34 / 97
第六話「腐女子会(BL注意)」
2,妹尾ちゃん……?
しおりを挟む
「誰なんだ、あいつらは」
成宮はドアの前で、呆然と立ち尽くす。
女子達はこちらには全く気づかず、論争を続けていた。
「……漫研の子達だよ」
大城も青ざめた顔で、美術室を覗き込む。その背中には阿久津がくっつき、大城から奪ったポテチを貪り食っていた。
「何でここにいるんだろう? 阿久津さん、何か知らない?」
「知らにゃーい。他のみんなについて来ただけだもーん」
「……俺も参戦してきていいか? 喧嘩の心得はある」
音来に至っては、あからさまに不快感を露わにし、指の関節をボキボキと鳴らす。どうやらリアルファイトをかましてくるつもりらしく、目が本気だった。
「我慢しろ、音来。向こうで神☆メイでも聞いて待ってな」
「……分かった」
成宮が制すと、音来は渋々廊下の隅に座り込み、ヘッドホンで曲を聴き始めた。幸い、曲を聴くうちに音来の殺気は和らいでいった。
「妹尾が来る前で良かったな。あんな光景、あいつには見せられない」
すると「何言ってんの?」と阿久津が美術室にいる女子の一人を指差した。
「せのーちゃんなら、あそこにいるよ?」
「え?」
「嘘ぉ?!」
成宮と大城は指差された人物に、目を凝らす。
そこには誰よりも熱く語る、妹尾の姿があった。
「皆さん、いい加減にして下さい! ソウハルだのコクシュだの……真の主人公であるファイブくんの存在を忘れてませんか?! いつクロの王道は、ファイブくん総受け一択です!」
「出た! 過激派ファイブ厨!」
「アンタこそ何言ってんのよ、花!」
「総受けはハルくんの担当でしょ?!」
「ファイブ総受けとか、もはやホラーだから!」
妹尾が主張したカップリングは王道とはかけ離れたものだったらしく、たちまち他のメンバーから袋叩きにされる。
それでも妹尾はめげずに、
「読者の発信力と財力を持ってすれば、どんなカプだって王道に出来るんですぅ! 王道は公式から供給されるものじゃない……我々が作り上げるものだぁぁぁ!」
と、過激的な発言を続けていた。
「……ずいぶん熱心だな」
「う、嘘だ! あの純真無垢な妹尾ちゃんが、いつクロヲタだったなんて……! しかも! マイナーを通り越して、もはや妄想の域に達してるファイブ総受け厨! 業が……業が深過ぎる……!」
大城には妹尾が話していた内容が理解出来ているらしく、絶望に打ちひしがれる。話について行けていない成宮にも、妹尾が意外な趣味の第一人者であることは、なんとなく察した。
だからと言って、妹尾のことを嫌うとか、ドン引きするとか、そういう気にはならなかった。問題は、何故彼女が漫画研究部の面々と共に、美術室にいるのかだった。
「妹尾」
「ひゃい?!」
成宮が声をかけると、妹尾は我に帰った様子で悲鳴を上げ、青ざめた。
他の女子生徒達も一瞬静まり返ったのち、「誰?」「花ちゃんの彼氏?」とヒソヒソと囁き合った。
「いくら美術部が自由な部活だからって、部外者を無断で部室に入れるのは困るな。せめて、俺達に一言言ってもらわないと」
「いや、あの、その……」
成宮が問い詰めると、妹尾は罰が悪そうに顔を背けた。
すると「アンタ、知らないの?」と他の女子生徒達が妹尾の代わりに答えた。
「今日から美術室は、うちら漫研の部室になったのよ?」
「……な、」
「……な、」
「……にゃ、」
成宮、大城、そして事情を知ってない方がおかしい阿久津は驚愕し、一斉に叫んだ。
「何ですとぉぉぉ?!」
成宮はドアの前で、呆然と立ち尽くす。
女子達はこちらには全く気づかず、論争を続けていた。
「……漫研の子達だよ」
大城も青ざめた顔で、美術室を覗き込む。その背中には阿久津がくっつき、大城から奪ったポテチを貪り食っていた。
「何でここにいるんだろう? 阿久津さん、何か知らない?」
「知らにゃーい。他のみんなについて来ただけだもーん」
