10 / 42
第3章「賞金首ハンターに、ざまぁ」
第二話
しおりを挟む
ヨシタケ達は教会を出た後、ザマルタのすすめで、賢者や魔法使いが多く住んでいるという都市「プロフィポリス」を目指すことになった。
プロフィポリスは通称「全知の都市」とも呼ばれ、この街を訪れれば、過去、現在、未来のあらゆる情報を手に入れられると噂されていた。
「聖剣エクスザマリバーがある湖は、普段は人の目には見えないよう隠されています。賢者職ならば、その場所を見つけ出せるはずです。優秀な賢者職をスカウトして、ザマスロットよりも先にエクスザマリバーを手に入れましょう!」
「未来予知かぁ。俺も占って欲しいぜ」
「我も」
「賢者職は相手の弱点を見抜く力を持っていますし、安全に冒険を進めるためにも必須だと思いますよ。私欲で未来予知させるのはどうかと思いますが」
「ちぇー。どの宝くじを買えば億万長者になれるか、予知してもらおうと思ってたのに」
「ちぇー。どの都市を破壊すれば、人類を滅亡させられるか調べさせようと思っておったのに」
「ダザドラさん、サラッと怖いこと言わないで下さい」
とはいえ、プロフィポリスは南の果てにある街……元の姿に戻ったダザドラの飛行力をもってしても、たどり着くまでにはかなり時間がかかった。
「げっ、ハーピーだ」
空といえど、モンスターは現れる。
ヨシタケ達の行手の先に、鮮やかな翼を持つハーピーの群れが近づいてきていた。どのハーピーの顔も美しかったが、その牙は鋭かった。
「どうする? 俺は近距離攻撃しか出来ないぞ?」
「では、我に任せろ。ちゃんと耳を塞いでいろよ?」
ダザドラは忠告すると、すうっと息を吸い、咆哮した。
「退け! ザコ共がヨシタケの進路を邪魔するでないわ! 〈ザマァ〉!」
「ギャァギャァ!(訳:ギャーッ! 何でこんなとこにドラゴンがいるのよ?!)」
「ギャァァァ!(訳:いやー! 食べないでー!)」
「ギャギャァ!(訳:翼が凍りついて飛べないんだけど!)」
ダザドラの〈ザマァ〉でハーピー達の翼が凍りつき、落下していく。
幸い、下は森だったので怪我は無さそうだった。
「うわぁ……容赦無ぇ」
「ハーピー愛好家から苦情が来そうですね」
「フンッ、命を奪わんだけありがたく思え」
そんな調子で遭遇するモンスターの大半はダザドラが倒していき、やがて日が傾いてきた。
「そろそろ日没だな。何処かに泊まれるような町はないものか……」
ヨシタケは地上を見下ろし、街がないか探す。
すると荒野の真ん中にぽつんとある小さな町を見つけた。ザーマァ王の城がある王都とは違い、西部劇に出てきそうな町並みをしている。
町の近くには、石柱が何本か立っているだけの寂れた遺跡が見えた。
「お、あそこいいじゃん。ダザドラ、あの町の近くに降りてくれ」
「よし来た」
ダザドラは下降し、着陸に備える。
しかし、町を見たザマルタはハッと顔色を変えた。
「ま、待って下さい! あの町に降りるのはやめた方が……」
「え? 何で?」
ヨシタケは首を傾げ、ザマルタに訳を尋ねる。
が、その訳を聞き出すより先に、地上から銃声が聞こえ、ダザドラが腹部に攻撃を受けた。
「ぐぁッ!」
「ダザドラ!」
反動で、ダザドラの体は手のひらサイズに縮み、ヨシタケもザマルタも真っ逆さまに落下していった。
ダザドラだけでも助けようと、ヨシタケは空中で彼をキャッチし、抱きしめた。
「うぉぁああっ! お、落ちる!」
「ヨシタケ様、手を!」
ザマルタはヨシタケに手を差し出す。
情けない悲鳴を上げるヨシタケに対し、彼女の目はまだ諦めてはいなかった。
「死ぬ時は一緒ってやつか?! ほらよ! 女子と手ぇ繋ぐなんて、小学校の時に流行ってた"はないちもんめ"以来だぜ!」
「何ですか、それ?! 異世界に伝わる儀式ですか?!」
ヨシタケがザマルタの手を握ると、ザマルタは足元を見て叫んだ。
「〈ザマァ〉! 風の精霊様、哀れな我々をどうかお救い下さい!」
その瞬間、ヨシタケとザマルタの体がフワリと浮き、ゆっくりと地面へ降ろされた。
