそう語りかけてきた。これならわかる。その答えは――。
「宗親兄様」
「えぇそう。兄妹と比べるのはどうかと思うのだけど、同じように振る舞うならどうしても宗親兄様に軍配が上がるわね。まぁ宗親兄様はお父様に影響されているから、なおさらなのかもしれないけど」
葵姉様は微笑みながらそう語った。だからこそボクは聞いてみた。
「お父様ってどんな人だったの?」
それは何気ない質問だった。そして最初に返ってきた言葉は思いもよらないものだった。
「お父様は元人間よ。この世界より上の、高位次元からやってきた科学者だったそうよ。でも科学者って言う割にはひょうきんで面白くて、何にでもチャレンジして楽しむ人だったわ」
『お父様は元人間』これは予想もしなかった言葉だった。その上、この世界とは別の世界から来たというのだ。なんとファンタジーな答えなのだろうか。ボクたち妖種も大概だと思っていたけど、まさかその上を行く言葉が聞けるとは思いもしなかった。
「そう、なんですね。それでお父様はなんでこの世界に?」
ボクの知らないお父様のこと、これから先も出会えるかわからないお父様のことを、ボクは尋ねた。
「すでに作られた世界を調べて、独自の世界を作ることを目的にしていたらしいわ。まぁその試みは成功して、新たな世界を作り出すことには成功したみたいね。でも向こうで色々やっていてちょっとしたトラブルが起きたらしいわ。その結果が今の眠りに就いた状態のお父様ってわけ」
葵姉様はそう簡単にまとめて話してくれた。でもまだ聞きたいことはたくさんある。
「トラブルですか? 眠りに就くほどってどういう……」
「簡単に言うと、身体が得た新しい力に魂が耐えられず衰弱してしまったの。それで今、お父様は魂の再構築中ってわけ。でもそれには、お父様が残した技術を使って生まれた暮葉ちゃんの力が必要なの。まぁその話はまた今度ね? 今回作るバーチャル街も限定的にだけど、新しい世界を妖精郷に作り出して作っているのよ。それもお父様の技術ね。天照様たちでは新しい世界は作れないから。イザナギ様なら作れるみたいだけどね」
ボク自身もよく知らなかったバーチャル街計画の一端をここで知ることになるとは思わなかった。まさかそういう仕組みだったなんて……。
「天照様は言っていたわ。きっと高天原もこうやって生まれたんだって。そしてこれは新しい次元へ、私たちを導いてくれるものだってね」
「あーちゃんがそんなことを……」
ボクのよく知るあーちゃんはいつも明るく、そしてはた迷惑だったけど、そんな思慮深いことも考えることが出来るって今日初めて知ることが出来た。とっても失礼な言い方なのはわかってるけど、いつもやってることがやってることなので仕方ないと思う。
「バーチャル街はいつ入れるようになりそうなんですか?」
「もうすぐよ。すでに住民の第一弾募集は終わっていて、開かれると同時に住民が誕生するわ。もちろん私もデザイナーとして向こうにキャラクターを作ってあるから、服とかに困ることはないと思うわよ。というわけで、それも兼ねて二人には着てもらった服のままモデルをしてもらうからね。雫ちゃんにはいくつかやってもらってるけど、一通り終わったら新しい服に着替えてもらうつもりだから、よろしくね」
葵姉様はウィンクを一つすると、さっそくスケッチブックを手に取る。そんな葵姉様を見つつ、ボクはちらりと雫ちゃんの方を見る。
「あ、暮葉様。モデルって、体勢とか色々きついんですけど、私は葵様に色々とやらされて慣れているんです。もしよかったらアドバイスするのでいくらでも聞いてくださいね!」
「あはは、ありがとう。でもそんなにやっていたなんて知らなかったよ」
騙されて連れてこられた割には、葵姉様のお願いにはしっかり答えているようだった。
「そうですね~。(まぁ今までは暮葉様のブロマイドを頂けていましたからねぇ。今回は何もない上に暮葉様に会えるからって……)」
雫ちゃんはそう答えると、何やらぶつぶつ小声で言い始めた。ちょっと聞き取れなかったので何を言っていたのかはわからなかったけど、雫ちゃんが強制されていないなら問題はないだろう。
「さ、二人ともおいで。さっそくだけど、雫ちゃんと暮葉ちゃんは向かい合って抱きしめ合ってね。仲良しシーンも描きたいからお願いね」
「はい!!」
「えっ? あ、は~い」
何やら不穏な気配を雫ちゃんから感じつつ、ボクは葵姉様にそう返事をするのだった。
「葵姉様、来ましたよ~」
ボクがそう言うとすぐに扉が開き、葵姉様が満面の笑顔で出迎えてくれる。相変わらずお母様にそっくりだ。
「いらっしゃい、待ってたわ。雫ちゃんにも来てもらってるから入っちゃって」
葵姉様に誘われるがまま部屋に入っていく。葵姉様の部屋はきちんと整理されているけど、物が多いので少し手狭に見えてしまう。仕事の関係上、ボクたち一家の中では一番広い部屋をもらっているし、妖精郷の方にもいくつか部屋を持っている。それでもここまで物が多いのだから困ったものだと思う。しかも本人曰く、趣味用6割仕事用4割なのだとか。一回衣装専用の部屋を見せてもらったことがあるけど、どこかのアパレルショップの倉庫かと思うほど服が並んでいた。古いものから新しいものまで色々なものがあったので、あまり捨ててはいなさそうだ。この前なんか妖精郷の葵姉様の部屋から一台百万円の値段が付いていたアンティークなおもちゃが出てきた。さすがに驚いたし、状態も未使用かつパッケージに入ったままだったのでほしい人からしたら相当なお宝になっていることだろう。
「それにしても雫ちゃんも来ていたんですね? 普段来るときは必ずボクに挨拶に来るから、家に来ているとは思いませんでした」
「こっちには来ていなかったわよ? 本邸の部屋にいたから絵のモデルとして連れてきただけだから」
「それは来てもらっているとはいいませんよね!?」
何でもないようにそう言った葵姉様にボクは思わずツッコミを入れてしまった。
葵姉様はボクや弥生姉様と違ってお母様の最初の女子ということもあって、お母様の生き方を見て育ってしまったと宗親兄様が言っていた。後に生まれたボクたちとはかなり歳が離れているので価値観もだいぶ違うという問題もある。長男である宗親兄様と長女である葵姉様はお父様がまだ健在だったころの生まれなので、年齢で言えば千歳は軽く超えている。それに対してボクたちはといえば、お父様の残した精からの生まれなので、実際にお父様に会ったことはない。そんな事情もあるせいか葵姉様はやたらとボクたちに甘いのだ。
「あら、でも暮葉ちゃんと一緒に居てもいいからって言ったら、『はい! 喜んで!!』って元気に尻尾を振りながら言っていたわよ?」
「雫ちゃああああん……」
葵姉様のその言葉を聞いたボクは思わず頭を抱えてしまった。雫ちゃんはボクのことになるとコロッと騙されてしまうほど単純になるのだ。狗賓は犬っぽいというか狼っぽいと思っていたけど、たぶん雫ちゃんの場合は柴犬か何かなんじゃないかなと考えてしまう。
「うふふ、あらあら。仲の良いこと。さて、それじゃあ中に入って頂戴」
頭を抱えているボクを楽しそうに見ながら、葵姉様はボクを部屋に招き入れた。中に入ると、ローテーブルの前に座りやたらとニコニコしている雫ちゃんが待ち構えていた。
「お待ちしておりました! 葵様に攫われた時はどうしようかと思いましたけど、暮葉様にお会いできたので何も問題なしです!」
雫ちゃんが嬉しそうで何よりです。ボクは不満だけど仕方ないよね? しかし雫ちゃんの現金さにも困ったものだとボクは思った。
「まぁ、その無防備さが雫ちゃんの良いところなのかもしれないけど。それはそうと、さっき葵姉様の婚約者という人が来ていましたけど、お会いしましたか?」
未だニコニコしている雫ちゃんのことはさておき、ボクは葵姉様に向かってさっき起きたことについて尋ねた。そもそも弥生姉様は知っているようだったけどボクは全く知らなかったのだから、話くらいは聞いておきたいのだ。
「婚約者? 誰かいたかしら?」
ボクの言葉を聞いた葵姉様は顎に人差し指を当てて小首を傾げる。この動作をするということは、葵姉様の頭の中にはその記憶が全くないか、もしくはほとんど残っていないということである。なのでさらに具体的に聞くことにした。
「井坂源一郎という人なんですけど、ご存じですか?」
「あぁ、源君ね。でも昨年解消したと思ったのだけど、まだ挑戦しているのかしら」
井坂源一郎という名前を具体的に出すと、葵姉様は掌をポンと叩きそう答えた。しかしその口から出た言葉は『昨年解消した』というもの。これはいったいどういうことだろうか。
「解消……ですか? 良い人そうな上に有能そうな男性でしたけど、また何で?」
ああいう人ならお母様も了承するとばかり思っていたので、お母様の言葉ならよく聞く葵姉様が自ら解消するとは思えなかった。まさかお母様からのNoということ?
