美術部俺達

緋色刹那

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第六話「腐女子会(BL注意)」

2,妹尾ちゃん……?

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「誰なんだ、あいつらは」
 成宮はドアの前で、呆然と立ち尽くす。
 女子達はこちらには全く気づかず、論争を続けていた。
「……漫研の子達だよ」
 大城も青ざめた顔で、美術室を覗き込む。その背中には阿久津がくっつき、大城から奪ったポテチを貪り食っていた。
「何でここにいるんだろう? 阿久津さん、何か知らない?」
「知らにゃーい。他のみんなについて来ただけだもーん」
「……俺も参戦してきていいか? 喧嘩の心得はある」
 音来に至っては、あからさまに不快感を露わにし、指の関節をボキボキと鳴らす。どうやらリアルファイトをかましてくるつもりらしく、目が本気だった。
「我慢しろ、音来。向こうで神☆メイでも聞いて待ってな」
「……分かった」
 成宮が制すと、音来は渋々廊下の隅に座り込み、ヘッドホンで曲を聴き始めた。幸い、曲を聴くうちに音来の殺気は和らいでいった。
「妹尾が来る前で良かったな。あんな光景、あいつには見せられない」
 すると「何言ってんの?」と阿久津が美術室にいる女子の一人を指差した。
「せのーちゃんなら、あそこにいるよ?」
「え?」
「嘘ぉ?!」
 成宮と大城は指差された人物に、目を凝らす。
 そこには誰よりも熱く語る、妹尾の姿があった。
「皆さん、いい加減にして下さい! ソウハルだのコクシュだの……真の主人公であるファイブくんの存在を忘れてませんか?! いつクロの王道は、ファイブくん総受け一択です!」
「出た! 過激派ファイブ厨!」
「アンタこそ何言ってんのよ、花!」
「総受けはハルくんの担当でしょ?!」
「ファイブ総受けとか、もはやホラーだから!」
 妹尾が主張したカップリングは王道とはかけ離れたものだったらしく、たちまち他のメンバーから袋叩きにされる。
 それでも妹尾はめげずに、
「読者の発信力と財力を持ってすれば、どんなカプだって王道に出来るんですぅ! 王道は公式から供給されるものじゃない……我々が作り上げるものだぁぁぁ!」
 と、過激的な発言を続けていた。
「……ずいぶん熱心だな」
「う、嘘だ! あの純真無垢な妹尾ちゃんが、いつクロヲタだったなんて……! しかも! マイナーを通り越して、もはや妄想の域に達してるファイブ総受け厨! 業が……業が深過ぎる……!」
 大城には妹尾が話していた内容が理解出来ているらしく、絶望に打ちひしがれる。話について行けていない成宮にも、妹尾が意外な趣味の第一人者であることは、なんとなく察した。
 だからと言って、妹尾のことを嫌うとか、ドン引きするとか、そういう気にはならなかった。問題は、何故彼女が漫画研究部の面々と共に、美術室にいるのかだった。
「妹尾」
「ひゃい?!」
 成宮が声をかけると、妹尾は我に帰った様子で悲鳴を上げ、青ざめた。
 他の女子生徒達も一瞬静まり返ったのち、「誰?」「花ちゃんの彼氏?」とヒソヒソと囁き合った。
「いくら美術部が自由な部活だからって、部外者を無断で部室に入れるのは困るな。せめて、俺達に一言言ってもらわないと」
「いや、あの、その……」
 成宮が問い詰めると、妹尾は罰が悪そうに顔を背けた。
 すると「アンタ、知らないの?」と他の女子生徒達が妹尾の代わりに答えた。
「今日から美術室は、うちら漫研の部室になったのよ?」
「……な、」
「……な、」
「……にゃ、」
 成宮、大城、そして事情を知ってない方がおかしい阿久津は驚愕し、一斉に叫んだ。
「何ですとぉぉぉ?!」
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