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第三話「俺達はいつも一緒!」
選択肢②『玲二のプラン』中編
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「な、なぜ、社内に成体のファフニールが……?!」
玲二は我が目を疑った。鋼のような鱗、毒の吐息……間違いなく、大人のファフニールだった。
玲二の会社はセキュリティが厳しく、例え相手がドラゴンであろうとも、建物を取り囲むように張られたバリアによって侵入を阻まれる。そもそも人間界に野生のドラゴンが襲来するのは極めて稀だった。
「れ……玲二君」
その時、倉庫の奥から従汰の声がかすかに聞こえた。目を凝らすと、従汰がガレキの下敷きになって倒れているのが見えた。
「従汰!」
「ウォォォッ!」
玲二は従汰を助けに行こうとするが、ファフニールに阻まれ、後ずさる。
ファフニールの口からは紫色の毒の吐息が絶えず吐かれ、無闇に近づくのは危険だった。しかしこのままでは従汰の命が危なかった。
「うっ、ぐ……」
従汰は頭から血を流しながらも、自力でガレキから這い出ようとする。しかし全く身動きが取れず、ビクともしなかった。
「浮上!」
玲二は懐から魔法の杖を取り出し、従汰の上に乗っていたガレキ達を浮かせる。
「食らえ!」
そのまま杖をファフニールに向け、浮かせたガレキをぶつけた。
「ウォウ?」
しかし鋼鉄の鱗に覆われたファフニールには大したダメージは与えられない。
それどころか、ファフニールは「その程度か」と言わんばかりに首を傾げ、自らの力を誇示せんと、玲二に向かって口から毒の息吹を吐いた。
「聖盾!」
玲二は毒を無効化する防御魔法を使い、ファフニールの息を防いだ。盾はファフニールの毒に耐えきれるほどの強度はなく、次第に溶けていく。
今すぐこの場から立ち去れば、玲二の命は助かるだろう。だが、ファフニールの背後には従汰が倒れたままだった。彼の両足はガレキに潰され、使い物にならなくなっていた。
(従汰を浮上で浮かせ、聖盾で身を守れば、ファフニールから安全に逃げ出せるだろう。だが、俺達が外へ出れば、ファフニールは俺達を追って、外へ出て来てしまう)
玲二と従汰の会社はオフィス街の中心にある。
加えて、今は通勤ラッシュで、空には魔法のホウキに跨った会社員が飛び交い、地上には魔獣に乗って移動している商人が大勢いた。今、ファフニールを街へ解き放てば、大変な被害が出てしまうだろう。
玲二は悩んだ。
「一体、どうすれば……」
「玲二君! 僕をここに置いていって!」
その時、従汰が叫んだ。頭から血を流しながらも、必死になって玲二に訴える。
当然、玲二は「何を馬鹿なことを言ってるんだ!」と反対した。
「俺が逃げれば、お前がファフニールの餌食になるんだぞ?!」
「いいんだ……元はと言えば、全部僕のせいなんだから。僕がうっかりして、倉庫に成体のドラゴン用の餌を置いたりなんかしたから……」
「なんだと?!」
玲二は青ざめた。
プチニールは成体のドラゴン用の餌を食べると、急速に成長するという性質を持っていた。改造によって体が成長しなくなったせいで、フラストレーションが溜まっているせいだと考えられており、プチニールが収蔵されている倉庫には絶対に入れてはいけないと再三、上司から注意されていた。
「最近、徹夜が続いてたせいで頭がぼーっとしてて……気づいたら、倉庫に仕舞われていたはずのプチニールが一匹、オリからいなくなってたんだ。それで気が動転しちゃって、成体用のドラゴンの餌も倉庫に置いたままだった。たぶん、そのいなくなったプチニールが、僕に隠れて成体用の餌を食べちゃったんだと思う」
従汰は寂しげに笑い「馬鹿だよね、僕」と呟いた。
「剛君と玲二君と離れれば、二人みたいになれるって思ってたのに……残念」
従汰はおもむろに棚から赤黒い液体が入ったガラスのビンを取り出すと、頭から全てかけた。途端に、倉庫周辺に鉄の臭いと獣の臭いが入れ混じったような異臭が漂う。
玲二はその臭いの正体に気づき、ハッとした。ファフニールの好物である、家畜の血の臭いだった。
「これは……ミートブタの血! ダメだ、従汰!」
次の瞬間、ファフニールが従汰を振り返り、彼の体へ噛みついた。ファフニールの巨大な牙が従汰の腹を食い破り、血が吹き出す。
「ぐッ……君がいなくなったら、みんなが悲しむ。僕が身代わりになった方がいい」
「そんなことはない! 絶対にお前を助ける! 凍結!」
玲二はファフニールに杖を向け、攻撃魔法を唱える。杖の先から放たれた真っ白な光線がファフニールの足に直撃し、凍てつかせた。
が、ファフニールは煩しそうに唸ると、足を持ち上げ、いとも容易く氷を破った。さらに、玲二に追撃の間を与えることなく、尾を振るい、彼をその場から吹っ飛ばした。
「グハッ……」
玲二は廊下の先まで飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「従……汰……」
あまりの衝撃に、意識が遠のいていく。やがて玲二は失神し、床に倒れた。
玲二は夢の中で平凡仙人と会った。周囲はどこまでも白く、白いローブを纏っている平凡仙人は背景と同化しているように見えた。
「よっ」
「貴方は、あの時の……ということは、俺は死んだんですか?」
「死んではいないな。生死の境を彷徨っているだけだ。じきに目を覚ます」
それはそうと、と平凡仙人は玲二に尋ねた。
「何故、従汰がお前達と別れたがっていたか、知りたくはないか?」
「ッ! ご存知なんですか?!」
玲二は平凡仙人へ詰め寄り、聞き返す。
平凡仙人は頷き、従汰が抱えていた悩みを打ち明けた。
「内木従汰は、我太剛とお前に憧れていた。我太剛のリーダーシップ、コミュニケーション能力、前向きに物事を捉える心。お前の冷静さ、賢さ、剛に復讐するという執念……ドジで、ノロマで、何の長所もないと思っていた従汰にとって、お前達は目標だった。だが同時に、自分の不甲斐なさに気づかされる存在でもあった。どんなに頑張っても、二人のようにはなれない、無理だと諦めざるを得なかった。だからこそ、お前達と別れ、努力しようとしていた」
「従汰が、剛と俺に憧れていただと?」
玲二には信じられなかった。従汰にも他人に優しいところや、動物に詳しいといった、長所はたくさんある。
何より、あの剛に憧れていたという点には耳を疑った。
「従汰は剛を憎んでいたから、離れたがっていたんじゃなかったのか?!」
「そういうことだ。我太剛から受けた仕打ちは、全て自分のせいだと思っていたようだ。内木従汰はこの世界に来てからもお前達を目標に、努力し続けた。しかし就職に失敗し、派遣会社に就職せざるを得なかった。もともと仕事は得意ではなかったが、お前と再会してからは自暴自棄になり、ますます仕事に手がつかなくなった」
「俺が、従汰を追い詰めた……?」
玲二はショックだった。そして、気づいた。
自分も剛と同じように、己のことしか考えていなかったこと。従汰に避けられるからと、彼の本当の気持ちを尋ねようとしなかったこと……。
「……従汰は、無事なのか?」
「さぁな。自分の目で確かめな」
平凡仙人が持っていた杖を掲げると、周囲は霧に包まれた。
やがて玲二は意識が朦朧とし、再度眠りに落ちた。
玲二は我が目を疑った。鋼のような鱗、毒の吐息……間違いなく、大人のファフニールだった。
玲二の会社はセキュリティが厳しく、例え相手がドラゴンであろうとも、建物を取り囲むように張られたバリアによって侵入を阻まれる。そもそも人間界に野生のドラゴンが襲来するのは極めて稀だった。
「れ……玲二君」
その時、倉庫の奥から従汰の声がかすかに聞こえた。目を凝らすと、従汰がガレキの下敷きになって倒れているのが見えた。
「従汰!」
「ウォォォッ!」
玲二は従汰を助けに行こうとするが、ファフニールに阻まれ、後ずさる。
ファフニールの口からは紫色の毒の吐息が絶えず吐かれ、無闇に近づくのは危険だった。しかしこのままでは従汰の命が危なかった。
「うっ、ぐ……」
従汰は頭から血を流しながらも、自力でガレキから這い出ようとする。しかし全く身動きが取れず、ビクともしなかった。
「浮上!」
玲二は懐から魔法の杖を取り出し、従汰の上に乗っていたガレキ達を浮かせる。
「食らえ!」
そのまま杖をファフニールに向け、浮かせたガレキをぶつけた。
「ウォウ?」
しかし鋼鉄の鱗に覆われたファフニールには大したダメージは与えられない。
それどころか、ファフニールは「その程度か」と言わんばかりに首を傾げ、自らの力を誇示せんと、玲二に向かって口から毒の息吹を吐いた。
「聖盾!」
玲二は毒を無効化する防御魔法を使い、ファフニールの息を防いだ。盾はファフニールの毒に耐えきれるほどの強度はなく、次第に溶けていく。
今すぐこの場から立ち去れば、玲二の命は助かるだろう。だが、ファフニールの背後には従汰が倒れたままだった。彼の両足はガレキに潰され、使い物にならなくなっていた。
(従汰を浮上で浮かせ、聖盾で身を守れば、ファフニールから安全に逃げ出せるだろう。だが、俺達が外へ出れば、ファフニールは俺達を追って、外へ出て来てしまう)
玲二と従汰の会社はオフィス街の中心にある。
加えて、今は通勤ラッシュで、空には魔法のホウキに跨った会社員が飛び交い、地上には魔獣に乗って移動している商人が大勢いた。今、ファフニールを街へ解き放てば、大変な被害が出てしまうだろう。
玲二は悩んだ。
「一体、どうすれば……」