「お母様達は当然私にどうしたいか聞いてきたのだけど、源君って見た目は良いし有能なのだけど、面白みに欠けるのよね。彼自身はVtuberとしても活動しているけど、基本的に紳士だから視聴者の層もそういう人を求めてる子ばかりなのよ。そうしてそういう風に振る舞う源君を見て、『うん、なかったことにしよう』って思ってしまったの」
葵姉様は婚約解消の経緯をそう淡々と語った。そしてそこで語られた振る舞いというのが大きなポイントだった。なぜなら――。
「見た目が良くて有能でさらに紳士、そこに面白みが加わった人って誰かわかるかしら?」
葵姉様はボクに向かってそう語りかけてきた。これならわかる。その答えは――。
「宗親兄様」
「えぇそう。兄妹と比べるのはどうかと思うのだけど、同じように振る舞うならどうしても宗親兄様に軍配が上がるわね。まぁ宗親兄様はお父様に影響されているから、なおさらなのかもしれないけど」
葵姉様は微笑みながらそう語った。だからこそボクは聞いてみた。
「お父様ってどんな人だったの?」
それは何気ない質問だった。そして最初に返ってきた言葉は思いもよらないものだった。
「お父様は元人間よ。この世界より上の、高位次元からやってきた科学者だったそうよ。でも科学者って言う割にはひょうきんで面白くて、何にでもチャレンジして楽しむ人だったわ」
『お父様は元人間』これは予想もしなかった言葉だった。その上、この世界とは別の世界から来たというのだ。なんとファンタジーな答えなのだろうか。ボクたち妖種も大概だと思っていたけど、まさかその上を行く言葉が聞けるとは思いもしなかった。
「そう、なんですね。それでお父様はなんでこの世界に?」
ボクの知らないお父様のこと、これから先も出会えるかわからないお父様のことを、ボクは尋ねた。
「すでに作られた世界を調べて、独自の世界を作ることを目的にしていたらしいわ。まぁその試みは成功して、新たな世界を作り出すことには成功したみたいね。でも向こうで色々やっていてちょっとしたトラブルが起きたらしいわ。その結果が今の眠りに就いた状態のお父様ってわけ」
葵姉様はそう簡単にまとめて話してくれた。でもまだ聞きたいことはたくさんある。
「トラブルですか? 眠りに就くほどってどういう……」
「簡単に言うと、身体が得た新しい力に魂が耐えられず衰弱してしまったの。それで今、お父様は魂の再構築中ってわけ。でもそれには、お父様が残した技術を使って生まれた暮葉ちゃんの力が必要なの。まぁその話はまた今度ね? 今回作るバーチャル街も限定的にだけど、新しい世界を妖精郷に作り出して作っているのよ。それもお父様の技術ね。天照様たちでは新しい世界は作れないから。イザナギ様なら作れるみたいだけどね」
ボク自身もよく知らなかったバーチャル街計画の一端をここで知ることになるとは思わなかった。まさかそういう仕組みだったなんて……。
「天照様は言っていたわ。きっと高天原もこうやって生まれたんだって。そしてこれは新しい次元へ、私たちを導いてくれるものだってね」
「あーちゃんがそんなことを……」
ボクのよく知るあーちゃんはいつも明るく、そしてはた迷惑だったけど、そんな思慮深いことも考えることが出来るって今日初めて知ることが出来た。とっても失礼な言い方なのはわかってるけど、いつもやってることがやってることなので仕方ないと思う。
「バーチャル街はいつ入れるようになりそうなんですか?」
「もうすぐよ。すでに住民の第一弾募集は終わっていて、開かれると同時に住民が誕生するわ。もちろん私もデザイナーとして向こうにキャラクターを作ってあるから、服とかに困ることはないと思うわよ。というわけで、それも兼ねて二人には着てもらった服のままモデルをしてもらうからね。雫ちゃんにはいくつかやってもらってるけど、一通り終わったら新しい服に着替えてもらうつもりだから、よろしくね」
葵姉様はウィンクを一つすると、さっそくスケッチブックを手に取る。そんな葵姉様を見つつ、ボクはちらりと雫ちゃんの方を見る。
「あ、暮葉様。モデルって、体勢とか色々きついんですけど、私は葵様に色々とやらされて慣れているんです。もしよかったらアドバイスするのでいくらでも聞いてくださいね!」
「あはは、ありがとう。でもそんなにやっていたなんて知らなかったよ」
騙されて連れてこられた割には、葵姉様のお願いにはしっかり答えているようだった。
「そうですね~。(まぁ今までは暮葉様のブロマイドを頂けていましたからねぇ。今回は何もない上に暮葉様に会えるからって……)」
雫ちゃんはそう答えると、何やらぶつぶつ小声で言い始めた。ちょっと聞き取れなかったので何を言っていたのかはわからなかったけど、雫ちゃんが強制されていないなら問題はないだろう。
「さ、二人ともおいで。さっそくだけど、雫ちゃんと暮葉ちゃんは向かい合って抱きしめ合ってね。仲良しシーンも描きたいからお願いね」
「はい!!」
「えっ? あ、は~い」
何やら不穏な気配を雫ちゃんから感じつつ、ボクは葵姉様にそう返事をするのだった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる