129 / 227
悪夢極彩色 第一話『嵐の悪夢 side夢花』
2
しおりを挟む
その夜、夢花は曇天の荒野の真ん中にぽつんと建っているコンクリート造の雑居ビルから、地上の景色を見下ろしていた。
荒野には野々原以外のクラスメイト達が悲鳴を上げながら、次々に落ちてくる雷から逃げ惑っていた。雷は音もなく紫の閃光を放ち、生徒を撃ち抜く。雷に当たった生徒は真っ黒に焦げ、その場に倒れた。
中には夢花のいる建物に向かって来る生徒もいたが、たどり着く前に雷に打たれた。
「いやぁ! 誰か助けてー!」
「死にたくない! 死にたくないぃ!」
「何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」
「そうだ、そうだ! 俺達は何も悪いことなんてしてない!」
己の罪を理解せず、助けを乞うクラスメイト達に、夢花は「むぅ」と頬を膨らませ、不快を露わにした。
「やったから罰を与えてるんじゃん。何で分かんないのかなぁ?」
その時、学級委員長に向かって雷が降ってきた。
夢花にとっては待ちに待った瞬間だったが、学級委員長は寸前で近くにいた女子生徒を引き寄せ、躊躇なく盾にした。
「キャーッ!」
突然のことに女子生徒は悲鳴を上げ、息絶える。
他のクラスメイト達も女子生徒の悲鳴を聞いて振り返り、学級委員長が何をしたのか理解した。
「い、委員長……?」
「今、何で……」
クラスメイト達が戸惑う中、学級委員長は涙を流しながら、言った。
「ごめんなさい……みんなを守るためにも、こうするしかなかったの」
「俺達を、守る?」
学級委員長は「そうよ」と力強気頷いた。
「誰か一人でもいい……この状況を、先生方に知らせるのよ。そうすれば、絶対助けが来るわ。あのビルに逃げ込んで、助けを求めるの」
「でもどうやって?!」
「隊列を組むの。見たところ、雷は一定の範囲内に一発と決まっているみたい。固まって、お互いをお互いで守りあえば、最低限の犠牲で済むわ」
学級委員長は拳を振り上げ、クラスメイト達を鼓舞した。
「みんな! 余計な犠牲者を出さないためにも、やりましょう! 今こそ、一致団結するのよ!」
「おぉー!」
他のクラスメイト達も学級委員長に乗せられ、拳を上げる。その中に野々原と夢花がいないことなど、誰も気に留めていなかった。
「うわぁ……偽善者、きもぉ」
独善的な作戦に、夢花は顔をしかめる。
彼女の感情に呼応し、雷は拳を振り上げた生徒の一人を射抜いた。
荒野には野々原以外のクラスメイト達が悲鳴を上げながら、次々に落ちてくる雷から逃げ惑っていた。雷は音もなく紫の閃光を放ち、生徒を撃ち抜く。雷に当たった生徒は真っ黒に焦げ、その場に倒れた。
中には夢花のいる建物に向かって来る生徒もいたが、たどり着く前に雷に打たれた。
「いやぁ! 誰か助けてー!」
「死にたくない! 死にたくないぃ!」
「何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」
「そうだ、そうだ! 俺達は何も悪いことなんてしてない!」
己の罪を理解せず、助けを乞うクラスメイト達に、夢花は「むぅ」と頬を膨らませ、不快を露わにした。
「やったから罰を与えてるんじゃん。何で分かんないのかなぁ?」
その時、学級委員長に向かって雷が降ってきた。
夢花にとっては待ちに待った瞬間だったが、学級委員長は寸前で近くにいた女子生徒を引き寄せ、躊躇なく盾にした。
「キャーッ!」
突然のことに女子生徒は悲鳴を上げ、息絶える。
他のクラスメイト達も女子生徒の悲鳴を聞いて振り返り、学級委員長が何をしたのか理解した。
「い、委員長……?」
「今、何で……」
クラスメイト達が戸惑う中、学級委員長は涙を流しながら、言った。
「ごめんなさい……みんなを守るためにも、こうするしかなかったの」
「俺達を、守る?」
学級委員長は「そうよ」と力強気頷いた。
「誰か一人でもいい……この状況を、先生方に知らせるのよ。そうすれば、絶対助けが来るわ。あのビルに逃げ込んで、助けを求めるの」
「でもどうやって?!」
「隊列を組むの。見たところ、雷は一定の範囲内に一発と決まっているみたい。固まって、お互いをお互いで守りあえば、最低限の犠牲で済むわ」
学級委員長は拳を振り上げ、クラスメイト達を鼓舞した。
「みんな! 余計な犠牲者を出さないためにも、やりましょう! 今こそ、一致団結するのよ!」
「おぉー!」
他のクラスメイト達も学級委員長に乗せられ、拳を上げる。その中に野々原と夢花がいないことなど、誰も気に留めていなかった。
「うわぁ……偽善者、きもぉ」
独善的な作戦に、夢花は顔をしかめる。
彼女の感情に呼応し、雷は拳を振り上げた生徒の一人を射抜いた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママが呼んでいる
杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。
京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
【完結】『霧原村』~少女達の遊戯が幽の地に潜む怪異を招く~
潮ノ海月
ホラー
五月の中旬、昼休中に清水莉子と幸村葵が『こっくりさん』で遊び始めた。俺、月森和也、野風雄二、転校生の神代渉の三人が雑談していると、女子達のキャーという悲鳴が。その翌日から莉子は休み続け、学校中に『こっくりさん』の呪いや祟りの噂が広まる。そのことで和也、斉藤凪紗、雄二、葵、渉の五人が莉子の家を訪れると、彼女の母親は憔悴し、私室いた莉子は憑依された姿になっていた。莉子の家から葵を送り届け、暗い路地を歩く渉は不気味な怪異に遭遇する。それから恐怖の怪奇現象が頻発し、ついに女子達が犠牲に。そして怪異に翻弄されながらも、和也と渉の二人は一つの仮説を立て、思ってもみない結末へ導かれていく。【2025/3/11 完結】
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる