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悪夢極彩色 第一話『嵐の悪夢 side夢花』
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「えー?! まだ書いてないの? 提出してないの、野々原さんだけよ?」
夢花の爽やかな朝の読書タイムは、学級委員長の耳障りな声によって、中断を余儀なくされた。周囲に聞こえるよう、わざと声のボリュームを上げて発したのは明らかだった。
教室中のクラスメイト達が学級委員長と相手の女子に注目し、クスクスと嗤っていた。
「早く出してくれないと、私が困るんだけど」
「ご、ごめんなさい。明日は必ず書いて持ってくるから」
相手の女子は青ざめ、謝る。見るからに気の弱そうな女子だった。
(確か、野々原ちゃんだったっけ? 下の名前は知らないなぁ)
夢花は本を閉じ、二人と、二人を見る周囲の動向を観察することにした。
夢花はこの春、地元を離れて都会の私立高校へ進学した。高校には夢花を知っている人間は誰もおらず、快適な学生生活を送っていたものの、いじめを容認している今のクラスの雰囲気を好きにはなれなかった。
「ほんと、早くしてよね。怒られるのは私なんだから」
学級委員長は苛立った様子で自分の席へと戻り、席が近い友人達との会話に花を咲かせる。
彼女は眼鏡をかけた真面目そうな生徒で、常にクラスメイト一人一人を気にかけているように装っていた。
実際は、他人を見下し、弱者を笑い者にしている、最低のリーダーで、最近はあの野々原という生徒をターゲットにしていた。その気質がどことなく、夢花の小学生の頃の同級生達を思わせ、夢花は彼女を密かに嫌っていた。
「はぁ……」
野々原も自分の席へと座り、重く息を吐く。耳を澄ますと、小声で「まただ。また他の人を苛立たせてしまった。全部、私のせいだわ」と己を責めていた。
二人のやり取りが終わると、クラスメイト達は何事もなかったように会話に戻り、談笑する。誰一人として、野々原を気にかける様子はなかった。
(よし、殺そう)
入学して一ヶ月。ようやく夢花は決断し、ニッコリと微笑んだ。
その目は笑っておらず、明らかな殺意に満ちていた。
夢花の爽やかな朝の読書タイムは、学級委員長の耳障りな声によって、中断を余儀なくされた。周囲に聞こえるよう、わざと声のボリュームを上げて発したのは明らかだった。
教室中のクラスメイト達が学級委員長と相手の女子に注目し、クスクスと嗤っていた。
「早く出してくれないと、私が困るんだけど」
「ご、ごめんなさい。明日は必ず書いて持ってくるから」
相手の女子は青ざめ、謝る。見るからに気の弱そうな女子だった。
(確か、野々原ちゃんだったっけ? 下の名前は知らないなぁ)
夢花は本を閉じ、二人と、二人を見る周囲の動向を観察することにした。
夢花はこの春、地元を離れて都会の私立高校へ進学した。高校には夢花を知っている人間は誰もおらず、快適な学生生活を送っていたものの、いじめを容認している今のクラスの雰囲気を好きにはなれなかった。
「ほんと、早くしてよね。怒られるのは私なんだから」
学級委員長は苛立った様子で自分の席へと戻り、席が近い友人達との会話に花を咲かせる。
彼女は眼鏡をかけた真面目そうな生徒で、常にクラスメイト一人一人を気にかけているように装っていた。
実際は、他人を見下し、弱者を笑い者にしている、最低のリーダーで、最近はあの野々原という生徒をターゲットにしていた。その気質がどことなく、夢花の小学生の頃の同級生達を思わせ、夢花は彼女を密かに嫌っていた。
「はぁ……」
野々原も自分の席へと座り、重く息を吐く。耳を澄ますと、小声で「まただ。また他の人を苛立たせてしまった。全部、私のせいだわ」と己を責めていた。
二人のやり取りが終わると、クラスメイト達は何事もなかったように会話に戻り、談笑する。誰一人として、野々原を気にかける様子はなかった。
(よし、殺そう)
入学して一ヶ月。ようやく夢花は決断し、ニッコリと微笑んだ。
その目は笑っておらず、明らかな殺意に満ちていた。
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