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第二話「ネコを放さないで!」
第二話「ネコを放さないで!」⑷
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琴美が目を覚ますと、周囲は真っ暗だった。地面はフワフワで、土の臭いがする。
助けを求めようにも、手足を縛られ、口をテープでふさがれていた。
(ここ、どこ……?)
自分の身に何が起こったか、記憶を確かめる。
トイレを済ませ、手を洗っていると、後ろから薬を嗅がされた。鏡には怪人百面相のお面をかぶった人物が映っていた。
本物の怪人百面相ではない。お面は屋台で売っているようなプラスチックの偽物で、体は生身の人間だった。体格からして、男だろう。
それ以上は意識が保たず、眠ってしまった。
(誰か……誰か助けて!)
◯
「琴美ちゃん、どこー?!」
「返事してー!」
スタッフさん総出で、琴美ちゃんを探す。
琴美ちゃんが見つからないと、撮影ができない。
ボクと野呂も、大人が探しにくい草むらや車の下なんかを探した。
「あそこ、なんだろう?」
ふと、野呂がカラーコーンが置かれた地面を指差した。長方形を描くように、四つ置いてある。よく見ると、そこだけ地面の色が違っていた。
野呂がぽてぽてと近づこうとしたそのとき、「入っちゃダメ!」とスタッフさん(琴美ちゃんに差し入れしたスタッフさんとは違う人)がものすごい剣幕で走ってきて、野呂を止めた。
「あそこにはドッキリ番組で使う落とし穴が仕掛けてあるの。落ちたら危ないし、番組のスタッフさんに迷惑かけちゃうわ」
「そうなんだー。ごめんなさーい」
穴がふさがっているということは、琴美ちゃんはここに落ちたわけではなさそうだ。
ボクたちは一旦、琴美ちゃんの楽屋に戻った。白日野下さんとポチャムズは野呂がいれた紅茶を優雅に飲みながら、「美少女探偵ミコミコ」の台本を読んでいた。
「見つかったかい?」
「全然ダメ。白日野下さんは?」
白日野下さんはほほえむ。……マズい。何か分かったんだ。
琴美ちゃんを探す前、ボクは白日野下さんに推理対決を持ちかけた。先に琴美ちゃんを見つけたほうは、相手の言うことをなんでも一つ聞かなくちゃならない。
ボクは琴美ちゃんを見つけたら、白日野下さんに名探偵クラブに入ってもらおうと思っている。
この前の「資料集消失事件(とボクは勝手に呼んでいる)」は見事だった。白日野下さんが名探偵クラブにいたら、どんな依頼でも解決できる気がする。
だけど、ボクじゃ無理だったみたいだ。
琴美ちゃんを探していたスタッフの人たちが戻ってきた。これからどうするか、話し合うらしい。ボクたちもちゃっかり加わった。
「確認したところ、家にも事務所にも帰ってきていませんでした」
「迷子になったのかしら?」
「とりあえず警察は呼ぶとして、撮影はどうする?」
「ここを使えるのは今日しかない。最悪、脚本を変えて代役を立てるしか……」
すると、ここぞとばかりに、琴美ちゃんに差し入れしたスタッフの田中さんが口を挟んだ。
「それなら、二ノ宮ニコはどうですか? 今日ならスケジュールに空きがあるはずですよ」
「どうして君がそんなことを知っているんだね?」
「う、うちの番組に出てもらおうと思って、事務所に確認していたんです。断られましたけど……」
監督はしばらく悩み、「仕方ない」とうなずいた。
「二ノ宮ニコを呼んでくれ。到着するまでの間に脚本を書き直す」
ちょ、ちょっと待っ!
「待ってください」
ボクが止めるより先に、白日野下さんがスッと前に出た。ポチャムズもヌッと前に出る。
「琴美ちゃんの居場所が分かりました」
「なんだって?!」
場がどよめく。特に、田中さんは真っ青になっていた。
「いったいどこに?!」
「それは……その人が知っています」
白日野下さんが田中さんを指差す。遅れて、ポチャムズも前足を田中さんに向けた。
スタッフの人たちは一斉に、田中さんを振り返った。
「し、知らない! 私は何も……!」
「では、私が教えてあげましょう。琴美ちゃんは地面の下に埋められているのです」
「地面の下?!」
それって……生き埋めになってるってこと?!
