悪夢症候群

緋色刹那

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ミッドナイトアパート 第五話『一生の償い』

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 一年、二年と、比較的穏やかな学校生活を過ごし、夢花は中学三年生になった。
 新しいクラスも夢花と気の合う生徒ばかりに調したため、小学生の頃のように人間関係で苦しめられることもなかった。

「そういえば、夢花ちゃんは進路希望調査書、書けた?」
 昼休み、夢花と一緒に昼食を取っていた友人、温子ぬくこが尋ねてきた。温子は夢花と同じ美術部の女子で、三年間クラスが一緒だったのもあり、大の仲良しだった。
 と言っても、仲良しだと思っているのは温子だけで、夢花は彼女に心を開いているわけではない。ただ、温子の細かいことを気にしない、おっとりとした性格が、隠し事の多い夢花にとっては都合が良かった。
「もちろん。今朝、先生から配られてすぐ書いたよ」
 夢花は頷き、第三希望まで書いた進路希望調査書を温子に見せた。進学を希望しており、書かれている学校はどれも美術系の学校だった。
「へぇー。夢花ちゃん、美術系の高校行くんだ。しかも第一希望は東京なの? いいなぁ」
「温子ちゃんは美術系の高校に行かないの?」
「うん。親の会社継がなきゃいけないから、将来は経済系の大学に進学するつもり。何処の高校にするかはまだ悩んでるんだけどね」
「そっか……卒業したら、離れ離れになっちゃうんだね。寂しいな」
 夢花は心にもないことをぽつりと呟き、継父に作ってもらったサンドイッチを頬張った。
「そういえば、高岡たかおかさんも東京の高校受けるらしいよ。東大合格率ナンバーワンの高校なんだって。夢花ちゃん、高岡さんと同じ小学校だったんでしょ?」
 高岡の名前を聞いた瞬間、夢花の動きが一瞬止まった。年相応に澄んでいた瞳が、憎悪と殺意でどろりと濁る。
 しかしすぐに元の演技に戻り、世間話でもする風を装った。
「ふーん、そうなんだぁ。ほとんど喋ったことないから、よく知らないな」
「あら、残念。知り合いだったら、勉強見てもらおうと思ってたのに」
「やめておいた方がいいよ。あんまり良い噂聞かないし、腹黒そうだし」
「夢花ちゃんが他人の悪口言うの、珍しいね。何かあったの?」
「んーん。別に?」
 夢花は視線をそらし、答えをはぐらかした。
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