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第18話 温泉へ行こう 準備編
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今日は温泉に行く日。
今日と明日の二日間を温泉で過ごし、その次の日に帰るという日程が組まれている。
今回ボクは三連休を使い徹底的にのんびりするつもりだ。
なのに、なぜか姉様たちは衣装を詰めたバッグを用意している。
これはいったいどうしたことだろうか? もしかすると姉様たちは踊りでも踊るのだろうか。
だとしたらご愁傷様だと言っておこう。
姉様たち、頑張ってください。
行き方は簡単で妖精郷に行き、そこから高尾山へと向かう。
温泉は高尾山にあるのでそこまでは電気自動車で向かうことになる。
妖精郷ではガソリン車は禁止されているのでどうしてもそういった技術の車を使うことになる。
ボクも早速服や遊び道具を詰め込んでいく。
お昼からの出発になるのでそれまでに用意を完了すればいいのだ。
まぁそれに二日しかいないので服もそう必要なわけじゃない。
服は二日分、下着類の着替えは少し多め、そしてゲーム機器と本。
おやつは向こうで調達するので今持っていく必要はない。
さてと、ボクの荷物はこんなところか。
そう思っていると、葵姉様がボクの目の前に大きめのバッグを一つ置いた。
「葵姉様? ボクの荷物はこれだけですけど……」
ボクが困惑してそう言うと、葵姉様はお母様そっくりの顔でにっこり微笑みこう言ったのだ。
「これは暮葉ちゃんの衣装よ。いくつかあるけど年始に神社の神楽殿で奉納舞をするでしょう? あとでお母様と練習することになるから持っていきなさい」
「えっ……」
しまった、忘れていた。
昔から舞の練習はしていたけど、まさかこのタイミングで来るとは思っていなかった。
正直年末かなと思っていたので温泉を満喫する気満々だった。
「頑張ってね? 暮葉ちゃん」
葵姉様はにっこり微笑みそう言葉を残して去っていった。
ぐぬぬ、ボクの怠惰にのんびり過ごすという予定が狂ってしまった。
「暮葉ちゃん、気を落とさないでね? 葵姉様も暮葉ちゃんの舞を楽しみにしてるだけだから。私ももちろん楽しみにしてるけど」
ボクの隣にやってきた弥生姉様がボクを撫でながら優しくそう言う。
「うぅ、ボク頑張ります……」
優しい姉様の期待に応えない妹になるわけにはいかなかった。
心を殺して頑張ろう……。
これからの予定だけど、お昼過ぎたら妖精郷の夕霧家本邸に行き、お母様たちと合流。
その後酒吞童子たちと合流して高尾山へ出発する。
お昼はここで食べるけど夕食は向こうで食べることになるので用意する必要はない。
ただ車内で飲む飲み物についてはいくつか自分で用意しておく必要がある。
余分に持ってきてくれるはずだけど飲みたいものが残ってるとは限らないからだ。
お昼ご飯はサンドイッチをいくつか摘まんで、おまけで紅茶を二杯飲んで終了だ。
ボク自身食べる量はそう多くないのでこんな物でもしばらく持つ。
お腹空いても夕食まで我慢すればいいだけだしね。
「ふぅ、たくさん食べたくても軽いものだけですぐお腹にたまっちゃうんだよね」
ボクは膨らんだお腹を撫でながらそう呟いた。
