169 / 227
悪夢薔薇色 第五話『美崎の岬』
2
しおりを挟む
野々原が「Wild Rose」に来てから三年目、美崎はやっと彼女に客の髪を切る許可を出した。
「本当にいいんですか?!」
「えぇ。せいぜい頑張ってね」
無邪気に喜ぶ野々原を見て、美崎はニヤリと笑った。
美崎が野々原にあてがった客は、出禁寸前のやっかいな客ばかりだった。
店員を見境なくナンパするチャラ男、仮面で素顔を隠しているゴスロリ女、大二病真っ盛りの全身青づくめ大学生、何かにつけて値切ろうとする二人組の女……美崎の邪魔も相まって、野々原はことごとく仕事を失敗した。最初のやる気は徐々に失せ、自信を無くしていった。
二人組の女が野々原の高校時代のクラスメイトだったというのは想定外だったが、彼女達も野々原を嫌っており、大いに野々原の悪口で盛り上がった。
「じゃあ、また!」
「今度はカラーも頼んじゃおっかなー。もちろん、野々原の奢りで」
「ぜひ! 合コン、楽しんで来て下さいね!」
美崎は終業時間ギリギリまでマイとフミとのおしゃべりを楽しみ、全ての仕事を野々原に押しつけて帰宅した。
店のカートにハサミを置いてきたことに気づいたのは、家に着いて間もなくのことだった。
「最悪。野々原に持って来させようかしら?」
とは言え、野々原に仕事道具を触られるのは嫌だった。
美崎は仕方なく、「Wild Rose」に戻った。外は雨が降っていたので、お気に入りの黄色い薔薇柄の傘を使った。
「本当にいいんですか?!」
「えぇ。せいぜい頑張ってね」
無邪気に喜ぶ野々原を見て、美崎はニヤリと笑った。
美崎が野々原にあてがった客は、出禁寸前のやっかいな客ばかりだった。
店員を見境なくナンパするチャラ男、仮面で素顔を隠しているゴスロリ女、大二病真っ盛りの全身青づくめ大学生、何かにつけて値切ろうとする二人組の女……美崎の邪魔も相まって、野々原はことごとく仕事を失敗した。最初のやる気は徐々に失せ、自信を無くしていった。
二人組の女が野々原の高校時代のクラスメイトだったというのは想定外だったが、彼女達も野々原を嫌っており、大いに野々原の悪口で盛り上がった。
「じゃあ、また!」
「今度はカラーも頼んじゃおっかなー。もちろん、野々原の奢りで」
「ぜひ! 合コン、楽しんで来て下さいね!」
美崎は終業時間ギリギリまでマイとフミとのおしゃべりを楽しみ、全ての仕事を野々原に押しつけて帰宅した。
店のカートにハサミを置いてきたことに気づいたのは、家に着いて間もなくのことだった。
「最悪。野々原に持って来させようかしら?」
とは言え、野々原に仕事道具を触られるのは嫌だった。
美崎は仕方なく、「Wild Rose」に戻った。外は雨が降っていたので、お気に入りの黄色い薔薇柄の傘を使った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
音のしない部屋〜怪談・不思議系短編集
ねぎ(ポン酢)
ホラー
短編で書いたものの中で、怪談・不思議・ホラー系のものをまとめました。基本的にはゾッとする様なホラーではなく、不思議系の話です。(たまに増えます)※怖いかなと思うものには「※」をつけてあります
(『stand.fm』にて、AI朗読【自作Net小説朗読CAFE】をやっております。AI朗読を作って欲しい短編がありましたらご連絡下さい。)
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
【★◆毎朝6時30分更新◆★】この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
逢魔ヶ刻の迷い子5 ~鬼哭の古寺—封印の綻び
naomikoryo
ホラー
「封印は、まだ完全ではない——」
高校2年生になった陽介たち6人。
京都での修学旅行中、彼らは再び“あの寺”へと足を踏み入れることになる。
鬼の封印を終えたはずの鬼哭の古寺——だが、そこで彼らを待っていたのは、新たな異変だった。
鬼の消滅とともに生まれた“封印の綻び”。
それは、長きに渡る怨念と、かつて封印された者たちの影を呼び覚ましてしまった。
彼らは本当に封印を完成させたのか? それとも、新たな脅威を解き放ってしまったのか?
再び試される彼らの絆。
消えた少年・白銀蒼真が残した“最後の願い”とは?
そして、6人が最後に選ぶ道とは——?
過去と未来、現世と異界が交錯する青春ホラー・ミステリー。
『鬼哭の古寺—封印の綻び』——それは、終わりなき封印の物語。
孤悲纏綿──こひてんめん
クイン舎
ホラー
ある日、一人の男の元に友人から日記帳が届く。その日記帳は、先ごろ亡くなったある女性高校教師のもので、そこには約四十年前に彼女が経験した出来事が事細かく書き記されていた。たった二日間の出来事が、その後の彼女の人生を大きく変えることになった経緯が……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる