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悪夢薔薇色 第四話『漂白したい過去』
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「……」
夢花はうつむき、黙りこくる。
やがて瞳を潤ませ、ぽろぽろと涙をこぼした。
「そんな噂を流されていたなんて……ひどい。私、援助交際なんてしてないのに! 彼氏だって、今までいたことないのに! ずっと一人で、頑張ってきたのに……!」
両手で顔を覆い、泣き出す。
それを見た池田は慌てて彼女を慰めた。
「ごめん、夜宵さん! 君を責めるつもりはなかったんだ! ただ、本当のことを知りたくてつい……」
「本当のことって何?! 私が嘘をついているとでも言いたいの?!」
夢花は人目を気にせず、池田に詰め寄る。
他の宴席からも視線を向けられ、合コンの参加者達は居心地悪そうに顔を背けた。
「ごめん、もう言わないよ。他の人がなんと言おうと、俺は夜宵さんを信じる」
「本当?」
「あぁ。昔も今も、俺は夜宵さんが好きだから」
「嬉しい!」
夢花はパッと花が咲いたような笑顔を見せ、池田に抱きついた。
マイとフミの企ては失敗どころか、かえって逆効果だったらしい。誰がどう見ても、池田と夢花はカップル成立してしまっていた。
「フミ! アンタが不確かな噂を持ち出すから失敗したのよ!」
「違うわ、マイ! アンタが噂を誇張しようって言ったせいよ!」
マイとフミは互いを責め、静かにいがみ合う。
その様子を見て、夢花は密かにニヤリと笑みを浮かべていた。
(フフッ、相変わらず馬鹿な女共。未だに私の正体に気づいていないなんて、鈍感すぎるでしょ。あの時と同じように、今度は池田君をかっさらってやるんだから)
「あのぅ」
夢花が勝利を確信したその時、合コンに参加していた女性の一人がおずおずと手を挙げた。
「皆さん、夢花ちゃんとお知り合いなんですか?」
「そうだけど、何?」
「まさかアンタも同級生だって言い張るわけ?」
マイとフミは不機嫌そうに女性を睨む。
女性は「えぇ、まぁ」と苦笑いした。
「と言っても、私はみなさんと違って中学の同級生だったんですけど……今でもたまに会うことがありまして」
言うや否や、女性は一枚の画像をスマホに表示し、マイとフミに見せた。
二人は面倒くさそうにスマホの画面に目をやる。しかし画像を目にした途端、絶句した。
「二人ともどうしたんだい?」
池田もスマホの写真を見る。その瞬間、マイとフミ同様、言葉を失った。
「どうしたの? 池田く……」
池田の胸に顔を埋めていた夢花も異変を察し、スマホの画像を見る。途端にギョッと目を見開いた。
そこには夢花と女性が東京の観光名所を巡る様子が映し出されていた。女性の容姿からして、ごく最近に撮られたものだ。
問題は、写真の夢花と今ここにいる夢花が、全くの別人であることだった。写真の夢花は自然に成長した顔立ちをしているが、合コンに参加している方の夢花は不自然な顔立ちをしている。まるで夢花に似せて作ったかのようだった。
「ッ! そのスマホ、渡しなさいッ!」
夢花は女性からスマホを奪おうと、反射的に手を伸ばす。しかしすんでのところで、池田が夢花を羽交い締めにした。
鬼の形相と迫る夢花に、女性は「ひッ」と悲鳴を上げながらも、毅然と彼女に問い詰めた。
「あ、貴方誰ですか?! 勝手に夢花ちゃんの名前を名乗らないで下さい! 身分証を確認すれば、すぐにバレるんですからね!」
マイとフミは夢花が動けない隙に、彼女のバッグを漁った。
財布の中から運転免許証を探し当て、名前を確認する。そこには二人がよく知る「会澤エマ」の名前があった。
夢花はうつむき、黙りこくる。
やがて瞳を潤ませ、ぽろぽろと涙をこぼした。
「そんな噂を流されていたなんて……ひどい。私、援助交際なんてしてないのに! 彼氏だって、今までいたことないのに! ずっと一人で、頑張ってきたのに……!」
両手で顔を覆い、泣き出す。
それを見た池田は慌てて彼女を慰めた。
「ごめん、夜宵さん! 君を責めるつもりはなかったんだ! ただ、本当のことを知りたくてつい……」
「本当のことって何?! 私が嘘をついているとでも言いたいの?!」
夢花は人目を気にせず、池田に詰め寄る。
他の宴席からも視線を向けられ、合コンの参加者達は居心地悪そうに顔を背けた。
「ごめん、もう言わないよ。他の人がなんと言おうと、俺は夜宵さんを信じる」
「本当?」
「あぁ。昔も今も、俺は夜宵さんが好きだから」
「嬉しい!」
夢花はパッと花が咲いたような笑顔を見せ、池田に抱きついた。
マイとフミの企ては失敗どころか、かえって逆効果だったらしい。誰がどう見ても、池田と夢花はカップル成立してしまっていた。
「フミ! アンタが不確かな噂を持ち出すから失敗したのよ!」
「違うわ、マイ! アンタが噂を誇張しようって言ったせいよ!」
マイとフミは互いを責め、静かにいがみ合う。
その様子を見て、夢花は密かにニヤリと笑みを浮かべていた。
(フフッ、相変わらず馬鹿な女共。未だに私の正体に気づいていないなんて、鈍感すぎるでしょ。あの時と同じように、今度は池田君をかっさらってやるんだから)
「あのぅ」
夢花が勝利を確信したその時、合コンに参加していた女性の一人がおずおずと手を挙げた。
「皆さん、夢花ちゃんとお知り合いなんですか?」
「そうだけど、何?」
「まさかアンタも同級生だって言い張るわけ?」
マイとフミは不機嫌そうに女性を睨む。
女性は「えぇ、まぁ」と苦笑いした。
「と言っても、私はみなさんと違って中学の同級生だったんですけど……今でもたまに会うことがありまして」
言うや否や、女性は一枚の画像をスマホに表示し、マイとフミに見せた。
二人は面倒くさそうにスマホの画面に目をやる。しかし画像を目にした途端、絶句した。
「二人ともどうしたんだい?」
池田もスマホの写真を見る。その瞬間、マイとフミ同様、言葉を失った。
「どうしたの? 池田く……」
池田の胸に顔を埋めていた夢花も異変を察し、スマホの画像を見る。途端にギョッと目を見開いた。
そこには夢花と女性が東京の観光名所を巡る様子が映し出されていた。女性の容姿からして、ごく最近に撮られたものだ。
問題は、写真の夢花と今ここにいる夢花が、全くの別人であることだった。写真の夢花は自然に成長した顔立ちをしているが、合コンに参加している方の夢花は不自然な顔立ちをしている。まるで夢花に似せて作ったかのようだった。
「ッ! そのスマホ、渡しなさいッ!」
夢花は女性からスマホを奪おうと、反射的に手を伸ばす。しかしすんでのところで、池田が夢花を羽交い締めにした。
鬼の形相と迫る夢花に、女性は「ひッ」と悲鳴を上げながらも、毅然と彼女に問い詰めた。
「あ、貴方誰ですか?! 勝手に夢花ちゃんの名前を名乗らないで下さい! 身分証を確認すれば、すぐにバレるんですからね!」
マイとフミは夢花が動けない隙に、彼女のバッグを漁った。
財布の中から運転免許証を探し当て、名前を確認する。そこには二人がよく知る「会澤エマ」の名前があった。
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