美術部俺達

緋色刹那

文字の大きさ
上 下
1 / 97

入部した理由:成宮創介の場合(1年前)

しおりを挟む
「ねぇ、君! 僕と一緒に美術部に入らない?」
 入学式が終わってすぐ、成宮なるみやは太めの男子に声をかけられた。成宮と同じ新入生だった。
「俺、絵を描くのは苦手なんだ」
 成宮は顔をしかめ、断った。絵を描くことにはあまりいい思い出がなかった。
 すると太めの男子は「大丈夫!」と親指を立てた。
「うちの高校の美術部はほぼレクリエーション部と化してるから、絵を描くのは強制じゃないよ! 賞とか文化祭とかにも参加しないから、描く必要もないしね!」
「レクリエーション部……それなら楽しめそうだな。分かった、俺も美術部に入るよ」
 レクリエーション、と聞いて成宮は考えをガラリと変えた。絵を描くことは苦手だったが、新しい遊びを考えたり、既存の遊びと遊びを掛け合わせるのは好きだった。
 成宮が美術部に入ると聞き、太めの男子は満面の笑みを浮かべた。
「ホント?! やった! 僕の名前は大城おおしろ太志たいし。君は?」
「俺は成宮創介そうすけだ。よろしくな」

 こうして、成宮は美術部への入部を決めた。
しおりを挟む

処理中です...