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番外編「First Grade」
第二話「いわくのタロットカード」⑶
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いわくのタロットカードが入っていた箱には、ゲームの説明書も入っていた。
成宮達は説明書どおりに、準備に取り掛かった。
〈タロットカードゲームの進め方〉
①部屋のドアや窓を閉め切り、密室にする。
②タロットカードを机の上に置く。
③参加者は机を囲うように座り、タロットカードに向かってお辞儀(始まりの挨拶)をする。
④一人一回質問し、タロットカードを三枚めくる。意味は別紙を参考にすること。複数人で同じ質問をする場合は、代表者のみとする。
⑤ゲームが終わったら、再度タロットカードにお辞儀(終わりの挨拶)をする。
⑥タロットカードを箱に仕舞い、部屋のドアと窓を全て開ける。必ず、10分は換気すること。
〈注意事項〉
①手順を間違えてはいけない。間違えたら天罰がくだる。
②ゲームの途中で部屋を出入りしてはいけない。出た者は天罰がくだる。入った者は、ゲームに加われば天罰を回避できる。加わらなかったり、外に戻ったりすると、天罰がくだる。
③タロットカードが出した答えに反論してはならない。天罰がくだる。
④質問できるのは一人一回のみ。二回以上質問すると、天罰がくだる。
途中で誰かが入ってこないよう、ドアに「ゴキブリが出ました。立ち入り禁止」と張り紙をした。幸い、霧島は塾で帰った。
「タロットの絵はオリジナルなのね」
「アイドル、社長、サメ……美術部もあるな」
「解読書がなかったら、意味が全く分からなかったね」
「やっぱり、最初は姉小路先輩からだよな?」
「いや、俺達から行くぜ」
比嘉と村上が口を挟んだ。
「何が起きるか分からないのに、いきなり部外者にやらせるわけにはいかねぇな」
「この中じゃ俺達が一番先輩だし、実験体なってやんよ」
「先輩……」
「意外と良い人だったんですね」
「見直した」
「それじゃあ、一番手お願いします」
全員でいわくのタロットカードにお辞儀をし、ゲームが始まった。
緊張で空気が張りつめる中、比嘉と村上はいわくのタロットカードに質問を投げかけた。
「俺達……漫才師として成功できますか?」
沈黙。まだ何も起こらない。遠くで運動部の声がする。
比嘉が汗ばんだ手で、カードを三枚めくる。金持ち、フンコロガシ、天秤のカードが出た。
「どういう意味だ?」
「えっと……」
大城が別紙を使って解読し、読み上げた。
「"可もなく不可もなく"だって」
「なんだそりゃ!」
「ビミョー」
比嘉と村上がボヤいた直後、二人の頭にタライが降ってきた。
「あいた!」
「つぅ……このタライ、どっから出てきた?!」
二人は涙目で頭を押さえる。タライはけたたましい音を立て、床に転がった。
全員天井を見上げるが、タライらしき物は見当たらない。
「天罰って、タライのこと?」
「痛そう……」
「漫才師志望としては嬉しいんじゃないの?」
「うん、嬉しい!」
「けど、痛い!」
「私……もう少し心の準備がしたいわ。誰か、他の人やって」
姉小路は痛がる二人に怯え、先を譲った。
成宮と大城は顔を見合わせる。二人とも青ざめていた。
結局、名乗りを上げたのは音来だけだった。
「では、俺が行こう」
音来は淡々と、いわくのタロットカードに質問した。
「神☆メイはワールドツアーを成功できるか?」
「……神なんとかって、世界デビューしてたか?」
成宮の疑問に、音来はフッと鼻で笑った。
「これだから素人は。神☆メイはすでに、世界に向けて動画を発信している。全世界にファンがいるに決まっているだろう? いずれ、ワールドツアーだってやるさ」
音来はカードを三枚めくる。ドミノを成功させた人、マイク、どこにでもいる普通の一般人が出た。
「一般人の顔、なんかムカつくな」
「薄ら笑いってかんじだね」
「で、カードの意味は?」
「えーっと……"成功する"」
ガッツポーズする音来。しかし、解読には続きがあった。
「"その後、辞めて一般人になる"だって」
「ノォォォォッ!!! 俺は絶対に認めな……でゅくしッ!」
音来の頭にタライが降る。そのまま音来は机に突っ伏し、ショックで気を失った。
「そんなにショックになる?」
「分かる……分かるよ、音来君。推しが辞めるって、死よりもツラいよね。僕も推しの質問はやめておくよ」
成宮達は説明書どおりに、準備に取り掛かった。
〈タロットカードゲームの進め方〉
①部屋のドアや窓を閉め切り、密室にする。
②タロットカードを机の上に置く。
③参加者は机を囲うように座り、タロットカードに向かってお辞儀(始まりの挨拶)をする。
④一人一回質問し、タロットカードを三枚めくる。意味は別紙を参考にすること。複数人で同じ質問をする場合は、代表者のみとする。
⑤ゲームが終わったら、再度タロットカードにお辞儀(終わりの挨拶)をする。
⑥タロットカードを箱に仕舞い、部屋のドアと窓を全て開ける。必ず、10分は換気すること。
〈注意事項〉
①手順を間違えてはいけない。間違えたら天罰がくだる。
②ゲームの途中で部屋を出入りしてはいけない。出た者は天罰がくだる。入った者は、ゲームに加われば天罰を回避できる。加わらなかったり、外に戻ったりすると、天罰がくだる。
③タロットカードが出した答えに反論してはならない。天罰がくだる。
④質問できるのは一人一回のみ。二回以上質問すると、天罰がくだる。
途中で誰かが入ってこないよう、ドアに「ゴキブリが出ました。立ち入り禁止」と張り紙をした。幸い、霧島は塾で帰った。
「タロットの絵はオリジナルなのね」
「アイドル、社長、サメ……美術部もあるな」
「解読書がなかったら、意味が全く分からなかったね」
「やっぱり、最初は姉小路先輩からだよな?」
「いや、俺達から行くぜ」
比嘉と村上が口を挟んだ。
「何が起きるか分からないのに、いきなり部外者にやらせるわけにはいかねぇな」
「この中じゃ俺達が一番先輩だし、実験体なってやんよ」
「先輩……」
「意外と良い人だったんですね」
「見直した」
「それじゃあ、一番手お願いします」
全員でいわくのタロットカードにお辞儀をし、ゲームが始まった。
緊張で空気が張りつめる中、比嘉と村上はいわくのタロットカードに質問を投げかけた。
「俺達……漫才師として成功できますか?」
沈黙。まだ何も起こらない。遠くで運動部の声がする。
比嘉が汗ばんだ手で、カードを三枚めくる。金持ち、フンコロガシ、天秤のカードが出た。
「どういう意味だ?」
「えっと……」
大城が別紙を使って解読し、読み上げた。
「"可もなく不可もなく"だって」
「なんだそりゃ!」
「ビミョー」
比嘉と村上がボヤいた直後、二人の頭にタライが降ってきた。
「あいた!」
「つぅ……このタライ、どっから出てきた?!」
二人は涙目で頭を押さえる。タライはけたたましい音を立て、床に転がった。
全員天井を見上げるが、タライらしき物は見当たらない。
「天罰って、タライのこと?」
「痛そう……」
「漫才師志望としては嬉しいんじゃないの?」
「うん、嬉しい!」
「けど、痛い!」
「私……もう少し心の準備がしたいわ。誰か、他の人やって」
姉小路は痛がる二人に怯え、先を譲った。
成宮と大城は顔を見合わせる。二人とも青ざめていた。
結局、名乗りを上げたのは音来だけだった。
「では、俺が行こう」
音来は淡々と、いわくのタロットカードに質問した。
「神☆メイはワールドツアーを成功できるか?」
「……神なんとかって、世界デビューしてたか?」
成宮の疑問に、音来はフッと鼻で笑った。
「これだから素人は。神☆メイはすでに、世界に向けて動画を発信している。全世界にファンがいるに決まっているだろう? いずれ、ワールドツアーだってやるさ」
音来はカードを三枚めくる。ドミノを成功させた人、マイク、どこにでもいる普通の一般人が出た。
「一般人の顔、なんかムカつくな」
「薄ら笑いってかんじだね」
「で、カードの意味は?」
「えーっと……"成功する"」
ガッツポーズする音来。しかし、解読には続きがあった。
「"その後、辞めて一般人になる"だって」
「ノォォォォッ!!! 俺は絶対に認めな……でゅくしッ!」
音来の頭にタライが降る。そのまま音来は机に突っ伏し、ショックで気を失った。
「そんなにショックになる?」
「分かる……分かるよ、音来君。推しが辞めるって、死よりもツラいよね。僕も推しの質問はやめておくよ」
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