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クローズドアパート 第五話『閉鎖悪夢〈人形館〉』
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遊園地に着き、様々な遊具で遊んでいる間も、夢花の頭痛は治らなかった。両親を心配させないよう、楽しく遊んでいる風を装ってはいたが、正直言うと限界だった。
幸い、限界を迎える前に昼食の時間になったものの、まだ半分時間があるのだと思うと憂鬱だった。
「午後は何して遊ぼうか?」
「午前中は絶叫系ばっかり乗ってたから、あんまり激しくないのがいいかな。メリーゴーランドとか」
「操江!」
その時、見知らぬ女性が背後からシキミに声をかけてきた。シキミよりも一回りほど年上の女性で、後ろには小学生から夢花と同い年くらいまでの子供が三人いた。
「やっぱり、操江だ! 久しぶりぃ! 職場変えたって聞いてたけど、元気だった? てか、いつのまに結婚してたの?」
「……っ?!」
シキミは女性を目にした一瞬、異常に驚いていた。
しかしすぐに冷静さを取り戻すと、「人違いです」と女性に言った。
「操江は私の姉ですよ。貴方は姉のご友人ですよね?」
「え?」
女性は一瞬、シキミが言った言葉の意味が理解しきれず、ぽかんとした顔で固まった。
やがてその顔のまま「そうそう」と頷くと、元の快活さを取り戻した。
「ごめんねー、シキミちゃん。あまりにも操江にそっくりだったから、間違えちゃった! 邪魔しちゃ悪いし、今度またゆっくりお話ししようねー」
「えぇ、是非」
女性が子供達を連れ、去っていくと、シキミは重くため息をついた。
「はぁ……私、そんなに姉さんに似てるのかしら? よく間違われるのよねぇ」
「シキミにお姉さんがいるなんて、初耳だな。結婚式にも来ていなかったし……今は何処で何をしているんだい?」
「さぁ……気難しい人だから、私も暫く連絡していないわ」
シキミは素っ気なく言うと、売店で購入したホットドッグにかぶりついた。
昼食を終えた後、夢花は希望していたメリーゴーランドに乗った。
「お父さんとお母さんも一緒に乗ろうよ!」
「僕は夢花の写真を撮りたいから、遠慮しておくよ」
「私も夢花が乗ってる姿が見たいわ」
「えー、一人じゃつまんないのにぃ」
夢花は文句を言いながらも、花があしらわれた可愛らしい屋根の無しの馬車に乗った。
こうして馬車に乗っていると、お姫様になったような気分になった。
「私がお姫様なら、歩夢お兄さんが王子様かな」
夢花は馬車と繋がっている作り物の白馬を見上げる。
すると一瞬、歩夢がそこに座っているかのように見えた。
「えっ」
夢花は驚き、目を見張る。
しかし既に歩夢の幻覚は消え、誰も乗っていない白馬だけが視界に映っていた。
幸い、限界を迎える前に昼食の時間になったものの、まだ半分時間があるのだと思うと憂鬱だった。
「午後は何して遊ぼうか?」
「午前中は絶叫系ばっかり乗ってたから、あんまり激しくないのがいいかな。メリーゴーランドとか」
「操江!」
その時、見知らぬ女性が背後からシキミに声をかけてきた。シキミよりも一回りほど年上の女性で、後ろには小学生から夢花と同い年くらいまでの子供が三人いた。
「やっぱり、操江だ! 久しぶりぃ! 職場変えたって聞いてたけど、元気だった? てか、いつのまに結婚してたの?」
「……っ?!」
シキミは女性を目にした一瞬、異常に驚いていた。
しかしすぐに冷静さを取り戻すと、「人違いです」と女性に言った。
「操江は私の姉ですよ。貴方は姉のご友人ですよね?」
「え?」
女性は一瞬、シキミが言った言葉の意味が理解しきれず、ぽかんとした顔で固まった。
やがてその顔のまま「そうそう」と頷くと、元の快活さを取り戻した。
「ごめんねー、シキミちゃん。あまりにも操江にそっくりだったから、間違えちゃった! 邪魔しちゃ悪いし、今度またゆっくりお話ししようねー」
「えぇ、是非」
女性が子供達を連れ、去っていくと、シキミは重くため息をついた。
「はぁ……私、そんなに姉さんに似てるのかしら? よく間違われるのよねぇ」
「シキミにお姉さんがいるなんて、初耳だな。結婚式にも来ていなかったし……今は何処で何をしているんだい?」
「さぁ……気難しい人だから、私も暫く連絡していないわ」
シキミは素っ気なく言うと、売店で購入したホットドッグにかぶりついた。
昼食を終えた後、夢花は希望していたメリーゴーランドに乗った。
「お父さんとお母さんも一緒に乗ろうよ!」
「僕は夢花の写真を撮りたいから、遠慮しておくよ」
「私も夢花が乗ってる姿が見たいわ」
「えー、一人じゃつまんないのにぃ」
夢花は文句を言いながらも、花があしらわれた可愛らしい屋根の無しの馬車に乗った。
こうして馬車に乗っていると、お姫様になったような気分になった。
「私がお姫様なら、歩夢お兄さんが王子様かな」
夢花は馬車と繋がっている作り物の白馬を見上げる。
すると一瞬、歩夢がそこに座っているかのように見えた。
「えっ」
夢花は驚き、目を見張る。
しかし既に歩夢の幻覚は消え、誰も乗っていない白馬だけが視界に映っていた。
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