「玲二君! 僕をここに置いていって!」
その時、従汰が叫んだ。頭から血を流しながらも、必死になって玲二に訴える。
当然、玲二は「何を馬鹿なことを言ってるんだ!」と反対した。
「俺が逃げれば、お前がファフニールの餌食になるんだぞ?!」
「いいんだ……元はと言えば、全部僕のせいなんだから。僕がうっかりして、倉庫に成体のドラゴン用の餌を置いたりなんかしたから……」
「なんだと?!」
玲二は青ざめた。
プチニールは成体のドラゴン用の餌を食べると、急速に成長するという性質を持っていた。改造によって体が成長しなくなったせいで、フラストレーションが溜まっているせいだと考えられており、プチニールが収蔵されている倉庫には絶対に入れてはいけないと再三、上司から注意されていた。
「最近、徹夜が続いてたせいで頭がぼーっとしてて……気づいたら、倉庫に仕舞われていたはずのプチニールが一匹、オリからいなくなってたんだ。それで気が動転しちゃって、成体用のドラゴンの餌も倉庫に置いたままだった。たぶん、そのいなくなったプチニールが、僕に隠れて成体用の餌を食べちゃったんだと思う」
従汰は寂しげに笑い「馬鹿だよね、僕」と呟いた。
「剛君と玲二君と離れれば、二人みたいになれるって思ってたのに……残念」
従汰はおもむろに棚から赤黒い液体が入ったガラスのビンを取り出すと、頭から全てかけた。途端に、倉庫周辺に鉄の臭いと獣の臭いが入れ混じったような異臭が漂う。
玲二はその臭いの正体に気づき、ハッとした。ファフニールの好物である、家畜の血の臭いだった。
「これは……ミートブタの血! ダメだ、従汰!」
次の瞬間、ファフニールが従汰を振り返り、彼の体へ噛みついた。ファフニールの巨大な牙が従汰の腹を食い破り、血が吹き出す。
「ぐッ……君がいなくなったら、みんなが悲しむ。僕が身代わりになった方がいい」
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玲二はファフニールに杖を向け、攻撃魔法を唱える。杖の先から放たれた真っ白な光線がファフニールの足に直撃し、凍てつかせた。
が、ファフニールは煩しそうに唸ると、足を持ち上げ、いとも容易く氷を破った。さらに、玲二に追撃の間を与えることなく、尾を振るい、彼をその場から吹っ飛ばした。
「グハッ……」
玲二は廊下の先まで飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「従……汰……」
あまりの衝撃に、意識が遠のいていく。やがて玲二は失神し、床に倒れた。
玲二は夢の中で平凡仙人と会った。周囲はどこまでも白く、白いローブを纏っている平凡仙人は背景と同化しているように見えた。
「よっ」
「貴方は、あの時の……ということは、俺は死んだんですか?」
「死んではいないな。生死の境を彷徨っているだけだ。じきに目を覚ます」
それはそうと、と平凡仙人は玲二に尋ねた。
「何故、従汰がお前達と別れたがっていたか、知りたくはないか?」
「ッ! ご存知なんですか?!」
玲二は平凡仙人へ詰め寄り、聞き返す。
平凡仙人は頷き、従汰が抱えていた悩みを打ち明けた。
「内木従汰は、我太剛とお前に憧れていた。我太剛のリーダーシップ、コミュニケーション能力、前向きに物事を捉える心。お前の冷静さ、賢さ、剛に復讐するという執念……ドジで、ノロマで、何の長所もないと思っていた従汰にとって、お前達は目標だった。だが同時に、自分の不甲斐なさに気づかされる存在でもあった。どんなに頑張っても、二人のようにはなれない、無理だと諦めざるを得なかった。だからこそ、お前達と別れ、努力しようとしていた」
「従汰が、剛と俺に憧れていただと?」
玲二には信じられなかった。従汰にも他人に優しいところや、動物に詳しいといった、長所はたくさんある。
何より、あの剛に憧れていたという点には耳を疑った。
「従汰は剛を憎んでいたから、離れたがっていたんじゃなかったのか?!」
「そういうことだ。我太剛から受けた仕打ちは、全て自分のせいだと思っていたようだ。内木従汰はこの世界に来てからもお前達を目標に、努力し続けた。しかし就職に失敗し、派遣会社に就職せざるを得なかった。もともと仕事は得意ではなかったが、お前と再会してからは自暴自棄になり、ますます仕事に手がつかなくなった」
「俺が、従汰を追い詰めた……?」
玲二はショックだった。そして、気づいた。
自分も剛と同じように、己のことしか考えていなかったこと。従汰に避けられるからと、彼の本当の気持ちを尋ねようとしなかったこと……。
「……従汰は、無事なのか?」
「さぁな。自分の目で確かめな」
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