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第6章「ザマスロットと対決、ざまぁ!」
第三話
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(でも、何のために?)
不可解なノストラの行動に、メルザマァルは警戒する。
一方、ノストラは余裕の表情でニッと笑うと、メルザマァルのざまぁに毒舌を交えて反論した。
「仕方ないでしょ? 僕はまだ、子供なんだから。当たり前のことを言ってドヤるなんて、小物だねw 〈ザマァ〉!」
ノストラのざまぁに呼応し、風向きが変わる。
風はより勢いを増した状態で、メルザマァルに襲いかかった。
「……その小物に圧倒されている君は、もっと小物ね。〈ザマァ〉」
メルザマァルも反論し、風向きを変える。
しかしノストラの勢いは止まらなかった。
「圧倒? どう見ても互角だよね? 僕が反論できる隙を与えちゃってるんだからさ! それとも、もう反論する材料がないのかな? 〈ザマァ〉!」
「くっ……!」
図星を突かれ、メルザマァルはやむを得ず攻撃を受ける。無色透明だった風は、度重なる反論によって紫色に濁っていた。
風を受けた直後、メルザマァルは口から紫色の泡を吹き出し、倒れた。
「ごぼッ!」
「メル?!」
苦悶の表情を浮かべ、地面をのたうち回る。
隣で控えていたザマスロットとパロザマスは慌てて駆け寄った。
「くそっ、毒の〈ザマァ〉か!」
「目や鼻からも泡が垂れてるぞ!」
「……平気。ザマスロットの攻撃が終われば、後衛が治療するから。二人は持ち場に戻って」
メルザマァルはなんとか正気を保ち、ノストラを睨みつける。
ノストラもわずかばかり風を吸ったのか、紫色の泡を吐きながら咳き込んでいた。メルザマァルとのバトルを長引かせていたのは、毒を蓄積させるためだったらしい。
(ノストラ=ザマムス……プロフィポリス魔法学校始まって以来の秀才。卒業するまでに最低十年はかかるところをたった一年で卒業し、ザマァーリンの七億七万七千七百七十七番目の弟子に選ばれた……。所詮、"子供にしては賢い"くらいのレベルだと思っていたのに、ここまでやるなんて!)
「……でも、自らも毒を被ったのは間違いだったわね」
メルザマァルは持ち場に戻ったザマスロットにチラッと視線をやる。
ザマスロットもメルザマァルが何を言いたいのか察し、小さく頷いた。彼の視線の先には、後衛で控えているザマルタの姿があった。
「ダザドラ、行けー! ザマビリーとノストラの分のざまぁを叩きつけてやるんだ!」
「任せろ!」
メルザマァルの攻撃を終え、ヨシタケの攻撃の番になった。
ダザドラは元の姿に戻ると、ヨシタケを踏み潰さないよう陣営と陣営の間に降り立ち、咆哮した。
「我の体は、いかなる刃をも通さん! 貴様のちゃちな攻撃など、跳ね返してくれるわ! 〈ザマァ〉!」
ダザドラの口から氷の息吹が放たれる。
避けなければ確実に氷漬けになってしまうであろう攻撃に対し、ザマスロットは一切動じることなく、氷の息吹に向かって剣を振り上げた。
「刃を通さないのは、鱗に覆われている部分だけだろう? 鱗に覆われていない腹は弱いはずだ。〈ザマァ〉」
ザマスロットの剣から放たれた雷の斬撃は氷の息吹を裂き、ダザドラの急所である腹に炸裂した。
「ぐはァ!」
「ダザドラー!」
ダザドラは目を剥き、倒れる。雷の効果か、体がビクビクと痙攣していた。
「下らん。我々が何も知らないとでも思っていたのか? お前達が悠長に作戦会議をしている間に、全てメルに調査させた。誰が、どのような魔法を使い、何が弱点なのかをな。例えば……貴様」
ザマスロットはヨシタケの背後で控えていたザマルタに剣先を向け、差し示しめす。
太陽の光を反射し、鋭く光る刃に、ザマルタは「ひっ!」と悲鳴を上げ、震え上がった。
「貴様は、ザマフォレスト教会の元シスター。我々の悪行を折檻するためと、パーティに入った。回復魔法が得意だが、精霊を扱うのは苦手。そして、そのことをコンプレックスに感じている」
