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クローズドアパート 第五話『閉鎖悪夢〈人形館〉』
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シキミの偽物、操江は、気がつくと全面鏡張りの部屋の中に閉じ込められていた。
遊園地の鏡の迷路とは違い、出入口はない。誰もいない真っ暗な空間に、操江だけが取り残されていた。
「何処なのよ、ここは……」
操江は不安そうに鏡の部屋を見回す。どの鏡にも操江の姿が映り、彼女を取り囲んでいた。
ふいに、その内の一人が冷笑し、操江の声で言った。
「"貴方は犯罪者よ"。他人の人生をゲームのように弄ぶ、最低の女だわ」
「はァ? 力を使って何が悪いの? 私は勝ち組なのよ!」
操江は鏡の自身に突っかかる。
すると別の操江も笑み、続けた。
「他人の会社も家庭も、貴方にとっては愉快なオモチャ箱。人間を人形としか思っていない、悪女」
「違う! 私はただ、幸せになりたかっただけ! 周りの連中が私の思った通りに動いてくれないのが悪いのよ!」
操江は鏡の自分を否定するが、他の鏡達も次々に口角を上げ、操江の本性を口にした。
「"貴方は犯罪者よ"。その日の気分で職場を選んで、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、後始末は社員に押し付けて出て行く。残された彼らの苦労を考えたことはある?」
「"貴方は犯罪者よ"。次々に他人の家庭を壊していく気分はどうだった? 自分がマドンナになったような気分だったんじゃない? 本当の貴方は誰からも愛されない、顔も心も醜い女なのにね」
「"貴方は犯罪者よ"。壊すだけじゃ飽き足らず、盗んでいくんだもの。金も、物も、何もかも……気に入ったものは全て奪ってしまう。どれだけの人が貴方のせいで、路頭に迷ったでしょうね」
「"貴方は犯罪者よ"。本当は一人だけじゃないんでしょう? もっと沢山の人を殺したんでしょう? 入れ替わる相手、いたら都合の悪い相手、力に気づいた相手……一体、何人の命を無かったことにしたの?」
「うるさい、うるさい! 私は違うのよ! 私は……ッ!」
操江は手で耳を押さえ、鏡達の声を掻き消そうと叫ぶ。
しかし鏡の操江達は告発を辞めなかった。薄ら笑いを浮かべたまま、機械のように繰り返した。
「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」
「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」
やがて操江は鏡の言葉に洗脳され、力が抜けたように項垂れた。目に光が無く、生気を失っていた。
「そう……私は犯罪者よ。優一さんの婚約者を殺して、結婚して、妻になった。私達の子供が出来たら、夢花も殺すつもりだった。飽きたら優一さんと子供を殺して、金目の物を奪って出て行くつもりだった……」
自分が犯罪者だと認め、計画していた悪事をボソボソと呟く。
鏡に映った操江達は彼女を洗脳し終えたのを確認すると、一斉に夢花へと姿を変えた。
「そうよ! だから、お前はここで死ななきゃいけないの! シキミさんが受けた苦痛よりも、ずっとずっと苦しい……永遠に終わらない悪夢の中で、死に続けろッ!」
鏡の夢花達は憤怒の形相で操江に吠える。
瞬間、部屋を構成していた全ての鏡が粉々に砕け、その破片が操江に飛来して来た。天井の破片はもちろん、壁や床の破片までもが重力に逆らい、操江の体に襲いかかる。
逃げ場のない操江は、呆然と部屋の中心で立ち尽くしていた。
遊園地の鏡の迷路とは違い、出入口はない。誰もいない真っ暗な空間に、操江だけが取り残されていた。
「何処なのよ、ここは……」
操江は不安そうに鏡の部屋を見回す。どの鏡にも操江の姿が映り、彼女を取り囲んでいた。
ふいに、その内の一人が冷笑し、操江の声で言った。
「"貴方は犯罪者よ"。他人の人生をゲームのように弄ぶ、最低の女だわ」
「はァ? 力を使って何が悪いの? 私は勝ち組なのよ!」
操江は鏡の自身に突っかかる。
すると別の操江も笑み、続けた。
「他人の会社も家庭も、貴方にとっては愉快なオモチャ箱。人間を人形としか思っていない、悪女」
「違う! 私はただ、幸せになりたかっただけ! 周りの連中が私の思った通りに動いてくれないのが悪いのよ!」
操江は鏡の自分を否定するが、他の鏡達も次々に口角を上げ、操江の本性を口にした。
「"貴方は犯罪者よ"。その日の気分で職場を選んで、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、後始末は社員に押し付けて出て行く。残された彼らの苦労を考えたことはある?」
「"貴方は犯罪者よ"。次々に他人の家庭を壊していく気分はどうだった? 自分がマドンナになったような気分だったんじゃない? 本当の貴方は誰からも愛されない、顔も心も醜い女なのにね」
「"貴方は犯罪者よ"。壊すだけじゃ飽き足らず、盗んでいくんだもの。金も、物も、何もかも……気に入ったものは全て奪ってしまう。どれだけの人が貴方のせいで、路頭に迷ったでしょうね」
「"貴方は犯罪者よ"。本当は一人だけじゃないんでしょう? もっと沢山の人を殺したんでしょう? 入れ替わる相手、いたら都合の悪い相手、力に気づいた相手……一体、何人の命を無かったことにしたの?」
「うるさい、うるさい! 私は違うのよ! 私は……ッ!」
操江は手で耳を押さえ、鏡達の声を掻き消そうと叫ぶ。
しかし鏡の操江達は告発を辞めなかった。薄ら笑いを浮かべたまま、機械のように繰り返した。
「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」
「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」「"貴方は犯罪者よ"」
やがて操江は鏡の言葉に洗脳され、力が抜けたように項垂れた。目に光が無く、生気を失っていた。
「そう……私は犯罪者よ。優一さんの婚約者を殺して、結婚して、妻になった。私達の子供が出来たら、夢花も殺すつもりだった。飽きたら優一さんと子供を殺して、金目の物を奪って出て行くつもりだった……」
自分が犯罪者だと認め、計画していた悪事をボソボソと呟く。
鏡に映った操江達は彼女を洗脳し終えたのを確認すると、一斉に夢花へと姿を変えた。
「そうよ! だから、お前はここで死ななきゃいけないの! シキミさんが受けた苦痛よりも、ずっとずっと苦しい……永遠に終わらない悪夢の中で、死に続けろッ!」
鏡の夢花達は憤怒の形相で操江に吠える。
瞬間、部屋を構成していた全ての鏡が粉々に砕け、その破片が操江に飛来して来た。天井の破片はもちろん、壁や床の破片までもが重力に逆らい、操江の体に襲いかかる。
逃げ場のない操江は、呆然と部屋の中心で立ち尽くしていた。
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