女神運営☆異世界転生斡旋所〈とりっぷ〉

緋色刹那

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所長代理編 第一話「黒猫タクシーと亡霊少年」

プロローグ

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 飾りっ気のない無機質なオフィスに、二人の男がカウンターを挟み、向かい合って座っている。テーブルには、インスタントコーヒーが二つ。
 現代日本なら珍しくもない光景だが、入口のマガジンラックや掲示板には「ゴブリンでも分かる異世界転生入門」だの「人生トレーダーに注意!」などという、怪しい雑誌やポスターが置かれていた。

「つまりね、僕はありとあらゆる人生に飽きてしまったのだよ。いっそ神にでもなって、世界そのものを作ってしまおうかな?」

 男の一人は得意げに足を組む。十代後半から二十代くらいの若い男で、ファンタジー世界にいそうな学士の格好をしている。

「やめといたほうがいいっすよ」

 もう一人の男が、男をたしなめる。
 スーツを着た、いかにも会社員風の男だった。一方で、「平凡」と書かれたお面を被り、「平凡」模様のネクタイを締めているという、全く「平凡」ではない外見の男でもあった。
 彼を見た者は、百人中百人が
「全然平凡じゃないじゃん!」
 と、心の中でツッコミを入れるだろう。

 「平凡」のお面を被った男は、学士の男を諭すように言った。

「神なんてなるもんじゃないっす。万能じゃないし、転生も自由にできないし」

     ☆

 彼の名前は、平凡仙人へいぼんせんにん
 ごく一般的な家庭に生まれ、ごく平凡な人生を送り、ごく普通に家族に看取られて死んだ、どこにでもいる一般人・平英望《たいらひでぼう》だったが、数奇な人生を繰り返した結果、神にも等しい存在に成り果ててしまった。
 現在は訳あって、死者の転生を斡旋するあの世の事務所「とりっぷ」の所長代理を任されている。

 これは人生体験中の所長・女神(自称)に代わり、死者を導き、冥界の住人達と交流することになった、元人間の記録である。
 詳しくは、第一部を読んでね!


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