「どうして、それを……!」
「調べた、と言っただろう? そちらの賢者も優秀なようだが、うちのメルも見くびらないでもらいたい」
「ザマスロット……」
ザマスロットに褒められ、メルザマァルは嬉しそうに表情を和らげる。
一方、ザマルタは弱点を知られていると知り、愕然としていた。絶望に打ちひしがれたその表情に、ザマスロットは満足げに薄く笑みを浮かべた。
「貴様が精霊を上手く扱えられれば、もっと仲間に貢献できたかもしれないのにな……〈ザマァ〉!」
次の瞬間、ザマスロットが構えていた剣先から強力な雷の光線が放たれた。
ザマルタはショックのあまり、避けることすらできず、呆然と立ち尽くす。
「やめろぉぉぉ!」
たまらずヨシタケが割って入り、剣で雷撃を防いだ。攻撃の衝撃が剣を通して伝わり、柄を握る両手がビリビリと痺れた。
「ヨシタケさん、やめて下さい! 私はいいんです!」
「良くない! ザマルタさんは未熟な俺を助け、支えてくれた! ザマルタさんがいなかったら、俺の旅は始まってすらいなかったんだ! そんな大切な恩人を馬鹿にされたまま、黙っていられるかぁッ!」
ヨシタケの想いとは裏腹に、雷撃は勢いを増していく。
ヨシタケは徐々に後ろへ押され、立っているのもままならなくなっていった。既に手の感覚がなく、今にも柄を放してしまいそうになる。
やがてザマルタは痛々しい彼の姿を見ていられなくなり、後ろから引っ張った。
「うぉっ?!」
ヨシタケは後ろへ転け、倒れる。
最後に見たザマルタは、涙を流しながら微笑んでいた。
「……ありがとうございます、ヨシタケさん。私を大切な仲間だと言って下さって」
直後、ザマスロットの雷撃が真っ直ぐザマルタの胸を貫いた。雷撃の勢いは収まることなく、ザマルタを場外スレスレまで吹っ飛ばす。
ザマルタは地面に叩きつけられ、何度も転がった後、ピクリとも動かなくなった。
「ざ……」
起き上がったヨシタケは無惨なザマルタの姿を目にし、頭が真っ白になった。
一瞬、駆け寄りたい衝動に駆られながらもグッとこらえ、前衛から彼女に向かって叫んだ。
「ザマルタさァァんッ!」
不可解なノストラの行動に、メルザマァルは警戒する。
一方、ノストラは余裕の表情でニッと笑うと、メルザマァルのざまぁに毒舌を交えて反論した。
「仕方ないでしょ? 僕はまだ、子供なんだから。当たり前のことを言ってドヤるなんて、小物だねw 〈ザマァ〉!」
ノストラのざまぁに呼応し、風向きが変わる。
風はより勢いを増した状態で、メルザマァルに襲いかかった。
「……その小物に圧倒されている君は、もっと小物ね。〈ザマァ〉」
メルザマァルも反論し、風向きを変える。
しかしノストラの勢いは止まらなかった。
「圧倒? どう見ても互角だよね? 僕が反論できる隙を与えちゃってるんだからさ! それとも、もう反論する材料がないのかな? 〈ザマァ〉!」
「くっ……!」
図星を突かれ、メルザマァルはやむを得ず攻撃を受ける。無色透明だった風は、度重なる反論によって紫色に濁っていた。
風を受けた直後、メルザマァルは口から紫色の泡を吹き出し、倒れた。
「ごぼッ!」
「メル?!」
苦悶の表情を浮かべ、地面をのたうち回る。
隣で控えていたザマスロットとパロザマスは慌てて駆け寄った。
「くそっ、毒の〈ザマァ〉か!」
「目や鼻からも泡が垂れてるぞ!」
「……平気。ザマスロットの攻撃が終われば、後衛が治療するから。二人は持ち場に戻って」
メルザマァルはなんとか正気を保ち、ノストラを睨みつける。
ノストラもわずかばかり風を吸ったのか、紫色の泡を吐きながら咳き込んでいた。メルザマァルとのバトルを長引かせていたのは、毒を蓄積させるためだったらしい。
(ノストラ=ザマムス……プロフィポリス魔法学校始まって以来の秀才。卒業するまでに最低十年はかかるところをたった一年で卒業し、ザマァーリンの七億七万七千七百七十七番目の弟子に選ばれた……。所詮、"子供にしては賢い"くらいのレベルだと思っていたのに、ここまでやるなんて!)
