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第二話「ネコを放さないで!」
第二話「ネコを放さないで!」⑹
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撮影後、琴美ちゃんは「ありがとう!」と白日野下さんの手をにぎった。
「さっき、マネージャーから聞いたわ。白日野下さんが解決してくれたんですって? 私と同じ小学生なのに、すごいわ! 転校生探偵みたい! ねぇ、毎日現場に来て、私を守ってくれない?」
「遠慮するよ。学校があるからね」
う、うらやましい! ボクが先に解決していたら、毎日学校をサボっていたのに!
「だったら、放課後ならいいでしょ? 夕方の撮影もあるから!」
「放課後こそ抜けられないよ」
白日野下さんはボクのほうを見て言った。
「名探偵クラブで忙しいからね」
「へ?」
今、なんて?
「あら、白日野下さんも名探偵クラブの人だったの?」
「うん。彼らのアドバイザーをやっている。興味があるなら、花咲さんも入るかい?」
「入る、入る! 撮影がない日は、毎日学校に行くわ!」
な、なんと! 琴美ちゃんまで名探偵クラブに?!
ボクは琴美ちゃんに聞こえないよう、白日野下さんにコソッとたずねた。
「いいの? 推理対決はボクが負けたのに」
「私が勝ったら、名探偵クラブのアドバイザーにしてもらうつもりだったんだよ。君も同じことを考えていたとは、奇遇だね」
「いや、ボクはクラブに入ってもらえればそれで……そもそも、名探偵クラブのアドバイザーって何をするの?」
「君たちに推理のやり方を教えるんだよ。私ばかり解決していたら、名探偵クラブじゃなくて、白日野下真実子クラブになってしまうからね」
た、確かに。
白日野下さんばかり活躍していたら、ボクが名探偵になるという夢が叶わなくなってしまう。アドバイザーになってもらったほうが、ボクとしてもありがたい。
白日野下さんはニンマリと笑って、言った。
「手始めに依頼を達成してみたけど、どうだい? 私はクラブの一員にふさわしいかな?」
……忘れてた。ボクらは琴美ちゃんに学校に来てもらえるよう、説得しに来たんだった。
ボクはうなずいた。
「あぁ。さすが、名探偵クラブのアドバイザーだ」
◯
すると、部分的に聞いていた琴美ちゃんが、「いいじゃない、白日野下さんファンクラブ!」と、のんきなことを言った。
「転校生探偵ファンクラブみたいで、楽しそう!」
「よくないよ、琴美ちゃん。ボクは白日野下さんのファンじゃなくて、名探偵になりたくてクラブを作ったんだから。というか、その転校生探偵って、なに?」
「知らないの?!」
琴美ちゃんが今日いち驚いた。
そしてボクが琴美ちゃんを語るように、ボクに転校生探偵のことを語った。
「世界中の小学校で事件を解決している小学生よ! 転校生として学校にやって来るから、転校生探偵って呼ばれているの! 物知りで、何ヶ国語も話せるのよ! 海外じゃ、ドラマ化や映画化もされているわ! 私、どうしても見に行きたくて、わざわざ海外の撮影のスケジュールずらしてもらったんだから!」
「ファン、なの?」
「もちろん! 非公式国際ファンクラブにも入っているわ! あーあ、うちの学校に転校してこないかしらー? 太っちょの変なネコを連れた、細目の日本人の女の子らしいんだけど、まだ日本には来たことがないのよねー」
「……」
白日野下さんのほうを見る。白日野下さんはポチャムズといっしょに、そろりそろりと逃げようとしていた。
ボクは黙っていようと思ったけど、野呂がトドメをさした。
「それ、マミマミとポチャムズのことじゃないの? 世界中の学校を回ってたし、物知りで、なんか国語も話せるんでしょ?」
「ばッ、野呂!」
「そうなの?! 白日野下さん、どういうこと?!」
再び振り返ると、白日野下さんとポチャムズはいなくなっていた。遠くに、二人を乗せたタクシーが見えた。
あの慌てっぷり……白日野下さん、本当に転校生探偵なのか?
