悪夢症候群

第３部 悪夢薔薇色 第一話『空中散歩』

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「……」
　女性は何かを探しているのか、眼下の街をキョロキョロと見回していた。
　彼女を様子を見て、石井はここぞとばかりに「ちょっと、そこのお姉さーん」と声をかけた。
「そんなとこで何してんのー？　探し物なら、手伝ってあげてもいいよー。そのかわり、ちょぉっと俺と付き合ってくんなーい？」
「……」
　女性はチラッと石井を一瞥すると、ビルから飛び降りた。
「なッ？！」
　赤い影がいとも簡単に落下し、目の前から消える。
　石井は慌てて女性が落下した場所へと駆け寄った。塀や柵のようなものは何もなく、簡単に落下できるようになっていた。
　女性の変わり果てた姿を覚悟して、恐る恐る下を覗き込む。
　しかし、女性は落下してはいなかった。
「えっ？」
　石井は目の前で起こっていることが信じられず、何度もまばたきをする。
　女性は落下する途中でふわりと浮き、遠く離れた向かいのビルの屋上へと着地した。
「おいおいおい、マジかよ！」
　石井は驚き、声を上げる。まるで白昼夢でも見ているかのようだった。