悪夢症候群

緋色刹那

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悪夢極彩色 第一話『嵐の悪夢 side夢花』

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 その夜、夢花は曇天の荒野の真ん中にぽつんと建っているコンクリート造の雑居ビルから、地上の景色を見下ろしていた。
 荒野には野々原以外のクラスメイト達が悲鳴を上げながら、次々に落ちてくる雷から逃げ惑っていた。雷は音もなく紫の閃光を放ち、生徒を撃ち抜く。雷に当たった生徒は真っ黒に焦げ、その場に倒れた。
 中には夢花のいる建物に向かって来る生徒もいたが、たどり着く前に雷に打たれた。
「いやぁ! 誰か助けてー!」
「死にたくない! 死にたくないぃ!」
「何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」
「そうだ、そうだ! 俺達は何も悪いことなんてしてない!」
 己の罪を理解せず、助けを乞うクラスメイト達に、夢花は「むぅ」と頬を膨らませ、不快を露わにした。
「やったから罰を与えてるんじゃん。何で分かんないのかなぁ?」
 その時、学級委員長に向かって雷が降ってきた。
 夢花にとっては待ちに待った瞬間だったが、学級委員長は寸前で近くにいた女子生徒を引き寄せ、躊躇なく盾にした。
「キャーッ!」
 突然のことに女子生徒は悲鳴を上げ、息絶える。
 他のクラスメイト達も女子生徒の悲鳴を聞いて振り返り、学級委員長が何をしたのか理解した。
「い、委員長……?」
「今、何で……」
 クラスメイト達が戸惑う中、学級委員長は涙を流しながら、言った。
「ごめんなさい……みんなを守るためにも、こうするしかなかったの」
「俺達を、守る?」
 学級委員長は「そうよ」と力強気頷いた。
「誰か一人でもいい……この状況を、先生方に知らせるのよ。そうすれば、絶対助けが来るわ。あのビルに逃げ込んで、助けを求めるの」
「でもどうやって?!」
「隊列を組むの。見たところ、雷は一定の範囲内に一発と決まっているみたい。固まって、お互いをお互いで守りあえば、最低限の犠牲で済むわ」
 学級委員長は拳を振り上げ、クラスメイト達を鼓舞した。
「みんな! 余計な犠牲者を出さないためにも、やりましょう! 今こそ、一致団結するのよ!」
「おぉー!」
 他のクラスメイト達も学級委員長に乗せられ、拳を上げる。その中に野々原と夢花がいないことなど、誰も気に留めていなかった。
「うわぁ……偽善者、きもぉ」
 独善的な作戦に、夢花は顔をしかめる。
 彼女の感情に呼応し、雷は拳を振り上げた生徒の一人を射抜いた。
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