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第五話「いい加減、私を好きになりなさいよ!」
〈悪役令嬢ローゼリア編〉プロローグ
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「うっ……」
黒いローブを被った人間がぶつかってくると同時に、強烈な痛みがローゼリアの腹に走った。
腹に突き刺さったナイフの刃先を中心に、ジワジワと真っ赤な血がドレスに広がっていく。ローゼリアは青ざめた顔で倒れ、それを見た周囲の人々は悲鳴を上げた。
犯人は素早くローゼリアからナイフを引き抜くと、巧妙に人混みへまぎれ、逃走した。
「ローゼリア様!」
「大変だ……早く手当てを!」
「誰かそいつを捕まえてくれ!」
城から連れてきた数人のお付きが慌ててローゼリアへ駆け寄り、介抱しようとする。
一人は医者を、一人は犯人を捕まえに走ったが、ローゼリアには「どちらも間に合わないだろう」と分かっていた。
同じ人生を幾度も繰り返していたローゼリアには分かっていた。今回も自分は助からないのだ、と。
(痛い、痛い、痛い……何度経験しても、死の痛みには慣れないわね。今回こそは上手くいくと思ってたのに、残念だわ)
ローゼリアは悔しそうに唇を噛んだ。
ローゼリアには犯人の目星がついていた。犯人が使ったナイフの柄に王家の紋章が刻印されていたからだ。
紋章が刻まれている品は王家か、王家に関係する者にしか所有が許されていない。貴重な品で、肌身離さず持っているので盗まれた可能性も低い。となると、犯人は自ずと限られてくる。
(ハンドリュー……私を王国から追放した上、自ら暗殺しに来るなんて! 絶対に許せない!)
ローゼリアは死の間際、心の中で叫んだ。
(来世こそは生き延びてやる! 生き延びて……ハンドリューを振り向かせてやるんだからぁぁぁぁッ!)
黒いローブを被った人間がぶつかってくると同時に、強烈な痛みがローゼリアの腹に走った。
腹に突き刺さったナイフの刃先を中心に、ジワジワと真っ赤な血がドレスに広がっていく。ローゼリアは青ざめた顔で倒れ、それを見た周囲の人々は悲鳴を上げた。
犯人は素早くローゼリアからナイフを引き抜くと、巧妙に人混みへまぎれ、逃走した。
「ローゼリア様!」
「大変だ……早く手当てを!」
「誰かそいつを捕まえてくれ!」
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(痛い、痛い、痛い……何度経験しても、死の痛みには慣れないわね。今回こそは上手くいくと思ってたのに、残念だわ)
ローゼリアは悔しそうに唇を噛んだ。
ローゼリアには犯人の目星がついていた。犯人が使ったナイフの柄に王家の紋章が刻印されていたからだ。
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(ハンドリュー……私を王国から追放した上、自ら暗殺しに来るなんて! 絶対に許せない!)
ローゼリアは死の間際、心の中で叫んだ。
(来世こそは生き延びてやる! 生き延びて……ハンドリューを振り向かせてやるんだからぁぁぁぁッ!)
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