「……でも、自らも毒を被ったのは間違いだったわね」
メルザマァルは持ち場に戻ったザマスロットにチラッと視線をやる。
ザマスロットもメルザマァルが何を言いたいのか察し、小さく頷いた。彼の視線の先には、後衛で控えているザマルタの姿があった。
「ダザドラ、行けー! ザマビリーとノストラの分のざまぁを叩きつけてやるんだ!」
「任せろ!」
メルザマァルの攻撃を終え、ヨシタケの攻撃の番になった。
ダザドラは元の姿に戻ると、ヨシタケを踏み潰さないよう陣営と陣営の間に降り立ち、咆哮した。
「我の体は、いかなる刃をも通さん! 貴様のちゃちな攻撃など、跳ね返してくれるわ! 〈ザマァ〉!」
ダザドラの口から氷の息吹が放たれる。
避けなければ確実に氷漬けになってしまうであろう攻撃に対し、ザマスロットは一切動じることなく、氷の息吹に向かって剣を振り上げた。
「刃を通さないのは、鱗に覆われている部分だけだろう? 鱗に覆われていない腹は弱いはずだ。〈ザマァ〉」
ザマスロットの剣から放たれた雷の斬撃は氷の息吹を裂き、ダザドラの急所である腹に炸裂した。
「ぐはァ!」
「ダザドラー!」
ダザドラは目を剥き、倒れる。雷の効果か、体がビクビクと痙攣していた。
「下らん。我々が何も知らないとでも思っていたのか? お前達が悠長に作戦会議をしている間に、全てメルに調査させた。誰が、どのような魔法を使い、何が弱点なのかをな。例えば……貴様」
ザマスロットはヨシタケの背後で控えていたザマルタに剣先を向け、差し示しめす。
太陽の光を反射し、鋭く光る刃に、ザマルタは「ひっ!」と悲鳴を上げ、震え上がった。
「貴様は、ザマフォレスト教会の元シスター。我々の悪行を折檻するためと、パーティに入った。回復魔法が得意だが、精霊を扱うのは苦手。そして、そのことをコンプレックスに感じている」
「どうして、それを……!」
「調べた、と言っただろう? そちらの賢者も優秀なようだが、うちのメルも見くびらないでもらいたい」
「ザマスロット……」
ザマスロットに褒められ、メルザマァルは嬉しそうに表情を和らげる。
一方、ザマルタは弱点を知られていると知り、愕然としていた。絶望に打ちひしがれたその表情に、ザマスロットは満足げに薄く笑みを浮かべた。
「貴様が精霊を上手く扱えられれば、もっと仲間に貢献できたかもしれないのにな……〈ザマァ〉!」
次の瞬間、ザマスロットが構えていた剣先から強力な雷の光線が放たれた。
ザマルタはショックのあまり、避けることすらできず、呆然と立ち尽くす。
「やめろぉぉぉ!」
たまらずヨシタケが割って入り、剣で雷撃を防いだ。攻撃の衝撃が剣を通して伝わり、柄を握る両手がビリビリと痺れた。
「ヨシタケさん、やめて下さい! 私はいいんです!」
「良くない! ザマルタさんは未熟な俺を助け、支えてくれた! ザマルタさんがいなかったら、俺の旅は始まってすらいなかったんだ! そんな大切な恩人を馬鹿にされたまま、黙っていられるかぁッ!」
ヨシタケの想いとは裏腹に、雷撃は勢いを増していく。
ヨシタケは徐々に後ろへ押され、立っているのもままならなくなっていった。既に手の感覚がなく、今にも柄を放してしまいそうになる。
やがてザマルタは痛々しい彼の姿を見ていられなくなり、後ろから引っ張った。
「うぉっ?!」
ヨシタケは後ろへ転け、倒れる。
最後に見たザマルタは、涙を流しながら微笑んでいた。
「……ありがとうございます、ヨシタケさん。私を大切な仲間だと言って下さって」
直後、ザマスロットの雷撃が真っ直ぐザマルタの胸を貫いた。雷撃の勢いは収まることなく、ザマルタを場外スレスレまで吹っ飛ばす。
ザマルタは地面に叩きつけられ、何度も転がった後、ピクリとも動かなくなった。
「ざ……」
起き上がったヨシタケは無惨なザマルタの姿を目にし、頭が真っ白になった。
一瞬、駆け寄りたい衝動に駆られながらもグッとこらえ、前衛から彼女に向かって叫んだ。
「ザマルタさァァんッ!」
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