「仕方ないわ、暮葉ちゃんはまだ小さいもの。弥生も暮葉ちゃんもまだまだ子供なんだから無理はダメよ?」
「は~い」
「わかりました、葵姉様」
弥生姉様は間延びした声で返事を返し、ボクは普通に返事を返す。
葵姉様は末っ子のボクにだけは『ちゃん』をつけて呼ぶ。
唯一そう呼ばないのは宗親兄様くらいなものだ。
「葵に弥生に暮葉、そろそろ行くよ」
「はい、宗親兄」
「は~い兄様」
「わかりました、兄様」
そう言うと宗親兄様はたくさんのバッグを持って先に出ていった。
「それじゃあ行きましょうか」
「は~い」
「はい、姉様」
葵姉様の言葉に従ってボクたちは本邸へと出発した。
家の奥の扉を抜けると本邸の扉へとすぐ繋がっている。
言ってみればワープのような転移のようなそんな感じだ。
でも実はここに境界の一つがあって、そこを利用しているに過ぎない。
今は少なくなったそうだけど、昔はこういった境界のせいで神隠しと呼ばれる転移現象が発生してしまったらしい。
そもそも境界とは何なのか? 実は人間界と妖精郷や神郷、そして精霊郷は重なり合うようにして存在している。
その重なり合う一部分のうち強く結びついてしまっている場所が境界となっているのだ。
逆に言えば、それ以外の場所からボクたちの世界へと踏み入れることはできない。
唯一の例外は死んだあとだけだ。
人間は死後、人間界と妖精郷と神郷が重なり合う特異点へと向かう。
そしてそこから死者の国へと向かい、次を待つことになる。
なので、妖精郷からも神郷からも死者の国へと行くことは可能なのだ。
「おかえりなさいませ、葵様、弥生様、暮葉様」
扉をくぐるとすぐに出迎えてくれたのはメイド長の役職に就いている精霊だ。
彼女たちは実体のある者とない者がおり、実体のある者は人間と変わらない姿をしているが、実体のない者は半透明の姿をしている。
実体のない精霊が道具などに入り込むと付喪神となる。
時々人間界でも見かけることがあるので、結構身近な精霊と言えるかもしれない。
メイド長の役職に就いている精霊は水色の長い髪をした美女で、オールドスタイルのメイド服を着用している。
「おはようございます、愛理さん」
愛理さんはお父様が眠りに就く前から仕えてくれているメイドさんだ。
ほかにも六人のまとめ役がいるけど広い屋敷内で働いているため、探したり呼びつけない限りはすぐに出会うことはない。
特に今回はほぼ素通りの形なので愛理さんくらいにしか出会わないだろう。
ちなみにこの愛理さんはそのうちボクのお付きになるらしい。
「準備は完了しています。こちらへ」
愛理さんの案内でガレージへと向かう。
そこには少し大きめの車体の電気自動車がドアを開けて待っていた。
なんでも某社の先行車両を譲り受けたらしい。
「荷物は後ろのほうに入れますので、そちらのテーブルにてお待ちください。今お茶とお菓子をお持ちいたします」
愛理さんは詰め込みを部下のメイドに指示すると、すぐにキッチンへと向かっていってしまった。
「ふぁぁ。なんだか眠いね」
「そうね~暮葉ちゃん。こっちは比較的温暖だからね~」
「そうね。ただやっぱり場所によっては寒いみたいだからどこも同じだと思ってはいけないわよ」
「は~い、葵姉様」
幸いにもこの辺りは高尾山含めてまだ暖かい。
人間界の高尾山と妖精郷の高尾山は別物なので間違えないようにね?
