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悪夢薔薇色 第三話『こだわりの青』
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「お、青海泥君じゃーん。どしたの?」
そこへ仲のいいクラスメイトが近づいてきた。昼間、青海泥を頼ってきたクラスメイトだ。
「実はさぁ、」
青海泥は今起こった奇跡を話そうとした。
それより先に、クラスメイトの本音が聞こえてきた。
「お、(パシリの)青海泥君(笑)じゃーん。どしたの(そのクソダサいボディーペイント。オシャレのつもり)?」
「……え?」
今度こそ、ショックで言葉を失った。
全身から嫌な汗が噴き出す。その汗すらも、青かった。
「いや、え? じゃなくてさ。めっちゃ青いからビックリしたっつーの。なんかあったの? ハハッ(またモデルかアーティストからパクったんだろうなー。コピペ野郎が)。もしかしてイメチェン?」
「え? え?」
「ちょ(キモッ)、めっちゃキョドってるし(キモッ)。それで講義受けたら、絶対目立つじゃん。人気者になれるかもよ?」
クラスメイトは下品な笑みを浮かべ、青海泥を攻撃する。
先程囲まれた学生達とは比べ物にならないほど、強い悪意がこもっていた。青海泥を単なる暇つぶしの道具としか思っていない口ぶり。なぜ、今まで彼の正体に気づけなかったのか……己の頭脳を過信している青海泥には分からなかった。
「お……お前もアイツらと一緒だったんだな! 俺のこと、本当は馬鹿にしてたんだろ!」
「は? (今さら)何言ってんの? 青海泥君は俺の親友なんだから、そんな(都合の悪い)こと(わざわざ)言うわけないじゃん」
「ひ、酷い……お前なんか、俺のクラスメイトじゃねぇ! この嘘つき野郎! お前がそんな人間か、知ってるんだぞ! 本当のこと言えよバーカ!」
青海泥は青い涙を流しながら、その場から逃げ出そうとした。
が、その前に背後からクラスメイトに肩をつかまれた。振り向くと、彼は今まで見たことがないほど冷めた目で青海泥を見下していた。
「今日の約束、破るなよ? 時間通り来なかったら、俺のダチの怖ーいお兄さん達がお前の家に押しかけるからな。お前、親と一緒に住んでんだろ? 俺達みたいなのとつるんでるって知られたら、勘当されるかもな。親も家も大学も金も車も一変になくしたら、さぞ大変だろうなぁ」
「ひ……ひぃ……」
本性を現したクラスメイトの言葉には、嘘も偽りもなかった。
元々青かった青海泥の顔は、クラスメイトに対する恐怖でさらに青ざめた。
その後、青海泥は「毎日ボディーペイントをして来る迷惑な生徒」として、たびたび処罰を受けた。「これは塗ってるんじゃない」と主張したが、日頃からガラの悪いクラスメイトとつるんでいたせいで信じてもらえなかった。
遂には退学させられ、仕方なく別の私立大学に編入した。新しい大学は服装が自由だったため、青海泥が青くても受け入れてもらえた。だが、それゆえに個性的な私服を着て来る学生が多く、全身が青いだけの青海泥は孤立した。
前の大学で仲が良かったクラスメイトには今も昼夜問わず呼び出され、都合のいいパシリとして使われている。時には授業を抜け出させられる日もあり、今年の青海泥の進級は絶望的だった。
「青海泥くーん。金ぇ」
「い、今持って行く!」
クラスメイトから電話が来ると、急いで教室を飛び出す。
彼の名前は、未だに教えてもらっていない。
悪夢薔薇色 第三話『こだわりの青』終わり
そこへ仲のいいクラスメイトが近づいてきた。昼間、青海泥を頼ってきたクラスメイトだ。
「実はさぁ、」
青海泥は今起こった奇跡を話そうとした。
それより先に、クラスメイトの本音が聞こえてきた。
「お、(パシリの)青海泥君(笑)じゃーん。どしたの(そのクソダサいボディーペイント。オシャレのつもり)?」
「……え?」
今度こそ、ショックで言葉を失った。
全身から嫌な汗が噴き出す。その汗すらも、青かった。
「いや、え? じゃなくてさ。めっちゃ青いからビックリしたっつーの。なんかあったの? ハハッ(またモデルかアーティストからパクったんだろうなー。コピペ野郎が)。もしかしてイメチェン?」
「え? え?」
「ちょ(キモッ)、めっちゃキョドってるし(キモッ)。それで講義受けたら、絶対目立つじゃん。人気者になれるかもよ?」
クラスメイトは下品な笑みを浮かべ、青海泥を攻撃する。
先程囲まれた学生達とは比べ物にならないほど、強い悪意がこもっていた。青海泥を単なる暇つぶしの道具としか思っていない口ぶり。なぜ、今まで彼の正体に気づけなかったのか……己の頭脳を過信している青海泥には分からなかった。
「お……お前もアイツらと一緒だったんだな! 俺のこと、本当は馬鹿にしてたんだろ!」
「は? (今さら)何言ってんの? 青海泥君は俺の親友なんだから、そんな(都合の悪い)こと(わざわざ)言うわけないじゃん」
「ひ、酷い……お前なんか、俺のクラスメイトじゃねぇ! この嘘つき野郎! お前がそんな人間か、知ってるんだぞ! 本当のこと言えよバーカ!」
青海泥は青い涙を流しながら、その場から逃げ出そうとした。
が、その前に背後からクラスメイトに肩をつかまれた。振り向くと、彼は今まで見たことがないほど冷めた目で青海泥を見下していた。
「今日の約束、破るなよ? 時間通り来なかったら、俺のダチの怖ーいお兄さん達がお前の家に押しかけるからな。お前、親と一緒に住んでんだろ? 俺達みたいなのとつるんでるって知られたら、勘当されるかもな。親も家も大学も金も車も一変になくしたら、さぞ大変だろうなぁ」
「ひ……ひぃ……」
本性を現したクラスメイトの言葉には、嘘も偽りもなかった。
元々青かった青海泥の顔は、クラスメイトに対する恐怖でさらに青ざめた。
その後、青海泥は「毎日ボディーペイントをして来る迷惑な生徒」として、たびたび処罰を受けた。「これは塗ってるんじゃない」と主張したが、日頃からガラの悪いクラスメイトとつるんでいたせいで信じてもらえなかった。
遂には退学させられ、仕方なく別の私立大学に編入した。新しい大学は服装が自由だったため、青海泥が青くても受け入れてもらえた。だが、それゆえに個性的な私服を着て来る学生が多く、全身が青いだけの青海泥は孤立した。
前の大学で仲が良かったクラスメイトには今も昼夜問わず呼び出され、都合のいいパシリとして使われている。時には授業を抜け出させられる日もあり、今年の青海泥の進級は絶望的だった。
「青海泥くーん。金ぇ」
「い、今持って行く!」
クラスメイトから電話が来ると、急いで教室を飛び出す。
彼の名前は、未だに教えてもらっていない。
悪夢薔薇色 第三話『こだわりの青』終わり
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