「い、一体何が起こったんだ……?」
「自らを〈ザマァ〉することで、風の精霊様のお力を借りたんですよ。私は精霊使いではないので、わずかな時間しか使えませんが」
着陸した二人を狙い、弾が飛んでくる。弾道の先には、カウボーイのような格好でこちらに拳銃を向ける男達がいた。
ヨシタケは弾を剣で防ぎつつ、ザマルタと共に町へ逃げ込んだ。不思議なことに、賊達は町の中までは追って来なかった。
「チッ、逃したか。へっぽこ勇者だけかと思ったら、厄介な女がついてやがる」
「女に助けられるなんて、へっぽこにも程があるぜ!」
「全くだ! 次は確実に仕留めてやる!」
男達は拳銃を下ろし、ゾロゾロと遺跡の方へ去っていく。
彼らの多くがヨシタケを嘲笑う中、リーダーらしき長身の男だけは神妙な顔をしていた。
「あいつ……自分の身よりも、ドラゴンを守ろうとしていたな。パーティを置いて逃げたやつが、そんなことするとは思えねぇが……」
町は砂ぼこりが舞うばかりで、閑散としていた。
賊達の銃声を聞いて警戒しているのか、住人達は家の中へ引っ込み、窓から外の様子を窺っている。その視線はヨシタケ達に注がれているような気もした。
「ずいぶん静かな町だな。さっきの奴らも、この町の連中か?」
「おそらく彼らは、近くにある"スタレチマッテル遺跡"を根城としている賞金稼ぎギルド……ラットボーイズではないでしょうか。指名手配されているならず者を仕留め、賞金を稼いでいる荒くれ者達ですよ」
「ってことは、俺も指名手配されてるってことか?」
「まさか! ヨシタケ様は勇者様ですよ? そんな罰当たりなこと、あるわけ……」
ヨシタケとザマルタが近くの酒場に入ると、ヨシタケの似顔絵が掲載されている指名手配書が壁中に貼られていた。
「指名手配されてるぅー!」
「何でぇーっ?!」
「らっしゃい。イカした壁紙だろ?」
「イカしてるんじゃなくて、イカれてんだよオヤジ!」
「剥がして下さい、今すぐ!」
プロフィポリスは通称「全知の都市」とも呼ばれ、この街を訪れれば、過去、現在、未来のあらゆる情報を手に入れられると噂されていた。
「聖剣エクスザマリバーがある湖は、普段は人の目には見えないよう隠されています。賢者職ならば、その場所を見つけ出せるはずです。優秀な賢者職をスカウトして、ザマスロットよりも先にエクスザマリバーを手に入れましょう!」
「未来予知かぁ。俺も占って欲しいぜ」
「我も」
「賢者職は相手の弱点を見抜く力を持っていますし、安全に冒険を進めるためにも必須だと思いますよ。私欲で未来予知させるのはどうかと思いますが」
「ちぇー。どの宝くじを買えば億万長者になれるか、予知してもらおうと思ってたのに」
「ちぇー。どの都市を破壊すれば、人類を滅亡させられるか調べさせようと思っておったのに」
「ダザドラさん、サラッと怖いこと言わないで下さい」
とはいえ、プロフィポリスは南の果てにある街……元の姿に戻ったダザドラの飛行力をもってしても、たどり着くまでにはかなり時間がかかった。
「げっ、ハーピーだ」
空といえど、モンスターは現れる。
ヨシタケ達の行手の先に、鮮やかな翼を持つハーピーの群れが近づいてきていた。どのハーピーの顔も美しかったが、その牙は鋭かった。
「どうする? 俺は近距離攻撃しか出来ないぞ?」
「では、我に任せろ。ちゃんと耳を塞いでいろよ?」
ダザドラは忠告すると、すうっと息を吸い、咆哮した。
「退け! ザコ共がヨシタケの進路を邪魔するでないわ! 〈ザマァ〉!」
「ギャァギャァ!(訳:ギャーッ! 何でこんなとこにドラゴンがいるのよ?!)」
「ギャァァァ!(訳:いやー! 食べないでー!)」
「ギャギャァ!(訳:翼が凍りついて飛べないんだけど!)」
ダザドラの〈ザマァ〉でハーピー達の翼が凍りつき、落下していく。
幸い、下は森だったので怪我は無さそうだった。
「うわぁ……容赦無ぇ」
「ハーピー愛好家から苦情が来そうですね」
「フンッ、命を奪わんだけありがたく思え」