「お待たせいたしました、緑茶と紅茶、コーヒーがございますがどれにいたしましょう?」
戻ってきた愛理さんがボクたちの前にワゴンを持ってきた。
上段には各種お茶類とお湯の入ったポットなどがあり、中段にはお菓子類が置いてあった。
「じゃあボクは緑茶で! 姉様たちは?」
「私はコーヒーでお願い」
「私は紅茶がいいかな~」
「かしこまりました」
注文を受けた愛理さんはてきぱきと用意していく。
そしてボクの前に緑茶を、葵姉様の前にはコーヒーを、弥生姉様の前には紅茶を置く。
ボクたちが用意されたお茶を受け取り飲んだことを確認した愛理さんはそのままお菓子を配る用意をし始めた。
「みなもちゃんと雫と黒奈待ちかな? 黒奈のんびり屋だから仕方ないか。起きてもまだ準備終わってなさそうだし」
「黒奈ちゃんは仕方ないわよね~」
「黒奈はあれでいいのよ。お付きなんて言うけど古い制度の言い方なだけだもの。今は友達というのよ」
「そうだよね。友達だよね!」
姉様たちとゆったりそんな話をしていると、みなもちゃんたちが合流してきた。
これからの小旅行が楽しくなりそうな気がした。
今日と明日の二日間を温泉で過ごし、その次の日に帰るという日程が組まれている。
今回ボクは三連休を使い徹底的にのんびりするつもりだ。
なのに、なぜか姉様たちは衣装を詰めたバッグを用意している。
これはいったいどうしたことだろうか? もしかすると姉様たちは踊りでも踊るのだろうか。
だとしたらご愁傷様だと言っておこう。
姉様たち、頑張ってください。
行き方は簡単で妖精郷に行き、そこから高尾山へと向かう。
温泉は高尾山にあるのでそこまでは電気自動車で向かうことになる。
妖精郷ではガソリン車は禁止されているのでどうしてもそういった技術の車を使うことになる。
ボクも早速服や遊び道具を詰め込んでいく。
お昼からの出発になるのでそれまでに用意を完了すればいいのだ。
まぁそれに二日しかいないので服もそう必要なわけじゃない。
服は二日分、下着類の着替えは少し多め、そしてゲーム機器と本。
おやつは向こうで調達するので今持っていく必要はない。
さてと、ボクの荷物はこんなところか。
そう思っていると、葵姉様がボクの目の前に大きめのバッグを一つ置いた。
「葵姉様? ボクの荷物はこれだけですけど……」
ボクが困惑してそう言うと、葵姉様はお母様そっくりの顔でにっこり微笑みこう言ったのだ。
「これは暮葉ちゃんの衣装よ。いくつかあるけど年始に神社の神楽殿で奉納舞をするでしょう? あとでお母様と練習することになるから持っていきなさい」
「えっ……」
しまった、忘れていた。
昔から舞の練習はしていたけど、まさかこのタイミングで来るとは思っていなかった。
正直年末かなと思っていたので温泉を満喫する気満々だった。
「頑張ってね? 暮葉ちゃん」
葵姉様はにっこり微笑みそう言葉を残して去っていった。
ぐぬぬ、ボクの怠惰にのんびり過ごすという予定が狂ってしまった。
「暮葉ちゃん、気を落とさないでね? 葵姉様も暮葉ちゃんの舞を楽しみにしてるだけだから。私ももちろん楽しみにしてるけど」
ボクの隣にやってきた弥生姉様がボクを撫でながら優しくそう言う。
「うぅ、ボク頑張ります……」
優しい姉様の期待に応えない妹になるわけにはいかなかった。
心を殺して頑張ろう……。
これからの予定だけど、お昼過ぎたら妖精郷の夕霧家本邸に行き、お母様たちと合流。
その後酒吞童子たちと合流して高尾山へ出発する。
お昼はここで食べるけど夕食は向こうで食べることになるので用意する必要はない。
ただ車内で飲む飲み物についてはいくつか自分で用意しておく必要がある。
余分に持ってきてくれるはずだけど飲みたいものが残ってるとは限らないからだ。
お昼ご飯はサンドイッチをいくつか摘まんで、おまけで紅茶を二杯飲んで終了だ。
ボク自身食べる量はそう多くないのでこんな物でもしばらく持つ。
お腹空いても夕食まで我慢すればいいだけだしね。
「ふぅ、たくさん食べたくても軽いものだけですぐお腹にたまっちゃうんだよね」
ボクは膨らんだお腹を撫でながらそう呟いた。
「仕方ないわ、暮葉ちゃんはまだ小さいもの。弥生も暮葉ちゃんもまだまだ子供なんだから無理はダメよ?」
「は~い」
「わかりました、葵姉様」
