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悪夢極彩色 第二話『悪化するラブレター』
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翌週、再び昼中夢巫女からファンレターが届いた。
「今度は何を送ってきたかしらね」
夢花は学校から帰ってくると、さっそく封筒を開いた。
便せんと一緒に出てきたのは、先週送ってきた写真の女性と歩夢が二人で夜景をバックにディナーを楽しむ様子を撮った写真だった。歩夢の顔を当てはめただけの合成写真だったが、夢花の機嫌を損ねるには十分効果を発揮した。
「……はァ?」
写真の女性に対し、思わず殺意を向ける。
しかしその前に、後ろから歩夢に両手で目隠しされた。
「夢花ちゃん、落ち着いて。その人が本当にファンレターを書いている相手の写真かは分からないだろう?」
「いいよ、そんなの! とにかく私はこの女が憎いの! 私だって、お兄さんと二人っきりで夜景をバックにディナーなんてしたことないのに!」
なおも怒り狂う夢花の耳元に、歩夢はささやいた。
「じゃあ、今度行こっか? 上京祝いに、夜景が綺麗なレストランでディナー」
途端に夢花はピタッと止まり、大人しくなる。
歩夢が手を退けても、もう女性に殺意は向けなかった。
「……写真も撮ってよ」
「もちろん」
肝心のファンレターの内容は、歩夢との架空の交際話だった。
夢巫女の頭の中では、歩夢は彼女の告白を受け入れ、文通のみの遠距離恋愛をしていることになっているらしい。「私が前に観たいって言ってた映画のペアチケットが当たったから送るね」と、実在する恋愛映画のチケットまで同封されていた。当然、返信などしていない。
手紙も封筒も合成写真も、すぐさま破棄した。ただチケットだけは「せっかくもらったから」と、夢花とディナーへ行く前に使わせてもらった。
「今度は何を送ってきたかしらね」
夢花は学校から帰ってくると、さっそく封筒を開いた。
便せんと一緒に出てきたのは、先週送ってきた写真の女性と歩夢が二人で夜景をバックにディナーを楽しむ様子を撮った写真だった。歩夢の顔を当てはめただけの合成写真だったが、夢花の機嫌を損ねるには十分効果を発揮した。
「……はァ?」
写真の女性に対し、思わず殺意を向ける。
しかしその前に、後ろから歩夢に両手で目隠しされた。
「夢花ちゃん、落ち着いて。その人が本当にファンレターを書いている相手の写真かは分からないだろう?」
「いいよ、そんなの! とにかく私はこの女が憎いの! 私だって、お兄さんと二人っきりで夜景をバックにディナーなんてしたことないのに!」
なおも怒り狂う夢花の耳元に、歩夢はささやいた。
「じゃあ、今度行こっか? 上京祝いに、夜景が綺麗なレストランでディナー」
途端に夢花はピタッと止まり、大人しくなる。
歩夢が手を退けても、もう女性に殺意は向けなかった。
「……写真も撮ってよ」
「もちろん」
肝心のファンレターの内容は、歩夢との架空の交際話だった。
夢巫女の頭の中では、歩夢は彼女の告白を受け入れ、文通のみの遠距離恋愛をしていることになっているらしい。「私が前に観たいって言ってた映画のペアチケットが当たったから送るね」と、実在する恋愛映画のチケットまで同封されていた。当然、返信などしていない。
手紙も封筒も合成写真も、すぐさま破棄した。ただチケットだけは「せっかくもらったから」と、夢花とディナーへ行く前に使わせてもらった。
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