そんな調子で遭遇するモンスターの大半はダザドラが倒していき、やがて日が傾いてきた。
「そろそろ日没だな。何処かに泊まれるような町はないものか……」
ヨシタケは地上を見下ろし、街がないか探す。
すると荒野の真ん中にぽつんとある小さな町を見つけた。ザーマァ王の城がある王都とは違い、西部劇に出てきそうな町並みをしている。
町の近くには、石柱が何本か立っているだけの寂れた遺跡が見えた。
「お、あそこいいじゃん。ダザドラ、あの町の近くに降りてくれ」
「よし来た」
ダザドラは下降し、着陸に備える。
しかし、町を見たザマルタはハッと顔色を変えた。
「ま、待って下さい! あの町に降りるのはやめた方が……」
「え? 何で?」
ヨシタケは首を傾げ、ザマルタに訳を尋ねる。
が、その訳を聞き出すより先に、地上から銃声が聞こえ、ダザドラが腹部に攻撃を受けた。
「ぐぁッ!」
「ダザドラ!」
反動で、ダザドラの体は手のひらサイズに縮み、ヨシタケもザマルタも真っ逆さまに落下していった。
ダザドラだけでも助けようと、ヨシタケは空中で彼をキャッチし、抱きしめた。
「うぉぁああっ! お、落ちる!」
「ヨシタケ様、手を!」
ザマルタはヨシタケに手を差し出す。
情けない悲鳴を上げるヨシタケに対し、彼女の目はまだ諦めてはいなかった。
「死ぬ時は一緒ってやつか?! ほらよ! 女子と手ぇ繋ぐなんて、小学校の時に流行ってた"はないちもんめ"以来だぜ!」
「何ですか、それ?! 異世界に伝わる儀式ですか?!」
ヨシタケがザマルタの手を握ると、ザマルタは足元を見て叫んだ。
「〈ザマァ〉! 風の精霊様、哀れな我々をどうかお救い下さい!」
その瞬間、ヨシタケとザマルタの体がフワリと浮き、ゆっくりと地面へ降ろされた。
「い、一体何が起こったんだ……?」
「自らを〈ザマァ〉することで、風の精霊様のお力を借りたんですよ。私は精霊使いではないので、わずかな時間しか使えませんが」
着陸した二人を狙い、弾が飛んでくる。弾道の先には、カウボーイのような格好でこちらに拳銃を向ける男達がいた。
ヨシタケは弾を剣で防ぎつつ、ザマルタと共に町へ逃げ込んだ。不思議なことに、賊達は町の中までは追って来なかった。
「チッ、逃したか。へっぽこ勇者だけかと思ったら、厄介な女がついてやがる」
「女に助けられるなんて、へっぽこにも程があるぜ!」
「全くだ! 次は確実に仕留めてやる!」
男達は拳銃を下ろし、ゾロゾロと遺跡の方へ去っていく。
彼らの多くがヨシタケを嘲笑う中、リーダーらしき長身の男だけは神妙な顔をしていた。
「あいつ……自分の身よりも、ドラゴンを守ろうとしていたな。パーティを置いて逃げたやつが、そんなことするとは思えねぇが……」
町は砂ぼこりが舞うばかりで、閑散としていた。
賊達の銃声を聞いて警戒しているのか、住人達は家の中へ引っ込み、窓から外の様子を窺っている。その視線はヨシタケ達に注がれているような気もした。
「ずいぶん静かな町だな。さっきの奴らも、この町の連中か?」
「おそらく彼らは、近くにある"スタレチマッテル遺跡"を根城としている賞金稼ぎギルド……ラットボーイズではないでしょうか。指名手配されているならず者を仕留め、賞金を稼いでいる荒くれ者達ですよ」
「ってことは、俺も指名手配されてるってことか?」
「まさか! ヨシタケ様は勇者様ですよ? そんな罰当たりなこと、あるわけ……」
ヨシタケとザマルタが近くの酒場に入ると、ヨシタケの似顔絵が掲載されている指名手配書が壁中に貼られていた。
「指名手配されてるぅー!」
「何でぇーっ?!」
「らっしゃい。イカした壁紙だろ?」
「イカしてるんじゃなくて、イカれてんだよオヤジ!」
「剥がして下さい、今すぐ!」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!


お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる