悪夢症候群

緋色刹那

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悪夢薔薇色 第五話『美崎の岬』

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 野々原が「Wild Rose」に来てから三年目、美崎はやっと彼女に客の髪を切る許可を出した。
「本当にいいんですか?!」
「えぇ。せいぜい頑張ってね」
 無邪気に喜ぶ野々原を見て、美崎はニヤリと笑った。
 美崎が野々原にあてがった客は、出禁寸前のやっかいな客ばかりだった。
 店員を見境なくナンパするチャラ男、仮面で素顔を隠しているゴスロリ女、大二病真っ盛りの全身青づくめ大学生、何かにつけて値切ろうとする二人組の女……美崎の邪魔も相まって、野々原はことごとく仕事を失敗した。最初のやる気は徐々に失せ、自信を無くしていった。
 二人組の女が野々原の高校時代のクラスメイトだったというのは想定外だったが、彼女達も野々原を嫌っており、大いに野々原の悪口で盛り上がった。

「じゃあ、また!」
「今度はカラーも頼んじゃおっかなー。もちろん、野々原の奢りで」
「ぜひ! 合コン、楽しんで来て下さいね!」
 美崎は終業時間ギリギリまでマイとフミとのおしゃべりを楽しみ、全ての仕事を野々原に押しつけて帰宅した。
 店のカートにハサミを置いてきたことに気づいたのは、家に着いて間もなくのことだった。
「最悪。野々原に持って来させようかしら?」
 とは言え、野々原に仕事道具を触られるのは嫌だった。
 美崎は仕方なく、「Wild Rose」に戻った。外は雨が降っていたので、お気に入りの黄色い薔薇柄の傘を使った。
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