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悪夢薔薇色 第五話『美崎の岬』
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美容室「Wild Rose」では、今日も美崎の指導が飛び交っていた。
「野々原さん、まだ掃除終わってないの?! 次のお客様、来ちゃうよ!」
「す、すみません!」
後輩の美容師、野々原が床に散らばった髪を慌ててモップでかき集める。
手つきがおぼつかなく、いくらモップを動かしても髪は集まりきらない。やっと掃除し終えた頃には、次のお客が来る。
美崎が指示しないと動けない、仕事が遅い、常に怯えた目でこちらの顔色をうかがう、そのくせ全く辞める気配がない……美崎は野々原の全てが嫌いだった。
「ハァ、何で店長はあんな鈍臭い子を雇ってるのかしら?」
野々原が店を辞めるのは、いつだろう?
野々原が辞めたら、どんなに気分が良いだろう?
野々原がいなくなった後の未来を想像することだけが、美崎にとって唯一の癒しだった。
美崎は「Wild Rose」オープン当初からの従業員だった。
店長とは同じ専門学校を卒業した先輩後輩で、密かに想いを寄せていた。
「二人でお店を盛り上げて行こう」
オープン記念の打ち上げで店長からかけられた言葉は、今でも忘れられない。
だからこそ、美崎は店長に気に入られて雇われた後輩が嫌いだった。
いつか自分の立場が危ぶまれるのではないか、店長と付き合うのではないかと恐れ、徹底的にいたぶった。店長は美崎の所業に薄々勘づいている様子だったが、何も言わなかった。そのことが、余計に美崎を暴走させた。
「店長はあの子達よりも私が大事なんだわ! だから注意しないのよ! 店長も私を愛してくれているに違いない!」
実際はそれとなく注意していたのだが、美崎は全く気づいていなかった。
「野々原さん、まだ掃除終わってないの?! 次のお客様、来ちゃうよ!」
「す、すみません!」
後輩の美容師、野々原が床に散らばった髪を慌ててモップでかき集める。
手つきがおぼつかなく、いくらモップを動かしても髪は集まりきらない。やっと掃除し終えた頃には、次のお客が来る。
美崎が指示しないと動けない、仕事が遅い、常に怯えた目でこちらの顔色をうかがう、そのくせ全く辞める気配がない……美崎は野々原の全てが嫌いだった。
「ハァ、何で店長はあんな鈍臭い子を雇ってるのかしら?」
野々原が店を辞めるのは、いつだろう?
野々原が辞めたら、どんなに気分が良いだろう?
野々原がいなくなった後の未来を想像することだけが、美崎にとって唯一の癒しだった。
美崎は「Wild Rose」オープン当初からの従業員だった。
店長とは同じ専門学校を卒業した先輩後輩で、密かに想いを寄せていた。
「二人でお店を盛り上げて行こう」
オープン記念の打ち上げで店長からかけられた言葉は、今でも忘れられない。
だからこそ、美崎は店長に気に入られて雇われた後輩が嫌いだった。
いつか自分の立場が危ぶまれるのではないか、店長と付き合うのではないかと恐れ、徹底的にいたぶった。店長は美崎の所業に薄々勘づいている様子だったが、何も言わなかった。そのことが、余計に美崎を暴走させた。
「店長はあの子達よりも私が大事なんだわ! だから注意しないのよ! 店長も私を愛してくれているに違いない!」
実際はそれとなく注意していたのだが、美崎は全く気づいていなかった。
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