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番外編「First Grade」
第一話「自由ノ星高校のバンクシー」⑴
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これは成宮、大城、音来が高校一年生だった頃の話。
彼らは紆余曲折の末、絵を描かない美術部に入部した。部長で大城の兄、大城太樹と二人の三年生の先輩に囲まれ、毎日楽しく遊び呆けていた……はずだった。
◯●◯●◯
「どうして、俺達は部活中に正座させられているんでしょうかね?」
成宮は不思議そうに首を傾げる。隣には大城、音来、大城の兄、先輩の比嘉(本名、比嘉ソテツ。通称ピカソ)と村上(本名、村上カンクロー。通称ムンク)が、仲良く横並びで正座させられていた。
剛田は仁王立ちで六人を見下ろし、怒り気味に答えた。
「それは……お前らが校舎に落書きしたからだ!」
成田が美術部に入って一ヶ月が経とうとしている、五月の末。
彼がかよう自由ノ星高校では、校舎の壁に次々に落書きされる事件が起こっていた。
しかも、ただの落書きではない。学校や教師、生徒を標的にした風刺画だ。
しゃべりすぎて口が裂けた女子生徒達、おとなしく生徒の踏み台にされている教師、物理的に腐った校舎など、嫌でも目立つ。校舎の壁いっぱいに描かれ、学校の外からも見えた。
絵そのものはプロ並の腕前で、多くの生徒が足を止めた。学校は落書きをレジャーシートで覆い、清掃業者の手配を急いでいる。
絵が描かれる瞬間を目撃した者はおらず、作者が誰なのかは分からない。誰が言ったのか、「自由ノ星高校のバンクシー」と密かに呼ばれている。剛田が美術部に来たのは、成宮らが「自由ノ星高校のバンクシー」ではないかと疑っていたからだった。
「そんなー」
「濡れ衣っすよー」
「僕達はそんなことしてません!」
「そもそも、うちは絵ぇ描かない美術部なんで!」
「美術部なら、全員絵が上手いと思うなよ!」
「いいから神☆メイを聴かせろ!」
ぎゃいぎゃい主張する六人に、剛田も「確かにな」とあっさり納得した。
「やっと美術部らしいことをしたかと思ったが、お前らがあんな凝った絵を描くわけないか。やるとしたら、絵を描いてる漫研だったな。悪かった、悪かった」
剛田がガハハと笑い、出て行った。
「……なんかムカつくな」
「うん」
「俺達だってアレくらい描けるっつーの」
彼らは紆余曲折の末、絵を描かない美術部に入部した。部長で大城の兄、大城太樹と二人の三年生の先輩に囲まれ、毎日楽しく遊び呆けていた……はずだった。
◯●◯●◯
「どうして、俺達は部活中に正座させられているんでしょうかね?」
成宮は不思議そうに首を傾げる。隣には大城、音来、大城の兄、先輩の比嘉(本名、比嘉ソテツ。通称ピカソ)と村上(本名、村上カンクロー。通称ムンク)が、仲良く横並びで正座させられていた。
剛田は仁王立ちで六人を見下ろし、怒り気味に答えた。
「それは……お前らが校舎に落書きしたからだ!」
成田が美術部に入って一ヶ月が経とうとしている、五月の末。
彼がかよう自由ノ星高校では、校舎の壁に次々に落書きされる事件が起こっていた。
しかも、ただの落書きではない。学校や教師、生徒を標的にした風刺画だ。
しゃべりすぎて口が裂けた女子生徒達、おとなしく生徒の踏み台にされている教師、物理的に腐った校舎など、嫌でも目立つ。校舎の壁いっぱいに描かれ、学校の外からも見えた。
絵そのものはプロ並の腕前で、多くの生徒が足を止めた。学校は落書きをレジャーシートで覆い、清掃業者の手配を急いでいる。
絵が描かれる瞬間を目撃した者はおらず、作者が誰なのかは分からない。誰が言ったのか、「自由ノ星高校のバンクシー」と密かに呼ばれている。剛田が美術部に来たのは、成宮らが「自由ノ星高校のバンクシー」ではないかと疑っていたからだった。
「そんなー」
「濡れ衣っすよー」
「僕達はそんなことしてません!」
「そもそも、うちは絵ぇ描かない美術部なんで!」
「美術部なら、全員絵が上手いと思うなよ!」
「いいから神☆メイを聴かせろ!」
ぎゃいぎゃい主張する六人に、剛田も「確かにな」とあっさり納得した。
「やっと美術部らしいことをしたかと思ったが、お前らがあんな凝った絵を描くわけないか。やるとしたら、絵を描いてる漫研だったな。悪かった、悪かった」
剛田がガハハと笑い、出て行った。
「……なんかムカつくな」
「うん」
「俺達だってアレくらい描けるっつーの」
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