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悪夢極彩色 第二話『悪化するラブレター』
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「ただいまー」
「おかえり、夢花ちゃん。ご飯、もうすぐ出来るからね」
この春、歩夢と夢花は上京し、都内から程近くにある一軒家に二人で住んでいた。
夢花はキッチンから漂ってくるカレーの匂いを嗅ぎつつ、編集部から送られてきた歩夢宛のファンレターの束に手を伸ばす。どれも未開封のまま、ダンボールの箱に詰められている。これらの整理を毎日学校から帰ってきたらするのが、夢花の日課だった。
歩夢が自らの経験を元に書いた「悪夢使い」でデビューしてから半年。その作風のせいか、ファンレターの中には少々"特殊な"内容のものも混じっていた。
歩夢に異性として好意を持つ者、批評家を自称する者、歩夢を教祖のように崇める者、自らも悪夢使いであると自称する者などなど……そういったタチの悪いファンを"歩夢にとって都合のいいファン"に矯正するため、忙しい歩夢に代わって夢花がファンレターの精査を担当していた。
「うげっ、ハートがいっぱいの便せん! お兄さんの作品じゃなくて、お兄さんのことばっか褒めてる! しかも自分の連絡先と顔写真も一緒に入ってるんだけど! これ、絶対加工したやつじゃん! 頭ゆがんでるし、異常に顔テカテカしてるし、目キモいし!」
あからさまな"ラブレター"に、夢花は世界一臭い缶詰を食べたような顔をする。
歩夢のペンネーム「昼中歩夢」と同じ名字の「昼中夢巫女」という女性から届いたファンレターだった。
「どれどれ……」
歩夢も興味本位で覗き込む。
とっさに夢花はファンレターを後ろ手に隠した。
「お兄さんは読んじゃダメ! 目が腐っちゃう!」
「はは、人の目玉は手紙を読んだくらいじゃ腐らないよ」
結局、昼中夢巫女からのファンレターはファンレターの域こそ超えていたものの、「矯正するほどではない」と判断し、様子を見ることにした。
「おかえり、夢花ちゃん。ご飯、もうすぐ出来るからね」
この春、歩夢と夢花は上京し、都内から程近くにある一軒家に二人で住んでいた。
夢花はキッチンから漂ってくるカレーの匂いを嗅ぎつつ、編集部から送られてきた歩夢宛のファンレターの束に手を伸ばす。どれも未開封のまま、ダンボールの箱に詰められている。これらの整理を毎日学校から帰ってきたらするのが、夢花の日課だった。
歩夢が自らの経験を元に書いた「悪夢使い」でデビューしてから半年。その作風のせいか、ファンレターの中には少々"特殊な"内容のものも混じっていた。
歩夢に異性として好意を持つ者、批評家を自称する者、歩夢を教祖のように崇める者、自らも悪夢使いであると自称する者などなど……そういったタチの悪いファンを"歩夢にとって都合のいいファン"に矯正するため、忙しい歩夢に代わって夢花がファンレターの精査を担当していた。
「うげっ、ハートがいっぱいの便せん! お兄さんの作品じゃなくて、お兄さんのことばっか褒めてる! しかも自分の連絡先と顔写真も一緒に入ってるんだけど! これ、絶対加工したやつじゃん! 頭ゆがんでるし、異常に顔テカテカしてるし、目キモいし!」
あからさまな"ラブレター"に、夢花は世界一臭い缶詰を食べたような顔をする。
歩夢のペンネーム「昼中歩夢」と同じ名字の「昼中夢巫女」という女性から届いたファンレターだった。
「どれどれ……」
歩夢も興味本位で覗き込む。
とっさに夢花はファンレターを後ろ手に隠した。
「お兄さんは読んじゃダメ! 目が腐っちゃう!」
「はは、人の目玉は手紙を読んだくらいじゃ腐らないよ」
結局、昼中夢巫女からのファンレターはファンレターの域こそ超えていたものの、「矯正するほどではない」と判断し、様子を見ることにした。
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