弥生姉様は間延びした声で返事を返し、ボクは普通に返事を返す。
葵姉様は末っ子のボクにだけは『ちゃん』をつけて呼ぶ。
唯一そう呼ばないのは宗親兄様くらいなものだ。
「葵に弥生に暮葉、そろそろ行くよ」
「はい、宗親兄」
「は~い兄様」
「わかりました、兄様」
そう言うと宗親兄様はたくさんのバッグを持って先に出ていった。
「それじゃあ行きましょうか」
「は~い」
「はい、姉様」
葵姉様の言葉に従ってボクたちは本邸へと出発した。
家の奥の扉を抜けると本邸の扉へとすぐ繋がっている。
言ってみればワープのような転移のようなそんな感じだ。
でも実はここに境界の一つがあって、そこを利用しているに過ぎない。
今は少なくなったそうだけど、昔はこういった境界のせいで神隠しと呼ばれる転移現象が発生してしまったらしい。
そもそも境界とは何なのか? 実は人間界と妖精郷や神郷、そして精霊郷は重なり合うようにして存在している。
その重なり合う一部分のうち強く結びついてしまっている場所が境界となっているのだ。
逆に言えば、それ以外の場所からボクたちの世界へと踏み入れることはできない。
唯一の例外は死んだあとだけだ。
人間は死後、人間界と妖精郷と神郷が重なり合う特異点へと向かう。
そしてそこから死者の国へと向かい、次を待つことになる。
なので、妖精郷からも神郷からも死者の国へと行くことは可能なのだ。
「おかえりなさいませ、葵様、弥生様、暮葉様」
扉をくぐるとすぐに出迎えてくれたのはメイド長の役職に就いている精霊だ。
彼女たちは実体のある者とない者がおり、実体のある者は人間と変わらない姿をしているが、実体のない者は半透明の姿をしている。
実体のない精霊が道具などに入り込むと付喪神となる。
時々人間界でも見かけることがあるので、結構身近な精霊と言えるかもしれない。
メイド長の役職に就いている精霊は水色の長い髪をした美女で、オールドスタイルのメイド服を着用している。
「おはようございます、愛理さん」
愛理さんはお父様が眠りに就く前から仕えてくれているメイドさんだ。
ほかにも六人のまとめ役がいるけど広い屋敷内で働いているため、探したり呼びつけない限りはすぐに出会うことはない。
特に今回はほぼ素通りの形なので愛理さんくらいにしか出会わないだろう。
ちなみにこの愛理さんはそのうちボクのお付きになるらしい。
「準備は完了しています。こちらへ」
愛理さんの案内でガレージへと向かう。
そこには少し大きめの車体の電気自動車がドアを開けて待っていた。
なんでも某社の先行車両を譲り受けたらしい。
「荷物は後ろのほうに入れますので、そちらのテーブルにてお待ちください。今お茶とお菓子をお持ちいたします」
愛理さんは詰め込みを部下のメイドに指示すると、すぐにキッチンへと向かっていってしまった。
「ふぁぁ。なんだか眠いね」
「そうね~暮葉ちゃん。こっちは比較的温暖だからね~」
「そうね。ただやっぱり場所によっては寒いみたいだからどこも同じだと思ってはいけないわよ」
「は~い、葵姉様」
幸いにもこの辺りは高尾山含めてまだ暖かい。
人間界の高尾山と妖精郷の高尾山は別物なので間違えないようにね?
「お待たせいたしました、緑茶と紅茶、コーヒーがございますがどれにいたしましょう?」
戻ってきた愛理さんがボクたちの前にワゴンを持ってきた。
上段には各種お茶類とお湯の入ったポットなどがあり、中段にはお菓子類が置いてあった。
「じゃあボクは緑茶で! 姉様たちは?」
「私はコーヒーでお願い」
「私は紅茶がいいかな~」
「かしこまりました」
注文を受けた愛理さんはてきぱきと用意していく。
そしてボクの前に緑茶を、葵姉様の前にはコーヒーを、弥生姉様の前には紅茶を置く。
ボクたちが用意されたお茶を受け取り飲んだことを確認した愛理さんはそのままお菓子を配る用意をし始めた。
「みなもちゃんと雫と黒奈待ちかな? 黒奈のんびり屋だから仕方ないか。起きてもまだ準備終わってなさそうだし」
「黒奈ちゃんは仕方ないわよね~」
「黒奈はあれでいいのよ。お付きなんて言うけど古い制度の言い方なだけだもの。今は友達というのよ」
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