悪夢症候群

緋色刹那

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悪夢薔薇色 第二話『黒薔薇の棺』

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 美匣が死を心待ちにしていると、「ドサッ」と柩の上に何かが腰を下ろした。
 屋敷で働く使用人は皆、解雇した。今、屋敷には美匣しかいないはずだった。
「ちょっと、誰! 私の上に座っている無礼者は!」
 美匣が中から拳で叩くと、上に載っていた何かがレンガの床へ降り、美匣がいる柩のフタを開いた。
「ちょっと、貴方ねぇ……!」
 美匣は起き上がって早々、犯人に文句を言おうとした。
 しかし犯人の姿を目にした瞬間、あんぐりと口を開いたまま、硬直した。
 柩のフタを手に立っていたのは、人形と見紛うほどの美貌を持つ、真っ赤なドレスの女性だった。感情のない瞳で美匣を見つめてくる。
 美匣は恥ずかしくなり、思わず視線をそらした。
「な、何の用?! 泥棒なら、屋敷へどうぞ! 鍵なら開いてるわ!」
「……死にたい?」
 女性は小首を傾げ、尋ねた。
「死にたいなら、殺してあげましょうか?」
「……え」
 突然の訪問者に尋ねられ、美匣は困惑する。
 てっきり彼女は泥棒だとばかり思っていたが、実は猟奇的な殺人鬼だったのかもしれない。
 美匣は一瞬、恐ろしくなったが、すぐに「こんな美しい人に殺されるなんて、素敵じゃない?」
 と開き直った。
「えぇ、お願いするわ。とびっきり美しくね」
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