(第三話へつづく)
「さっき、マネージャーから聞いたわ。白日野下さんが解決してくれたんですって? 私と同じ小学生なのに、すごいわ! 転校生探偵みたい! ねぇ、毎日現場に来て、私を守ってくれない?」
「遠慮するよ。学校があるからね」
う、うらやましい! ボクが先に解決していたら、毎日学校をサボっていたのに!
「だったら、放課後ならいいでしょ? 夕方の撮影もあるから!」
「放課後こそ抜けられないよ」
白日野下さんはボクのほうを見て言った。
「名探偵クラブで忙しいからね」
「へ?」
今、なんて?
「あら、白日野下さんも名探偵クラブの人だったの?」
「うん。彼らのアドバイザーをやっている。興味があるなら、花咲さんも入るかい?」
「入る、入る! 撮影がない日は、毎日学校に行くわ!」
な、なんと! 琴美ちゃんまで名探偵クラブに?!
ボクは琴美ちゃんに聞こえないよう、白日野下さんにコソッとたずねた。
「いいの? 推理対決はボクが負けたのに」
「私が勝ったら、名探偵クラブのアドバイザーにしてもらうつもりだったんだよ。君も同じことを考えていたとは、奇遇だね」
「いや、ボクはクラブに入ってもらえればそれで……そもそも、名探偵クラブのアドバイザーって何をするの?」
「君たちに推理のやり方を教えるんだよ。私ばかり解決していたら、名探偵クラブじゃなくて、白日野下真実子クラブになってしまうからね」
た、確かに。
白日野下さんばかり活躍していたら、ボクが名探偵になるという夢が叶わなくなってしまう。アドバイザーになってもらったほうが、ボクとしてもありがたい。
白日野下さんはニンマリと笑って、言った。
「手始めに依頼を達成してみたけど、どうだい? 私はクラブの一員にふさわしいかな?」
……忘れてた。ボクらは琴美ちゃんに学校に来てもらえるよう、説得しに来たんだった。
ボクはうなずいた。
「あぁ。さすが、名探偵クラブのアドバイザーだ」
◯
すると、部分的に聞いていた琴美ちゃんが、「いいじゃない、白日野下さんファンクラブ!」と、のんきなことを言った。
「転校生探偵ファンクラブみたいで、楽しそう!」
「よくないよ、琴美ちゃん。ボクは白日野下さんのファンじゃなくて、名探偵になりたくてクラブを作ったんだから。というか、その転校生探偵って、なに?」
「知らないの?!」
琴美ちゃんが今日いち驚いた。
そしてボクが琴美ちゃんを語るように、ボクに転校生探偵のことを語った。
「世界中の小学校で事件を解決している小学生よ! 転校生として学校にやって来るから、転校生探偵って呼ばれているの! 物知りで、何ヶ国語も話せるのよ! 海外じゃ、ドラマ化や映画化もされているわ! 私、どうしても見に行きたくて、わざわざ海外の撮影のスケジュールずらしてもらったんだから!」
「ファン、なの?」
「もちろん! 非公式国際ファンクラブにも入っているわ! あーあ、うちの学校に転校してこないかしらー? 太っちょの変なネコを連れた、細目の日本人の女の子らしいんだけど、まだ日本には来たことがないのよねー」
「……」
白日野下さんのほうを見る。白日野下さんはポチャムズといっしょに、そろりそろりと逃げようとしていた。
ボクは黙っていようと思ったけど、野呂がトドメをさした。
「それ、マミマミとポチャムズのことじゃないの? 世界中の学校を回ってたし、物知りで、なんか国語も話せるんでしょ?」
「ばッ、野呂!」
「そうなの?! 白日野下さん、どういうこと?!」
再び振り返ると、白日野下さんとポチャムズはいなくなっていた。遠くに、二人を乗せたタクシーが見えた。
あの慌てっぷり……白日野下さん、本当に転校生探偵なのか?
(第三話へつづく)
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