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ミッドデイアパート 第五話『美少女女子高生作家(嘘)』
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丹瀬川玉子……それが、若草の本名だった。
丹瀬川は美少女女子高生作家としてデビューする前は、本名で作家を目指していた。来る日も来る日も方々の出版社へ原稿を送り、一次選考で落選するという日々を送っていた。
作家になることは丹瀬川の長年の夢であり、人生の目標でもあった。過保護な両親は丹瀬川の将来を心配し、「実家の農家を継がないか」と何度も持ちかけてきたが、丹瀬川は夢を諦めようとはしなかった。
「私には作家の才能があるのよ! 今はまだ、誰も私の才能に気づいていないだけ! いつかきっと、私の才能を認めてくれる出版社が現れるわ!」
丹瀬川は自分には才能があると信じていた。特に国語の成績が良かったわけでも、独創的な発想が出来るわけでもない。
ただ一度だけ、小学生の時に提出した読書感想文が表彰されたことで、「自分には文才がある」と思い込むようになった。その読書感想文を実際に書いたのは母親で、丹瀬川は本すら読んでいなかったが、そういった都合の悪いことは全て記憶から抹消していた。
丹瀬川が出版社に送った原稿が百作を超えた頃、このたび作家デビューを果たしたアイドルの特集がテレビで放送されていた。
そこそこ可愛くて、そこそこ歌が歌えて、そこそこダンスが踊れて、そこそこトークが出来る、そこそこの私立大学にかよっているという、何もかもがそこそこのアイドルだった。そこそこ有名なアイドルグループに所属してはいるが、特別目立っていた人物ではなかった。
丹瀬川は何の気なしにその番組を見ていたが、そのアイドルが作家デビューを果たすまでに至った経緯を聞いて、頭の中が真っ白になった。
『実は私、小説を書くのが趣味で、毎週ブログに載っけてたんですよぉ。そしたら偶然、出版社の方が読んで下さって、作家デビューすることになったんですぅ』
『ココちゃん、文才あるもんねー。あいや、作家デビューするから"ココ先生"か!』
司会の男はアイドルを持ち上げ、ガハハと下卑た笑い声を上げた。
丹瀬川は堪らずテレビを消した。今まで信じてきた何もかもが崩れていくように感じた。作家になるために必要なのは、文才でも知性でも発想力でもない……そこそこ顔が良くて、そこそこ知名度があれば良かったのだ。
「そっか……顔が良くて知名度があれば、こんなに苦労する必要なんて無かったんだ。こんな簡単なことに気づかなかったなんて、私って馬鹿だなぁ」
翌日、丹瀬川は今まで購入した本を全て売り払い、整形外科の門を叩いた。
丹瀬川は美少女女子高生作家としてデビューする前は、本名で作家を目指していた。来る日も来る日も方々の出版社へ原稿を送り、一次選考で落選するという日々を送っていた。
作家になることは丹瀬川の長年の夢であり、人生の目標でもあった。過保護な両親は丹瀬川の将来を心配し、「実家の農家を継がないか」と何度も持ちかけてきたが、丹瀬川は夢を諦めようとはしなかった。
「私には作家の才能があるのよ! 今はまだ、誰も私の才能に気づいていないだけ! いつかきっと、私の才能を認めてくれる出版社が現れるわ!」
丹瀬川は自分には才能があると信じていた。特に国語の成績が良かったわけでも、独創的な発想が出来るわけでもない。
ただ一度だけ、小学生の時に提出した読書感想文が表彰されたことで、「自分には文才がある」と思い込むようになった。その読書感想文を実際に書いたのは母親で、丹瀬川は本すら読んでいなかったが、そういった都合の悪いことは全て記憶から抹消していた。
丹瀬川が出版社に送った原稿が百作を超えた頃、このたび作家デビューを果たしたアイドルの特集がテレビで放送されていた。
そこそこ可愛くて、そこそこ歌が歌えて、そこそこダンスが踊れて、そこそこトークが出来る、そこそこの私立大学にかよっているという、何もかもがそこそこのアイドルだった。そこそこ有名なアイドルグループに所属してはいるが、特別目立っていた人物ではなかった。
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『実は私、小説を書くのが趣味で、毎週ブログに載っけてたんですよぉ。そしたら偶然、出版社の方が読んで下さって、作家デビューすることになったんですぅ』
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