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第3部 悪夢薔薇色 第一話『空中散歩』
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ツバが落下する間に、石井は屋上へとたどり着こうとしていた。
女性はなおも口角を上げたまま、石井を手招きしている。その笑みの不気味さは近づくに連れて増していったが、石井の頭の中はこれからの女性との予定でいっぱいだった。
(まずはバーか? それともホテル? いっそ、このままヤっちまうってのも……)
しかし石井の足が屋上にたどり着く直前、石井の全身から一切の力が抜けた。
「え、」
目の前に立っていた女性の姿は消え、重力に従って一気に落下していく。
その時間、たった数秒。石井は自分の身に何が起こったのか考える暇もなく、ただただわめくしかなかった。
「あぁああああ……!!!」
やがて石井は全身をコンクリートの地面に激しく打ち付けられ、潰れて半分血溜まりとなった。
そこは奇しくも、石井がツバを吐きかけた交差点の真ん中だった。石井の遺体は何人かの通行人に踏まれ、車に押し潰され、終いには雨と混じって薄まり、同化していった。
「……」
女性は無表情に戻り、潰れた石井を一瞥した。
そしてすぐに興味を失ったかのように踵を返すと、街を見下ろし、ポツリと呟いた。
「のばら……どこにいるの?」
女性は目当ての人物がいないと分かると、石井が落ちた方とは逆から飛び降り、消えた。
悪夢薔薇色 第一話『空中散歩』終わり
女性はなおも口角を上げたまま、石井を手招きしている。その笑みの不気味さは近づくに連れて増していったが、石井の頭の中はこれからの女性との予定でいっぱいだった。
(まずはバーか? それともホテル? いっそ、このままヤっちまうってのも……)
しかし石井の足が屋上にたどり着く直前、石井の全身から一切の力が抜けた。
「え、」
目の前に立っていた女性の姿は消え、重力に従って一気に落下していく。
その時間、たった数秒。石井は自分の身に何が起こったのか考える暇もなく、ただただわめくしかなかった。
「あぁああああ……!!!」
やがて石井は全身をコンクリートの地面に激しく打ち付けられ、潰れて半分血溜まりとなった。
そこは奇しくも、石井がツバを吐きかけた交差点の真ん中だった。石井の遺体は何人かの通行人に踏まれ、車に押し潰され、終いには雨と混じって薄まり、同化していった。
「……」
女性は無表情に戻り、潰れた石井を一瞥した。
そしてすぐに興味を失ったかのように踵を返すと、街を見下ろし、ポツリと呟いた。
「のばら……どこにいるの?」
女性は目当ての人物がいないと分かると、石井が落ちた方とは逆から飛び降り、消えた。
悪夢薔薇色 第一話『空中散歩』終わり
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