助けを求めようにも、手足を縛られ、口をテープでふさがれていた。
(ここ、どこ……?)
自分の身に何が起こったか、記憶を確かめる。
トイレを済ませ、手を洗っていると、後ろから薬を嗅がされた。鏡には怪人百面相のお面をかぶった人物が映っていた。
本物の怪人百面相ではない。お面は屋台で売っているようなプラスチックの偽物で、体は生身の人間だった。体格からして、男だろう。
それ以上は意識が保たず、眠ってしまった。
(誰か……誰か助けて!)
◯
「琴美ちゃん、どこー?!」
「返事してー!」
スタッフさん総出で、琴美ちゃんを探す。
琴美ちゃんが見つからないと、撮影ができない。
ボクと野呂も、大人が探しにくい草むらや車の下なんかを探した。
「あそこ、なんだろう?」
ふと、野呂がカラーコーンが置かれた地面を指差した。長方形を描くように、四つ置いてある。よく見ると、そこだけ地面の色が違っていた。
野呂がぽてぽてと近づこうとしたそのとき、「入っちゃダメ!」とスタッフさん(琴美ちゃんに差し入れしたスタッフさんとは違う人)がものすごい剣幕で走ってきて、野呂を止めた。
「あそこにはドッキリ番組で使う落とし穴が仕掛けてあるの。落ちたら危ないし、番組のスタッフさんに迷惑かけちゃうわ」
「そうなんだー。ごめんなさーい」
穴がふさがっているということは、琴美ちゃんはここに落ちたわけではなさそうだ。
ボクたちは一旦、琴美ちゃんの楽屋に戻った。白日野下さんとポチャムズは野呂がいれた紅茶を優雅に飲みながら、「美少女探偵ミコミコ」の台本を読んでいた。
「見つかったかい?」
「全然ダメ。白日野下さんは?」
白日野下さんはほほえむ。……マズい。何か分かったんだ。
琴美ちゃんを探す前、ボクは白日野下さんに推理対決を持ちかけた。先に琴美ちゃんを見つけたほうは、相手の言うことをなんでも一つ聞かなくちゃならない。
ボクは琴美ちゃんを見つけたら、白日野下さんに名探偵クラブに入ってもらおうと思っている。
この前の「資料集消失事件(とボクは勝手に呼んでいる)」は見事だった。白日野下さんが名探偵クラブにいたら、どんな依頼でも解決できる気がする。
だけど、ボクじゃ無理だったみたいだ。
琴美ちゃんを探していたスタッフの人たちが戻ってきた。これからどうするか、話し合うらしい。ボクたちもちゃっかり加わった。
「確認したところ、家にも事務所にも帰ってきていませんでした」
「迷子になったのかしら?」
「とりあえず警察は呼ぶとして、撮影はどうする?」
「ここを使えるのは今日しかない。最悪、脚本を変えて代役を立てるしか……」
すると、ここぞとばかりに、琴美ちゃんに差し入れしたスタッフの田中さんが口を挟んだ。
「それなら、二ノ宮ニコはどうですか? 今日ならスケジュールに空きがあるはずですよ」
「どうして君がそんなことを知っているんだね?」
「う、うちの番組に出てもらおうと思って、事務所に確認していたんです。断られましたけど……」
監督はしばらく悩み、「仕方ない」とうなずいた。
「二ノ宮ニコを呼んでくれ。到着するまでの間に脚本を書き直す」
ちょ、ちょっと待っ!
「待ってください」
ボクが止めるより先に、白日野下さんがスッと前に出た。ポチャムズもヌッと前に出る。
「琴美ちゃんの居場所が分かりました」
「なんだって?!」
場がどよめく。特に、田中さんは真っ青になっていた。
「いったいどこに?!」
「それは……その人が知っています」
白日野下さんが田中さんを指差す。遅れて、ポチャムズも前足を田中さんに向けた。
スタッフの人たちは一斉に、田中さんを振り返った。
「し、知らない! 私は何も……!」
「では、私が教えてあげましょう。琴美ちゃんは地面の下に埋められているのです」
「地面の下?!」
それって……生き埋めになってるってこと?!
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