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悪夢薔薇色 第二話『黒薔薇の棺』
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黒原美匣は黒衣のドレスに身を包み、自宅の薔薇園に置かれた柩の中で死を待っていた。
棺にはあらかじめトゲを除去しておいた黒薔薇が無数に敷き詰められている。夜空に浮かぶ満月は、青白く輝いていた。
美匣の夢は「美しく死ぬこと」だった。
かつて美匣は誰もが目を見張るほどの美貌の持ち主だった。誰もが美匣を敬い、かしずいた。
しかしとある事故により、顔や体が醜く変貌して以降、周囲は美匣を毛嫌いし、邪険に扱うようになった。美匣は家に塞ぎ込むようになり、外へ出なくなった。
美匣の両親は彼女の美しさを取り戻そうと、整形手術を繰り返させた。それでも美匣の美しさは戻らず、むしろ醜さに拍車がかかっていった。やがて両親も美匣を捨て、屋敷を出て行った。
一人になった美匣は「せめて美しく死にたい」と願い、残されたなけなしの金で柩を購入した。それを自宅の薔薇園に置き、中を黒薔薇で敷き詰めた。
美匣は美しく死ぬために、ありとあらゆる書籍を読み漁った。その結果、「密閉空間で黒薔薇に囲まれると、黒薔薇の毒で死ぬ」という逸話があると知った。
「なんて美しい死に様なの! 私も黒薔薇に囲まれて死にたいわ!」
もちろん、この逸話は事実ではない。
黒薔薇に毒などないし、そのような状況下で死ぬのは密閉空間ゆえに酸欠になるからである。
参考にした本のタイトルが「世界オカルト大辞典」であることも、その内容がおおよそフィクションであることも、美匣は気づいていなかった。
棺にはあらかじめトゲを除去しておいた黒薔薇が無数に敷き詰められている。夜空に浮かぶ満月は、青白く輝いていた。
美匣の夢は「美しく死ぬこと」だった。
かつて美匣は誰もが目を見張るほどの美貌の持ち主だった。誰もが美匣を敬い、かしずいた。
しかしとある事故により、顔や体が醜く変貌して以降、周囲は美匣を毛嫌いし、邪険に扱うようになった。美匣は家に塞ぎ込むようになり、外へ出なくなった。
美匣の両親は彼女の美しさを取り戻そうと、整形手術を繰り返させた。それでも美匣の美しさは戻らず、むしろ醜さに拍車がかかっていった。やがて両親も美匣を捨て、屋敷を出て行った。
一人になった美匣は「せめて美しく死にたい」と願い、残されたなけなしの金で柩を購入した。それを自宅の薔薇園に置き、中を黒薔薇で敷き詰めた。
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「なんて美しい死に様なの! 私も黒薔薇に囲まれて死にたいわ!」
もちろん、この逸話は事実ではない。
黒薔薇に毒などないし、そのような状況下で死ぬのは密閉空間ゆえに酸欠になるからである。
参考にした本のタイトルが「世界オカルト大辞典」であることも、その内容がおおよそフィクションであることも、美匣は気づいていなかった。
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