「……俺も参戦してきていいか? 喧嘩の心得はある」
音来に至っては、あからさまに不快感を露わにし、指の関節をボキボキと鳴らす。どうやらリアルファイトをかましてくるつもりらしく、目が本気だった。
「我慢しろ、音来。向こうで神☆メイでも聞いて待ってな」
「……分かった」
成宮が制すと、音来は渋々廊下の隅に座り込み、ヘッドホンで曲を聴き始めた。幸い、曲を聴くうちに音来の殺気は和らいでいった。
「妹尾が来る前で良かったな。あんな光景、あいつには見せられない」
すると「何言ってんの?」と阿久津が美術室にいる女子の一人を指差した。
「せのーちゃんなら、あそこにいるよ?」
「え?」
「嘘ぉ?!」
成宮と大城は指差された人物に、目を凝らす。
そこには誰よりも熱く語る、妹尾の姿があった。
「皆さん、いい加減にして下さい! ソウハルだのコクシュだの……真の主人公であるファイブくんの存在を忘れてませんか?! いつクロの王道は、ファイブくん総受け一択です!」
「出た! 過激派ファイブ厨!」
「アンタこそ何言ってんのよ、花!」
「総受けはハルくんの担当でしょ?!」
「ファイブ総受けとか、もはやホラーだから!」
妹尾が主張したカップリングは王道とはかけ離れたものだったらしく、たちまち他のメンバーから袋叩きにされる。
それでも妹尾はめげずに、
「読者の発信力と財力を持ってすれば、どんなカプだって王道に出来るんですぅ! 王道は公式から供給されるものじゃない……我々が作り上げるものだぁぁぁ!」
と、過激的な発言を続けていた。
「……ずいぶん熱心だな」
「う、嘘だ! あの純真無垢な妹尾ちゃんが、いつクロヲタだったなんて……! しかも! マイナーを通り越して、もはや妄想の域に達してるファイブ総受け厨! 業が……業が深過ぎる……!」
大城には妹尾が話していた内容が理解出来ているらしく、絶望に打ちひしがれる。話について行けていない成宮にも、妹尾が意外な趣味の第一人者であることは、なんとなく察した。
だからと言って、妹尾のことを嫌うとか、ドン引きするとか、そういう気にはならなかった。問題は、何故彼女が漫画研究部の面々と共に、美術室にいるのかだった。
「妹尾」
「ひゃい?!」
成宮が声をかけると、妹尾は我に帰った様子で悲鳴を上げ、青ざめた。
他の女子生徒達も一瞬静まり返ったのち、「誰?」「花ちゃんの彼氏?」とヒソヒソと囁き合った。
「いくら美術部が自由な部活だからって、部外者を無断で部室に入れるのは困るな。せめて、俺達に一言言ってもらわないと」
「いや、あの、その……」
成宮が問い詰めると、妹尾は罰が悪そうに顔を背けた。
すると「アンタ、知らないの?」と他の女子生徒達が妹尾の代わりに答えた。
「今日から美術室は、うちら漫研の部室になったのよ?」
「……な、」
「……な、」
「……にゃ、」
成宮、大城、そして事情を知ってない方がおかしい阿久津は驚愕し、一斉に叫んだ。
「何ですとぉぉぉ?!」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
音無さんはハーフパンツ!
蓮水千夜
恋愛
俺は今日も音無さんの性別がわからない──。
美術部に所属している高校一年生の水守は、スランプに陥っていた。
そんな水守の前に現れたのは、性別不明なとても美しい人だった──。
オットマンの上で
刺客慧
ライト文芸
【1話完結型です。どのエピソードから見ても大丈夫です。】
ソファーも使わせてもらえないぬいぐるみどもの日常と水面下での生存競争を描いた作品。
※所々、下ネタや、実在の人物と場所を示す内容、読者を不快にさせるかもしれない表現等がありますのでフィクションと十分ご留意したうえでご覧になってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる