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ミッドデイアパート 第五話『美少女女子高生作家(嘘)』
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丹瀬川は顔を含めた全身を整形完了すると、「作家志望の美少女」としてSNSで活動を始めた。より注目を集めるために経歴詐称し、さも不遇な生い立ちを経験してきたかのように語った。
投稿の大半は自身の顔写真で、小説はほとんど投稿しなかった。それでも丹瀬川の顔に釣られて近づいてくる人間は多かった。
ごくたまに小説を投稿したとしても、それらは全て過去に落選した拙作ばかりで、決して面白いものではなかった。しかし、丹瀬川を慕う人々は
「感動しました!」
だの、
「今まで読んできた小説の中で、一番好き!」
だのと、丹瀬川に好かれようと必死だった。
やがて丹瀬川がハロウィンの衣装として着ていた制服が実在の物だと発覚すると、「◯◯高校在籍、現役美少女女子高校生作家」として名を馳せるようになった。たまたまデザインが似ていただけで、丹瀬川がかよっていた高校とは全く異なっていたが、
「女子高生作家の方が箔がつく」
と考え、わざと否定しなかった。
SNSでの人気が不動のものになった頃、ある出版社に送った原稿が新人賞を受賞した。
丹瀬川の作品は他の候補者の中で一番クオリティが低く、これが正当な評価ではないことは丹瀬川にも分かっていた。先方は丹瀬川の「美少女女子高生作家」という肩書きに食いつき、その人気にあやかるために、賞を与えたのだ。
その瞬間、丹瀬川は「そこそこ可愛くて、そこそこ知名度があれば作家デビュー出来る」という持論を、身をもって証明した。
「お姉さん、楽しそうだね」
その時、丹瀬川の頭上から声が聞こえた。
声がした方を見上げると、本棚の上に制服を着た中学生くらいの女の子が足を組んで座り、丹瀬川を冷たく見下ろしていた。かなりの美少女で、笑顔でないのがもったいないほどだった。
「貴方、そんなとこに座ってちゃ危ないわよ。早く降りなさい」
丹瀬川は差し出された書籍にサインをしながら、優しく女の子をたしなめる。周囲の人間には女の子が見えていないらしく、本棚の上に向かって話しかけている丹瀬川を不思議そうに見守っていた。
すると女の子は「キャハハッ!」と愉快そうに嗤った。
「危ないのはアンタの方よ、おばさん! アンタの価値なんて、その顔しかないんだから!」
直後、書店の店員が斧を手に丹瀬川に襲いかかった。
投稿の大半は自身の顔写真で、小説はほとんど投稿しなかった。それでも丹瀬川の顔に釣られて近づいてくる人間は多かった。
ごくたまに小説を投稿したとしても、それらは全て過去に落選した拙作ばかりで、決して面白いものではなかった。しかし、丹瀬川を慕う人々は
「感動しました!」
だの、
「今まで読んできた小説の中で、一番好き!」
だのと、丹瀬川に好かれようと必死だった。
やがて丹瀬川がハロウィンの衣装として着ていた制服が実在の物だと発覚すると、「◯◯高校在籍、現役美少女女子高校生作家」として名を馳せるようになった。たまたまデザインが似ていただけで、丹瀬川がかよっていた高校とは全く異なっていたが、
「女子高生作家の方が箔がつく」
と考え、わざと否定しなかった。
SNSでの人気が不動のものになった頃、ある出版社に送った原稿が新人賞を受賞した。
丹瀬川の作品は他の候補者の中で一番クオリティが低く、これが正当な評価ではないことは丹瀬川にも分かっていた。先方は丹瀬川の「美少女女子高生作家」という肩書きに食いつき、その人気にあやかるために、賞を与えたのだ。
その瞬間、丹瀬川は「そこそこ可愛くて、そこそこ知名度があれば作家デビュー出来る」という持論を、身をもって証明した。
「お姉さん、楽しそうだね」
その時、丹瀬川の頭上から声が聞こえた。
声がした方を見上げると、本棚の上に制服を着た中学生くらいの女の子が足を組んで座り、丹瀬川を冷たく見下ろしていた。かなりの美少女で、笑顔でないのがもったいないほどだった。
「貴方、そんなとこに座ってちゃ危ないわよ。早く降りなさい」
丹瀬川は差し出された書籍にサインをしながら、優しく女の子をたしなめる。周囲の人間には女の子が見えていないらしく、本棚の上に向かって話しかけている丹瀬川を不思議そうに見守っていた。
すると女の子は「キャハハッ!」と愉快そうに嗤った。
「危ないのはアンタの方よ、おばさん! アンタの価値なんて、その顔しかないんだから!」
直後、書店の店員が斧を手に丹瀬川に襲いかかった。
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