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悪夢薔薇色 第二話『黒薔薇の棺』
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「離して! 私は美しく死にたいの! 美しく死ねば、お父様もお母様も私の死に姿を見に戻って来てくれるかもしれない! 私を蔑んできた連中も、私が美しいことを思い出すかもしれない! 全身を溶かされて死ぬなんて、美しくないわ!」
美匣は叫ぶ。柩のふちをつかみ、柩から這い出ようとしたが、徐々にウツボカヅラに体を飲まれ、ついには手を離した。
苦し紛れに柩の底板に爪を立てる。やがて爪は割れ、血が出た。不思議と痛みはなかったが、ボロボロになった指先を見ていると、美匣は心が痛くなった。
「痛い……痛い……」
柩の中で泣きじゃくる。美匣の体は徐々にウツボカヅラの中へ引きずり込まれ、やがて「クチャクチャ」という咀嚼音と共に、柩の奥へと消えた。
美匣の柩の底板には指先からにじんだ血の跡が線となって残っていた。女性は真っ赤な血の線を覗き込み、ボソッと呟いた。
「きれいな色。私、この色好き」
一ヶ月後、「隣の屋敷から異臭がする」との通報を受け、警察が美匣の屋敷に駆けつけた。一ヶ月間手入れされていなかった薔薇園は荒れ放題で、かつては美しかった薔薇達も名も知らぬ雑草や害虫によって無惨に食い尽くされ、枯れ果てていた。
異臭の原因である美匣は薔薇園にある噴水に沈んでいるのを発見された。長期間水に沈んでいたせいか、体の肉がドロドロに溶け、人としての原型を保っていなかった。
美匣の葬儀は行われず、やがて屋敷も薔薇園も跡形もなく更地にされた。
悪夢薔薇色 第二話『黒薔薇の館』終わり
美匣は叫ぶ。柩のふちをつかみ、柩から這い出ようとしたが、徐々にウツボカヅラに体を飲まれ、ついには手を離した。
苦し紛れに柩の底板に爪を立てる。やがて爪は割れ、血が出た。不思議と痛みはなかったが、ボロボロになった指先を見ていると、美匣は心が痛くなった。
「痛い……痛い……」
柩の中で泣きじゃくる。美匣の体は徐々にウツボカヅラの中へ引きずり込まれ、やがて「クチャクチャ」という咀嚼音と共に、柩の奥へと消えた。
美匣の柩の底板には指先からにじんだ血の跡が線となって残っていた。女性は真っ赤な血の線を覗き込み、ボソッと呟いた。
「きれいな色。私、この色好き」
一ヶ月後、「隣の屋敷から異臭がする」との通報を受け、警察が美匣の屋敷に駆けつけた。一ヶ月間手入れされていなかった薔薇園は荒れ放題で、かつては美しかった薔薇達も名も知らぬ雑草や害虫によって無惨に食い尽くされ、枯れ果てていた。
異臭の原因である美匣は薔薇園にある噴水に沈んでいるのを発見された。長期間水に沈んでいたせいか、体の肉がドロドロに溶け、人としての原型を保っていなかった。
美匣の葬儀は行われず、やがて屋敷も薔薇園も跡形もなく更地にされた。
悪夢薔薇色 第二話『黒薔薇の館』終わり
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