「ざまぁ」が攻撃スキルの異世界

緋色刹那

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第3章「賞金首ハンターに、ざまぁ」

第二話

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 ヨシタケ達は教会を出た後、ザマルタのすすめで、賢者や魔法使いが多く住んでいるという都市「プロフィポリス」を目指すことになった。
 プロフィポリスは通称「全知の都市」とも呼ばれ、この街を訪れれば、過去、現在、未来のあらゆる情報を手に入れられると噂されていた。

「聖剣エクスザマリバーがある湖は、普段は人の目には見えないよう隠されています。賢者職ならば、その場所を見つけ出せるはずです。優秀な賢者職をスカウトして、ザマスロットよりも先にエクスザマリバーを手に入れましょう!」
「未来予知かぁ。俺も占って欲しいぜ」
「我も」
「賢者職は相手の弱点を見抜く力を持っていますし、安全に冒険を進めるためにも必須だと思いますよ。私欲で未来予知させるのはどうかと思いますが」
「ちぇー。どの宝くじを買えば億万長者になれるか、予知してもらおうと思ってたのに」
「ちぇー。どの都市を破壊すれば、人類を滅亡させられるか調べさせようと思っておったのに」
「ダザドラさん、サラッと怖いこと言わないで下さい」

 とはいえ、プロフィポリスは南の果てにある街……元の姿に戻ったダザドラの飛行力をもってしても、たどり着くまでにはかなり時間がかかった。

「げっ、ハーピーだ」

 空といえど、モンスターは現れる。
 ヨシタケ達の行手の先に、鮮やかな翼を持つハーピーの群れが近づいてきていた。どのハーピーの顔も美しかったが、その牙は鋭かった。

「どうする? 俺は近距離攻撃しか出来ないぞ?」
「では、我に任せろ。ちゃんと耳を塞いでいろよ?」

 ダザドラは忠告すると、すうっと息を吸い、咆哮した。

「退け! ザコ共がヨシタケの進路を邪魔するでないわ! 〈ザマァ〉!」
「ギャァギャァ!(訳:ギャーッ! 何でこんなとこにドラゴンがいるのよ?!)」
「ギャァァァ!(訳:いやー! 食べないでー!)」
「ギャギャァ!(訳:翼が凍りついて飛べないんだけど!)」

 ダザドラの〈ザマァ〉でハーピー達の翼が凍りつき、落下していく。
 幸い、下は森だったので怪我は無さそうだった。

「うわぁ……容赦無ぇ」
「ハーピー愛好家から苦情が来そうですね」
「フンッ、命を奪わんだけありがたく思え」





 そんな調子で遭遇するモンスターの大半はダザドラが倒していき、やがて日が傾いてきた。

「そろそろ日没だな。何処かに泊まれるような町はないものか……」

 ヨシタケは地上を見下ろし、街がないか探す。
 すると荒野の真ん中にぽつんとある小さな町を見つけた。ザーマァ王の城がある王都とは違い、西部劇に出てきそうな町並みをしている。
 町の近くには、石柱が何本か立っているだけの寂れた遺跡が見えた。

「お、あそこいいじゃん。ダザドラ、あの町の近くに降りてくれ」
「よし来た」

 ダザドラは下降し、着陸に備える。
 しかし、町を見たザマルタはハッと顔色を変えた。

「ま、待って下さい! あの町に降りるのはやめた方が……」
「え? 何で?」

 ヨシタケは首を傾げ、ザマルタに訳を尋ねる。
 が、その訳を聞き出すより先に、地上から銃声が聞こえ、ダザドラが腹部に攻撃を受けた。

「ぐぁッ!」
「ダザドラ!」

 反動で、ダザドラの体は手のひらサイズに縮み、ヨシタケもザマルタも真っ逆さまに落下していった。
 ダザドラだけでも助けようと、ヨシタケは空中で彼をキャッチし、抱きしめた。

「うぉぁああっ! お、落ちる!」
「ヨシタケ様、手を!」

 ザマルタはヨシタケに手を差し出す。
 情けない悲鳴を上げるヨシタケに対し、彼女の目はまだ諦めてはいなかった。

「死ぬ時は一緒ってやつか?! ほらよ! 女子と手ぇ繋ぐなんて、小学校の時に流行ってた"はないちもんめ"以来だぜ!」
「何ですか、それ?! 異世界に伝わる儀式ですか?!」

 ヨシタケがザマルタの手を握ると、ザマルタは足元を見て叫んだ。

「〈ザマァ〉! 風の精霊様、哀れな我々をどうかお救い下さい!」

 その瞬間、ヨシタケとザマルタの体がフワリと浮き、ゆっくりと地面へ降ろされた。

「い、一体何が起こったんだ……?」
「自らを〈ザマァ〉することで、風の精霊様のお力を借りたんですよ。私は精霊使いではないので、わずかな時間しか使えませんが」

 着陸した二人を狙い、弾が飛んでくる。弾道の先には、カウボーイのような格好でこちらに拳銃を向ける男達がいた。
 ヨシタケは弾を剣で防ぎつつ、ザマルタと共に町へ逃げ込んだ。不思議なことに、賊達は町の中までは追って来なかった。 

「チッ、逃したか。へっぽこ勇者だけかと思ったら、厄介な女がついてやがる」
「女に助けられるなんて、へっぽこにも程があるぜ!」
「全くだ! 次は確実に仕留めてやる!」

 男達は拳銃を下ろし、ゾロゾロと遺跡の方へ去っていく。
 彼らの多くがヨシタケを嘲笑う中、リーダーらしき長身の男だけは神妙な顔をしていた。

「あいつ……自分の身よりも、ドラゴンを守ろうとしていたな。パーティを置いて逃げたやつが、そんなことするとは思えねぇが……」




 町は砂ぼこりが舞うばかりで、閑散としていた。
 賊達の銃声を聞いて警戒しているのか、住人達は家の中へ引っ込み、窓から外の様子を窺っている。その視線はヨシタケ達に注がれているような気もした。

「ずいぶん静かな町だな。さっきの奴らも、この町の連中か?」
「おそらく彼らは、近くにある"スタレチマッテル遺跡"を根城としている賞金稼ぎギルド……ラットボーイズではないでしょうか。指名手配されているならず者を仕留め、賞金を稼いでいる荒くれ者達ですよ」
「ってことは、俺も指名手配されてるってことか?」
「まさか! ヨシタケ様は勇者様ですよ? そんな罰当たりなこと、あるわけ……」

 ヨシタケとザマルタが近くの酒場に入ると、ヨシタケの似顔絵が掲載されている指名手配書が壁中に貼られていた。

「指名手配されてるぅー!」
「何でぇーっ?!」
「らっしゃい。イカした壁紙だろ?」
「イカしてるんじゃなくて、イカれてんだよオヤジ!」
「剥がして下さい、今すぐ!」
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