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第七話「同人誌を作ろう!」
1,四コマを描いてみよう!
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「ご注文はお決まりですか?」
「ドリンクバー四つ」
翌日の放課後。部室を追われた美術部の面々は、学校の近くにあるファミレスに集まっていた。
「それで、今後の活動のことだけど……」
「ヒャッハー! 新鮮なドリンクバーだぜぇ!」
「誰が作ったドリンクが一番美味しいか競争しようよ!」
「ゲテモノナンバーワンの座は、俺が頂く!」
「真面目に聞きなさい。小学生男児ども」
成宮達は嬉々としてドリンクバーへ駆け寄り、オリジナルミックスジュースを錬成し始める。
童心に返った彼らの耳に、マネージャーの声は届かなかった。
「はぁ……あの三人、漫研に勝つつもりあるのかしら? 先が思いやられるわ」
マネージャーは三人を連れ戻すのを諦め、自分もドリンクバーへ紅茶を取りに向かった。
◯●◯●◯
「コーラコーヒー、まっず!」
「グレープオレンジは安牌だね」
「神☆メイをイメージして、スターフルーツジュースメイプルシロップと髪の毛を入れてみたんだが、誰か飲まないか?」
「髪の毛は誰の?」
「俺の」
「自分で飲め」
それぞれドリンクを手にテーブルへ戻ると、会議を再開した。
「さて、そんなこんなで我が美術部は漫研と同人誌の売上対決をすることになったわけだけど……例年の文化祭での漫研はどんな具合なのかしら?」
「……毎年大盛り上がりだよ」
大城は恐怖で青ざめながらも答えた。
「現役の漫画家が講師についてるせいか、どの漫画もクオリティが高くて、大人気なんだ。大半はBL漫画だけど、漫研の同人誌目当てにわざわざ県外から来るお客さんもいるらしい。素人の僕らじゃ、太刀打ち出来ないと思う」
「なるほど……」
マネージャーの顔が険しくなる。
簡単には勝てないと予想はついていたものの、改めて現実を突きつけられると精神的にこたえた。
「とりあえず、私達も漫画を描いてみましょうか」
「え?!」
「マジ?!」
「本気で言ってる?」
マネージャーは「もちろん」と頷く。
鞄から四冊のスケッチブックを取り出し、自分の分を除いた三冊を成宮達にも配った。
「描いてみないことには、同人誌の方向性を定められないもの。本格的な漫画だと時間がかかるから、まずは四コマ漫画を描いてみましょう。今回ばかりは私も協力するわ」
「先生。俺、今スランプなんすけど」
成宮が挙手する。
マネージャーは
「何でもいいから描いて。最悪、字だけでもいいから」
と、さっそくスケッチブックに筆を走らせながら言った。定規を使って慎重に線を引いていく。
そのひたむきな姿に、三人も心動かされた。
「……しゃーねーな。俺達も描くか」
「だな」
「何でもいいって言われたしね」
各々スケッチブックを広げ,シャーペンを握る。
漫画に興味のない成宮はよく新聞や雑誌の片隅に載っている四コマ漫画を、神☆メイ以外に興味のない音来は神☆メイのライブを思い浮かべながら、描いた。
(四コマかー。マネージャーがトマトジュースにタバスコかけようとしてた話でも描くかな)
唯一、まともに漫画を知っている大城は実際にあったことを元に、オリジナルの漫画を描こうとした。
しかしシャーペンの先をスケッチブックに当てようとして、固まった。急に手が震え出したのだ。
(ちょっ! 止まって! 止まってよ、僕の右手ぇ!)
震えを止めようとすればするほど、震えは悪化し、線はブレる。
大城の心の叫びが右手に届いた頃には、四コマ漫画合戦は終わっていた。
「ドリンクバー四つ」
翌日の放課後。部室を追われた美術部の面々は、学校の近くにあるファミレスに集まっていた。
「それで、今後の活動のことだけど……」
「ヒャッハー! 新鮮なドリンクバーだぜぇ!」
「誰が作ったドリンクが一番美味しいか競争しようよ!」
「ゲテモノナンバーワンの座は、俺が頂く!」
「真面目に聞きなさい。小学生男児ども」
成宮達は嬉々としてドリンクバーへ駆け寄り、オリジナルミックスジュースを錬成し始める。
童心に返った彼らの耳に、マネージャーの声は届かなかった。
「はぁ……あの三人、漫研に勝つつもりあるのかしら? 先が思いやられるわ」
マネージャーは三人を連れ戻すのを諦め、自分もドリンクバーへ紅茶を取りに向かった。
◯●◯●◯
「コーラコーヒー、まっず!」
「グレープオレンジは安牌だね」
「神☆メイをイメージして、スターフルーツジュースメイプルシロップと髪の毛を入れてみたんだが、誰か飲まないか?」
「髪の毛は誰の?」
「俺の」
「自分で飲め」
それぞれドリンクを手にテーブルへ戻ると、会議を再開した。
「さて、そんなこんなで我が美術部は漫研と同人誌の売上対決をすることになったわけだけど……例年の文化祭での漫研はどんな具合なのかしら?」
「……毎年大盛り上がりだよ」
大城は恐怖で青ざめながらも答えた。
「現役の漫画家が講師についてるせいか、どの漫画もクオリティが高くて、大人気なんだ。大半はBL漫画だけど、漫研の同人誌目当てにわざわざ県外から来るお客さんもいるらしい。素人の僕らじゃ、太刀打ち出来ないと思う」
「なるほど……」
マネージャーの顔が険しくなる。
簡単には勝てないと予想はついていたものの、改めて現実を突きつけられると精神的にこたえた。
「とりあえず、私達も漫画を描いてみましょうか」
「え?!」
「マジ?!」
「本気で言ってる?」
マネージャーは「もちろん」と頷く。
鞄から四冊のスケッチブックを取り出し、自分の分を除いた三冊を成宮達にも配った。
「描いてみないことには、同人誌の方向性を定められないもの。本格的な漫画だと時間がかかるから、まずは四コマ漫画を描いてみましょう。今回ばかりは私も協力するわ」
「先生。俺、今スランプなんすけど」
成宮が挙手する。
マネージャーは
「何でもいいから描いて。最悪、字だけでもいいから」
と、さっそくスケッチブックに筆を走らせながら言った。定規を使って慎重に線を引いていく。
そのひたむきな姿に、三人も心動かされた。
「……しゃーねーな。俺達も描くか」
「だな」
「何でもいいって言われたしね」
各々スケッチブックを広げ,シャーペンを握る。
漫画に興味のない成宮はよく新聞や雑誌の片隅に載っている四コマ漫画を、神☆メイ以外に興味のない音来は神☆メイのライブを思い浮かべながら、描いた。
(四コマかー。マネージャーがトマトジュースにタバスコかけようとしてた話でも描くかな)
唯一、まともに漫画を知っている大城は実際にあったことを元に、オリジナルの漫画を描こうとした。
しかしシャーペンの先をスケッチブックに当てようとして、固まった。急に手が震え出したのだ。
(ちょっ! 止まって! 止まってよ、僕の右手ぇ!)
震えを止めようとすればするほど、震えは悪化し、線はブレる。
大城の心の叫びが右手に届いた頃には、四コマ漫画合戦は終わっていた。
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